2016年3月5日土曜日

ロンドン 地下鉄オルドゲート駅(Aldgate Tube Station)

オルドゲートハイストリートから見た地下鉄オルドゲート駅全景

サー・アーサー・コナン・ドイル作「ブルース・パーティントン型設計図(The Bruce-Partington Plans)」では、1895年11月の第3週の木曜日、ある電報がベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元に届けられるところから、物語が始まる。その電報は、シャーロックの兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)からで、「カドガン・ウェストの件で会う必要がある。直ぐにそちらへ行く。マイクロフト(Must see you over Cadogan West. Coming at once. Mycroft)」という文面だった。兄マイクロフトがやって来る前に事実関係を把握すべく、シャーロック・ホームズはジョン・ワトスンに対して、新聞に載っている記事を調べるよう、依頼する。該当する新聞記事を見つけたワトスンは、次のように読み上げた。

地下鉄オルドゲート駅のプラットフォーム

「男性の名前は、アーサー・カドガン・ウェスト。年齢は27歳、独身、ウールウィッチ兵器工場の事務員だ。」
「英国政府の役人と言う訳か。兄マイクロフトとの関係に注意しないといけないな。」
「月曜日の夜に、彼は突然ウールウィッチを去った。最後に彼を見たのは、彼の婚約者であるヴァイオレット・ウェストベリーで、その晩7時半頃、彼は彼女を残したまま、突然霧の中へ立ち去って行った、とある。彼らの間に何か口論があった訳ではなく、彼女としても、彼の急な行動の原因が全く判らないらしい。その後、ロンドン地下鉄のオルドゲート駅をちょっと行った場所で、メイソンという名の保線員が彼の死体を発見するまでの間、彼女は彼の消息を全く知らないそうだ。」
「彼の死体が発見されたのは、何時だい?」
「彼の死体は、火曜日の朝6時に発見された。具体的に言うと、線路がトンネルから出てくる駅に近いポイントで、東へ延びる軌道の左側のレールの上に横たわっていた。頭部がひどく損傷しており、列車から転落した際にできた傷かもしれない。それ以外に、彼の死体をそこに運び込む方法はない。彼の死体が近隣の通りから運ばれてきたとすれば、駅の改札を必ず通り過ぎたはずで、改札にずっと立っていた集札係が見逃すことはありえない。この点については、絶対に確かなようだ。」
「結構。この事件は充分に明確だと言える。この男は死んでいたにしろ、生きたままにしろ、列車から転落したか、あるいは、突き落とされたんだ。ここまでは、僕には明白だ。続けてくれ。」

地下鉄オルドゲート駅の周囲は再開発が行われ、
新しいオフィスビル群に取り囲まれている

'The man's name was Arthur Cadogan West. He was twenty-seven years of age, unmarried, and a clerk at Woolwich Arsenal.'
'Government employ. Behold the link with brother Mycroft!'
'He left Woolwich suddenly on Monday night. Was last seen by his fiancee, Miss Violet Westbury, whom he left abruptly in the fog about seven-thirty that evening. There was no quarrel between them and she can give no motive for his action. The next thing heard of him was when his dead body was discovered by a plate layer named Mason, just outside Aldgate Station on the Underground system in London.'
'When?'
'The body was found at six on Tuesday morning. It was lying wide of the metals upon the left hand of the trace as one goes eastward, at a point close to the station, where the line emerges from the tunnel in which it runs. The head was badly crushed - an injury which might well have caused by a fall from the train. The body could only have come on the line in that way. Had it been carried down from any neighboring street, it must have passed the station barriers, where a collector is always standing. This point seems absolutely certain.'
'Very good. The case is definite enough. The man, dead or alive, either fell or was precipitated from a train. So much is clear to me. Continue.'

地下鉄オルドゲート駅の西側に建つセントボトルフ教会―
新しいオフィスビル群に睥睨されている

ウールウィッチ兵器工場の事務員アーサー・カドガン・ウェスト(Arthur Cadogan West)の死体が発見された地下鉄オルドゲート駅(Aldgate Tube Station)は、ロンドンの経済活動の中心部シティー・オブ・ロンドン (City of London)内の東端にあり、セントボトルフストリート(St. Botolph Street)と呼ばれる周回道路に囲まれた浮島内に建っている。オルドゲートハイストリート(Aldgate High Street)に面する南側に、駅の入口が開いている。

地下鉄オルドゲート駅は、周囲に建つオフィス街に勤務する人達に利用されている

オルドゲート駅は1876年11月18日にオープンし、1941年よりメトロポリタンライン(Metropolitan Line)が当駅を始発駅としている他、サークルライン(Circle Line)が当駅を通っている。なお、サークルラインの停車駅としては、オルドゲート駅はリヴァプールストリート駅(Liverpool Street Tube Station)とタワーヒル駅(Tower Hill Tube Station)の間に位置している。

オルドゲート駅の東側には、地下鉄オルドゲートイースト駅(Aldgate East Tube Station)が8年後の1884年にオープンし、ハマースミス&シティーライン(Hammersmith and City Line)とディストリクトライン(District Line)がこちらの駅を利用している。

0 件のコメント:

コメントを投稿