2016年4月17日日曜日

ロンドン ヴォードヴィル劇場(Vaudeville Theatre)

ヴォードヴィル劇場の正面全景

アガサ・クリスティー作「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)は、彼女の死後であるが、戯曲となって、1981年12月9日にヴォードヴィル劇場(Vaudeville Theatre)で上演されている。

ストランド通りの反対側からヴォードヴィル劇場を望む―
劇場前の通りは、バスやタクシー等の往来が激しい

アガサ・クリスティーがエルキュール・ポワロ物を戯曲にした際の倣いに従って、戯曲版「ひらいたトランプ」の場合も、ポワロは登場しないで、原作にも登場するバトル警視(Superintendent Battle)が探偵役を務めている。アガサ・クリスティーとしては、ポワロをうまく演じられる適役の俳優が居ないと感じていたため、ポワロ物を戯曲版にする場合には、ポワロの代わりに、代役を登場させていたようである。

ヴォードヴィル劇場の入口

ヴォードヴィル劇場は、ロンドンの中心部シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のストランド地区(Strand)内にあり、ストランド通り(Strand)沿いに建っている。サー・アーサー・コナン・ドイルによる戯曲版「まだらの紐(The Speckled Band)」が上演されたアデルフィ劇場(Adelphi Theatre)のすぐ近くである。

ITV1 で放映された「Agatha Christie's Poirot」において、
名探偵エルキュール・ポワロを演じた俳優ダヴィッド・スーシェ(David Suchet)が
オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)作「真面目が肝心(The Importance of  being earnest)」に
主演していた

「ヴォードヴィル(Vaudeville)」とは、「寄席、演芸、歌、踊り、曲芸や寸劇等」を意味する。
初代のヴォードヴィル劇場は、英国の建築家であるチャールズ・ジョン・フィップス(Charles John Phipps:1835年ー1897年)似よって設計され、1870年4月16日にオープンした。

ヴォードヴィル劇場の横の
ラムリーコート(Lumley Court)

ヴォードヴィル劇場の裏通りに該る
メイデンレーン(Maiden Lane)から見たラムリーコート

有名なシェイクスピア劇俳優のサー・ヘンリー・アーヴィング(Sir Henry Irving:1838年ー1905年)は、1871年にライシアム座の幹部俳優となり、後にライシアム劇場(Lyceum Theatre)の監督となるが、前年の1870年にヴォードヴィル劇場に出演し、1年近く公演を行うという成功をおさめている。

ヴォードヴィル劇場のステージドア(楽屋出入口)

ヴォードヴィル劇場の裏面外壁

1887年に同劇場の監督になった俳優のトーマス・ソーン(Thomas Thorne:1841年ー1918年)は、1889年に建築家のチャールズ・ジョン・フィップスに劇場の拡張を依頼し、収容人数が1千人を超える劇場として、1891年1月13日に再オープンさせた。

同建物には、フランスの哲学者、作家、文学者で、歴史家でもあった
ヴォルテール(Voltaire:1694年ー1778年)が
1727年から1728年にかけて住んでいた

時代を経て、1925年11月7日に同劇場は一旦閉鎖し、内装の大改装が実施された。設計は英国の建築家であるロバート・アトキンス(Robert Atkins)が担当し、収容人数を700人程に減らした上で、1926年2月23日に公演を再開している。

その後、1972年に同劇場の建物はグレードⅡ(Grade II listed)の保存指定を受け、現在に至っている。

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