2016年4月10日日曜日

<第200回> ロンドン ピカデリーアーケード(Piccadilly Arcade)

ピカデリー通り側から見たピカデリーアーケード

アガサ・クリスティー作「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)は、エルキュール・ポワロが謎多き裕福な蒐集家であるシャイタナ氏(Mr Shaitana)からブリッジパーティーへの招待を受けるところから、物語が始まる。「まだ告発されていない殺人犯を招いた上でのパーティーだ。」と言うシャイタナ氏の趣旨に興味を覚えたポワロは、パーティーへの参加を決める。

ジャーミンストリート側から見たピカデリーアーケード

シャイタナ氏の自宅で行われたパーティーに招待されたのは、以下の8人だった。
(1)探偵組
*エルキュール・ポワロ
*バトル警視(Superintendent Battle)ースコットランドヤードの警察官
*レイス大佐(Colonel Race)ー秘密情報局の情報部員
*アリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs Ariadne Oliver)ー女流推理作家
(2)容疑者組
*ロバーツ医師(Dr Roberts)ー成功をおさめた中年の医師
*ロリマー夫人(Mrs Lorrimer)ーブリッジ好きな初老の女性
*デスパード少佐(Major Despard)ー未開地を探索する探検家
*アン・メレディス(Anne Meredith)ー内気で若く麗しい女性

英国王ジャージ4世の友人で、
ロンドン社交界の伊達者であった
George Bryan Beau Brummell (1778年ー1840年)

食事の最中、シャイタナ氏はパーティーの出席者に対して、謎めいた告発を行う。そして、食事が済むと、容疑者組の4人はメインルーム(客間)で、また、探偵組の4人は別の部屋でブリッジを始めることとなった。シャイタナ氏はメインルームの暖炉の側に置かれた椅子を自分の居場所として、ブリッジへの参加を辞退する。
ブリッジが終わり、ポワロとレイス大佐がシャイタナ氏に暇を告げようとした際、彼らはシャイタナ氏が彼の蒐集品であるナイフで胸を刺されて死んでいるのを発見する。
果たして、シャイタナ氏が謎めいた告発をした対象の人物は誰だったのか?そして、その人物がシャイタナ氏を刺殺したのだろうか?
名探偵、警察官や情報部員等が同席しているパーティーの最中、大胆にも行われた犯行を解き明かすべく、ポワロの灰色の脳細胞が、ブリッジの点数表の内容にその糸口を見いだすのであった。

ピカデリーアーケード内(その1)

英国のTV会社ITV1で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「ひらいたトランプ」(2006年)の回では、 シャイタナ氏を刺し殺した犯人が、ロバーツ医師、ロリマー夫人、デスパード少佐とアン・メレディスの4人のうちの誰なのかを調べる過程で、アン・メレディスに対してある罠を仕掛けるべく、ポワロは姪へのプレゼントという名目でストッキングを大量に購入する。ポワロがストッキングを購入する店として撮影に使用された場所が、ピカデリーアーケード(Piccadilly Arcade)内にある。

ピカデリーアーケード内(その2)

ピカデリーアーケードは、シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のセントジェイムズ地区(St. James's)内に位置している。ピカデリーアーケードの北側は、地下鉄グリーンパーク駅(Green Park Tube Station)の前を通って、ピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)から地下鉄ハイドパークコーナー駅(Hyde Park Corner Tube Station)へ向かって西に延びるピカデリー通り(Piccadilly)に、東側はデュークストリート(Duke Street)に、南側はジャーミンストリート(Jermyn Street)に、そして、西側はセントジェイムズストリート(St. James's Street)に囲まれており、25m位の短いアーケードである。なお、アーケードの入口の北側はピカデリー通りに、また、南側はジャーミンストリートに面している。

ポワロがストッキングを購入する場面が撮影された
「ニール&パーマー」の店

ピカデリーアーケードは、スラール・ジェル(Thrale Jell)に寄って設計され、1909年にオープンした。
ピカデリーアーケードの南側の入口が面するジャーミンストリート沿いには、歴史的に、背広やワイシャツ等の仕立屋が数多く軒を連ねていることもあって、同アーケード内にも、同様の店が多い。
ポワロがストッキングを購入する場面が撮影された店は、実際には「ニール&パーマー(Neal and Palmer : 11 Piccadilly Arcade, London SW1Y 6NH)」というフォーマルなメンズウェアの販売やレンタルを行う店で、今も営業しているものの、ストッキングは販売していない。

ピカデリー通りを挟んで、
ピカデリーアーケードの反対側にある
バーリントンアーケード
ピカデリー通りを挟んだ反対側で、王立芸術院(Royal Academy of Arts)の西側には、100mを超える長さのバーリントンアーケード(Burlington Arcade)がある。

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