2017年2月26日日曜日

ロンドン ハーリーストリート82番地(82 Harley Street)

TV 版「ホロー荘の殺人」では、ハーリーストリート82番地の建物が
ジョンとガーダのクリストウ夫妻の医院兼住居として撮影に使用されている

アガサ・クリスティー作「ホロー荘の殺人(The Hollow)」(1946年)は、ある年の9月末の週末、行政官だったサー・ヘンリー・アンカテル(Sir Henry Angkatell)と夫人のルーシー・アンカテル(Lucy Angkatell)は、友人のクリストウ夫妻をロンドン近くの自宅ホロー荘へ招待して、彼らをもてなす計画をするところから、話が始まる。


夫のジョン・クリストウ(John Christow)はハーリーストリート(Harley Streetー2015年4月11日付ブログで紹介済)で成功をおさめた外科医で、夫人のガーダ・クリストウ(Gerda Christow)は純真かつ無邪気な性格で、夫のジョンに対して崇拝に近い位の愛情を捧げていた。ただ、ガーダは簡単な室内ゲームも満足にできないのが、ルーシー・アンカテルにとって頭の痛い点だった。

ハーリーストリート82番地の建物入口

クリストウ夫妻の他には、以下の人物が招待されていた。

(1)ミッジ・ハードキャッスル(Midge Hardcastle):ルーシー・アンカテルの従妹で、服飾関係の店員として働いている。
(2)エドワード・アンカテル(Edward Angkatell):サー・ヘンリー・アンカテルの従弟で、アンカテル家の領地エインズウィック(Ainswick)の法廷相続人。
(3)ヘンリエッタ・サヴァナク(Henrietta Savernake):彫刻家
(4)デイヴィッド・アンカテル(David Angkatell):ルーシー・アンカテルの従兄弟で、学生。

更に、ルーシー・アンカテルがバグダッドで出会ったエルキュール・ポワロが偶然ホロー荘の近くに別荘を借りていたため、彼女は彼を日曜日の昼食に招いていた。

ハーリーストリート82番地の建物上部ー
左側には、TV 版「愛国殺人」において、
ヘンリー・モーリーの歯科医院として撮影に使用された
ハーリーストリート84番地の建物がある

招待客が到着して、週末が始まると、ルーシー・アンカテルの心配が的中することになった。ミッジ・ハードキャッスルはエドワード・アンカテルのことを愛していたが、当人のエドワード・アンカテルはヘンリエッタ・サヴァナクにエインズウィックの女主人になってほしいと思っている。ところが、ヘンリエッタ・サヴァナクはジョン・クリストウと不倫関係にあったのだ。そして、デイヴィッド・アンカテルはそんな彼らを嫌っていた。

右側から、ハーリーストリート82番地、
84番地、86番地と続く

ポワロの向かいの別荘を借りている女優のヴェロニカ・クレイ(Veronica Clay)がきらしたマッチを借りようとホロー荘へとやって来たで、状況は更に緊迫度を増した。ヴェロニカ・クレイは以前ジョン・クリストウと交際しており、彼に外科医の仕事を捨てて、自分と一緒にハリウッドへ来るように誘ったが、彼は彼女の要請を断り、彼女としては、それを良しとはしていなかった。そして、これが15年振りの再会であった。ジョン・クリストウは、以前のようにヴェロニカ・クレイの魅力に抗いできず、結局、彼女を別荘まで送って行くことになった。ジョン・クリストウが、午前3時にヴェロニカ・クレイの別荘からホロー荘へと戻って来た際、誰かに見られているように感じた。ところが、誰の姿も見当たらず、妻のガーダが寝室で寝ていることを確認すると、ジョン・クリストウは安心して、床に就くのであった。

右側から、ハーリーストリート84番地、
86番地、88番地の建物が続く

翌日の日曜日、ルーシー・アンカテルに昼食へ招かれたポワロは、ホロー荘を訪れた。執事のガジョン(Gudgeon)に案内されて、昼食前の一杯のため、プールの側の東屋(あずまや)へ向かったポワロであったが、プールのところにホロー荘の主夫妻や招待客達が集まっているのを目にする。そして、彼らが囲んでいたのは、銃で撃たれ、血を流して倒れているジョン・クリストウと、銃を手にして傍らに立つガーダ・クリストウという芝居染みた光景であった。当初、ポワロは、名探偵である自分を歓迎するための余興だと考えたが、直ぐに冗談事ではないことが判る。正に、ポワロの目の前で、本物の殺人事件が発生したのであった。

ハーリーストリート82番地の建物の向かい側から
ハーリーストリートを北側から南側へ見たところ

英国の TV 会社 ITV1 で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「ホロー荘の殺人」(2004年)において、サー・ヘンリー・アンカテルと夫人のルーシー・アンカテルから、彼らの自宅ホロー荘で週末を過ごすよう招待を受けた外科医のジョン・クリストウと夫人のガーダ・クリストウの二人が車に乗って、彼らの医院兼住居の前からホロー荘へと向けて出発する。ジョン/ガーダ・クリストウ夫妻の医院兼住居は、ハーリーストリート82番地の建物を使用して撮影されている。なお、ジョン・クリストウは、不倫相手のヘンリエッタ・サヴァナクのアトリエ兼フラットを訪ねた際、玄関口のステップで転倒し、手首を捻挫したため、ガーダ・クリストウが車を運転している。

ハーリーストリート82番地の建物の向かい側から
ハーリーストリートを南側から北側へ見たところ

ハーリーストリートは、シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のマリルボーン地区(Marylebone)内にあり、ハーリーストリート82番地は、ニューキャヴェンディッシュストリート(New Cavendish Street)とウェイマウスストリート(Weymouth Street)に南北を挟まれた場所に建っている。

ハーリーストリート84番地の建物(その1)

ハーリーストリート82番地の建物の左隣には、ハーリーストリート84番地(84 Harley Streetー2016年5月29日付ブログで紹介済)の建物が建っているが、この建物は同じ「Agatha Christie's Poirot」の「愛国殺人(→英国での原題は、「One, Two, Buckle My Shoe(いち、にい、私の靴の留め金を締めて)」)」(1992年)において、物語の冒頭、ポワロが通うヘンリー・モーリー(Henry Morley)の歯科医院(→アガサ・クリスティーの原作では、クイーンシャーロットストリート58番地(58 Queen Charlotte Street)で、TV 版では、ハーリーストリート168番地(168 Harley Street))として撮影に使用されているのである。

ハーリーストリート84番地の建物(その2)

ちなみに、TV 版「ホロー荘の殺人」の初めの方(クリストウ夫妻がホロー荘へ向けて車で出発するシーン)とラスト近く(事件が悲劇的な結末を迎えた後、ポワロとヘンリエッタ・サヴァナクがクリストウ夫妻の医院兼住居から出て来るシーン)において、ハーリーストリート82番地の建物が画面上に写っているが、入口ドアに404番地という表示が架けられている。これは、TV 撮影用の架空の番地であり、実際には、ハーリーストリート沿いに404番地は存在していない。

画面手前を左右に横切るウェイマウスストリートから
ハーリーストリートを北側から南側へ望む

ハーリーストリート82番地は、ハーリーストリートの東側に建っており、クリストウ夫妻が乗った車が画面の左側から右側へ走り去ったということは、車は北側から南側へと向かったことになる。ハーリーストリートは、現在、北側から南側への一方通行であるため、車の進行方向は正しいと言える。ただし、画面手前の車は、頭を左側、つまり、北側へ向けてハーリーストリート沿いに停まっており、これは現在ハーリーストリートで認められている進行方向とは逆である。

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