2017年2月4日土曜日

C・オーギュスト・デュパン(C. Auguste Dupin)

C・オーギュスト・デュパンが登場するエドガー・アラン・ポー関係の出版物

サー・アーサー・コナン・ドイル作「緋色の研究(A Study in Scarlet)」(1887年)において、シャーロック・ホームズがジョン・H・ワトスンに言及しているC・オーギュスト・デュパン(C. Auguste Dupin)は、米国の小説家/詩人で、かつ、雑誌編集者のエドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe:1809年ー1849年)が執筆した短編推理小説に登場する人物で、世界初の名探偵と言われている。

Vintage Books から出版されている
「モルグ街の殺人」―
「マリー・ロジェの謎」と「盗まれた手紙」も
含まれている

パリに長期滞在している語り手である「私」(名前が述べられない)は、ある日、モンマルトルの図書館において、フランスの没落した名門貴族の出であるデュパンという人物と知り合う。彼の卓越した観察力や分析力等に興味を覚えた「私」は、パリ郊外サン・ジェルマンの辺鄙で淋しい場所に古びた館を借りて、彼との共同生活を始める。

フランスで出版されている
「モルグ街の殺人」のグラフィックノベル―
フランスでのタイトルは
「Double assassinat dans la Rue Morgue」
(モルグ街の二重殺人)

デュパンは、昼間、締め切った真っ暗な部屋で蝋燭を灯して、読書と瞑想に耽る一方、夜になると、闇と影に覆われたパリの街を徘徊するといった奇人ぶりを「私」に見せる。
デュパンは警視総監であるG氏と知り合いで、彼の推理力を高く評価するG氏は、警察内で解決できない事件があると、彼の元を訪ねて来て、事件の調査を依頼するのであった。そして、デュパンと「私」は事件の調査に関わっていく。

左側の人物が C・オーギュスト・デュパンで、
右側の人物が語り手である「私」

デュパンが登場するのは、以下の短編小説3編だけである。
(1)「モルグ街の殺人(The Murder in the Rue Morgue)」(1841年)
→世界初の推理小説で、かつ、密室殺人をテーマにした最初の推理小説と言われている。
(2)「マリー・ロジェの謎(The Mystery of Marie Roget)」(1842年ー1843年)
→(米国で発生した)現実の殺人事件をモデルにした最初の推理小説と言われている。本作品において、デュパンは新聞に掲載された記事のみを情報にして、事件の真相を見抜いているため、世界初の名探偵であるとともに、世界初の安楽椅子探偵という称号も得ている。
(3)「盗まれた手紙(The Purloined Letter)」(1844年)
→3作品の中で最も完成度が高いと一般に評価されている。

ちなみに、日本の小説家、推理作家、SF作家で、文芸評論家でもある笠井潔(1948年ー)は、パスティーシュ作品として、「群衆の悪魔 デュパン第四の事件」(1996年)を執筆している。

フランス語学習用の教材となっている
エドガー・アラン・ポー作
「モルグ街の殺人」と「盗まれた手紙」

こうして、デュパンというか、作者のエドガー・アラン・ポーは、天才的な探偵(デュパン)と平凡な語り手(私)というコンビ、結末近くにおける探偵による推理の披露、そして、意外な真犯人の指摘等といった今も連綿と続いている推理小説の基本コンセプトを作り出したのである。「緋色の研究」の中で、コナン・ドイルは、ホームズにデュパンのことを批判させてはいるが、実際のところ、デュパンはホームズを初めとする後の名探偵の原型になっており、非常に大きな影響を与えていると言える。

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