2016年3月26日土曜日

ロンドン グレイトジョージストリート13番地(13 Great George Street)

グレイトジョージストリートの東側から西側を望む

サー・アーサー・コナン・ドイル作「ブルース・パーティントン型設計図(The Bruce-Partington Plans)」では、1895年11月の第3週の木曜日、ベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を彼の兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)が、スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)を伴って、緊急の要件で訪れるところから、物語が始まる。
マイクロフトによると、同じ週の火曜日の朝、ウールウィッチ兵器工場(Woolwich Arsenal)に勤めるアーサー・カドガン・ウェスト(Arthur Cadogan West)が地下鉄オルドゲート駅(Aldgate Tube Station)の線路脇で死体となって発見された、とのことだった。前日の月曜日の夜、彼は婚約者のヴァイオレット・ウェストベリー(Violet Westbury)をその場に残したまま、突然霧の中を立ち去ってしまったと言う。そして、翌朝、死体となった彼のポケットから、英国政府の最高機密で、ウールウィッチ兵器工場の金庫室内に厳重に保管されていたはずの「ブルース・パーティントン型潜水艦」の設計図10枚のうちの7枚が出てきた。ところが、一番重要な残り3枚はどこにもなかったのである。


マイクロフトは、シャーロックに対して、(1)新型潜水艦の設計図が何故持ち出されたのか、(2)アーサー・カドガン・ウェストは本件にどのように関与しているのか、(3)彼はどのようにして殺されて、現場まで運ばれたのか、そして、(4)残りの3枚の設計図は一体どこへ消えたのかを早急に調べるよう、強く要請した。そこで、シャーロックは、ワトスンを連れて、地下鉄オルドゲート駅へと向かった。
地下鉄オルドゲート駅での調査を終えた後、ワトスンと一緒にウールウィッチへ向かう途中、シャーロックはロンドンブリッジ駅(London Bridge Station)に立ち寄って、マイクロフト宛に電報を打ち、「英国に居る外国のスパイや国際的なエージェントの完全な一覧表を、彼らの住所付きで、ベーカーストリートへ届けてくれ。」と依頼した。

グレイトジョージストリート1番地の建物

思った通り、手紙がベーカーストリート221Bで私達を待っていた。英国政府の配達人が大至急便でそれを配送したのである。ホームズは手紙の内容をちらっと見ると、それを私に投げて寄越した。

「小バエは無数に居るが、こんな大事件を手掛けるのは、ほとんど居ない。調査すべき人物は、ウェストミンスター、グレイトジョージストリート13番地のアドルフ・メイヤー、ノッティングヒル、キャンプデンマンションズのルイス・ラ・ロティエール、そして、ケンジントン、コールフィールドガーデンズ13番地のヒューゴ・オーバーシュタインだ。最後の人物は、月曜日にロンドン内に居たことが判っているが、今はロンドンに居ないという報告が為されている。光明が見えたと聞いて嬉しいよ。内閣はお前の最終報告を待ち望んでいる。最高責任者の方から緊急の陳情が届いた。必要であれば、英国軍がお前の後ろ盾となる。
マイクロフト」

グレイトジョージストリートの西側から東側を見たところ―
画面左手奥に見えるのは、国会議事堂

Surely enough, a note awaited us at Baker Street. A government messenger had brought it post-haste. Holmes glanced at it and threw it over to me.

There are numerous small fry, but few who would handle so big an affair. The only men worth considering are Adolph Meyer, of 13 Great George Street, Westminster; Louis La Rothiere, of Campden Mansions, Notting Hill; and Hugo Oberstein, 13 Caulfield Gardens, Kensington. The latter was known to be in town on Monday and is now reported as having left. Glad to hear you have seen some light. The Cabinet awaits your final report with the utmost anxiety. Urgent representations have arrived from the very highest quarter. The whole force of the state is at your back if you should need it.
Mycroft

画面奥の道路がグレイトジョージストリート―
画面左手の建物がグレイトジョージストリート12番地で、
画面奥の建物には、財務省が入居している

マイクロフト・ホームズの手紙において、「ブルース・パーティントン型潜水艦」の設計図盗難に関与している可能性がある容疑者の一人として言及されているアドルフ・メイヤー(Adolph Meyer)が住むグレイトジョージストリート(Great George Street)は実在の通りで、ロンドンの中心部シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のウェストミンスター地区(Westminster)内にある。グレイトジョージストリートは、国会議事堂(House of Parliament)前にあるパーラメントスクエア(Parliament Square)から始まり、セントジェイムズパーク(St. James's Park)の南側に沿って西に延びる通りである。

グレイトジョージストリート側に面している
財務省が入居している建物の門

グレイトジョージストリートの北側には、財務省(Her Majesty's Treasury)等の英国政府機関が入居する建物が建っているが、入口として主に使用されているのは、グレイトジョージストリート側(南側)ではなく、反対のキングチャールズストリート側(King Charles Streetー北側)である。ちなみに、財務省が入居する建物の北側には、外務省(Foreign and Comonwealth Office)が入居する建物があり、その入口もキングチャールズストリートに面している。

グレイトジョージストリート12番地には、
「RICS (Royal Institute of Chartered Surveyors)」
(土地/不動産/建築分野における国際的な職業専門家団体)が入居している

グレイトジョージストリート1番地は同ストリートの西端に建っていて、東側、すなわち、パーラメントスクエアへ進むに従って番地が増えていくが、現在の住所表記場、12番地まではあるようだ。よって、アドルフ・メイヤーが住んでいたグレイトジョージストリート13番地は架空の住所で、実在していない。

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