2019年9月22日日曜日

島田荘司作「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」(’A Study in 61 : Soseki and the Mummy Murder Case in London’ by Soji Shimada)–その1

光文社が発行する光文社文庫
島田荘司作「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」(完全改訂総ルビ版)の表紙
カバーデザイン:泉沢 光雄氏
    カバーイラスト:城芽 ハヤト氏
   カバー印刷:近代美術

「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」は、日本の推理小説家 / 小説家である島田荘司氏(1948年ー)が1984年に発表した推理小説で、彼の7冊目の長編に該る。当作品において、島田荘司氏は、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が生み出したシャーロック・ホームズという架空のキャラクターの世界に、日本の小説家 / 評論家 / 英文学者である夏目漱石(本名:夏目金之助 / 1867年ー1916年)という実在の人物を客演させている。

夏目漱石は、「我輩は猫である」(1905年ー1906年)で小説家としてデビューする前の1900年(明治33年)10月から1902年(明治35年)12月までの間、文部省に命じられて、英文学研究のため、英国に留学しており、ロンドンに下宿していた。夏目漱石がロンドンに下宿していた時期は、ホームズが諮問探偵としてロンドンで活躍していたとされる時期(1881年ー1903年 / ただし、1891年4月から1894年4月の間を除く)の終盤と、偶然にもうまくオーバーラップしている。つまり、霧深きロンドンにおいて、夏目漱石がホームズと出会っていたとしても、決しておかしくないという訳である。

島田荘司氏が1984年に当作品を発表した際、表紙裏に「A Study in 61 : Soseki and the Mummy Murder Case in London」という英文の題名が付されていた。
これは、(1)ホームズが登場する記念すべき第1作目の長編「緋色の研究(A Study in Scarlet→2016年7月30日付ブログで紹介済)」に題名を合わせていることに加えて、(2)当作品内に出てくる「61」という謎の数字を題名に使用していることだけではなく、(3)コナン・ドイルの原作である正典60編(長編:4編+短編:56編)に続いて、当作品が61番目の正式なホームズ作品だという島田荘司氏の自負が込められているものと思われる。

「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」については、

・1984年9月ー集英社ハードカバー
・1987年10月ー集英社文庫
・1994年2月ー光文社文庫
・2008年1月ー「島田荘司全集Ⅱ」(南雲堂)
・2009年3月ー光文社文庫(完全改訂総ルビ版)

が刊行されている。

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