2015年11月15日日曜日

ロンドン エニスモアガーデンズ(Ennismore Gardens)

エニスモアガーデンズに面して建つ住居

アガサ・クリスティー作「戦勝記念舞踏会事件(The Affair at the Victory Ball)」(1951年ー「負け犬他(The Under Dog and Other Stories)」に収録)では、コロッソスホールにおいて開催されていた戦勝記念の仮装舞踏会で惨劇が起きる。仮装舞踏会に来ていた6人組の一人、若きクロンショー子爵(Viscount Cronshaw)が心臓をナイフで刺されて殺されているのが発見されたのである。彼はイタリアの即興喜劇(commedia dell'arte)の道化役(Harlequin)の仮装をしていたのだが、彼の死体が発見された時、死後硬直が既にかなり進んでいた。


また、クロンショー子爵のフィアンセと噂されている女優のココ・コートニー(Miss "Coco" Courtenay)がチェルシー地区(Chelsea)にある彼女のフラットで死亡しているのを翌朝発見された。コカインの過剰摂取による薬物中毒が原因であった。ココ・コートニーも前日仮装舞踏会に出席していた6人組の一人であったが、舞踏会出席者によると、当夜、クロンショー子爵と彼女は何故か喧嘩していたと言う。そのため、彼女は舞踏会を途中退席し、6人組の一人、夫妻で出席していた舞台俳優のクリストファー・デイヴィッドソン(Mr Christopher Davidson)に頼んで、自分のフラットへ連れ帰ってもらっていたのだ。検死解剖の結果、彼女は常習的な薬物中毒者であることも判明した。
動機、アリバイや2つの事件の関連性等、全てが謎めいており、自分の手に余ると考えたスコットランドヤードのジャップ主任警部(Chief Inspector Jaap)はエルキュール・ポワロに捜査協力を求めるのであった。

エニスモアガーデンズを北側から見たところ

英国のTV会社ITV1が放映していたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「戦勝記念舞踏会事件」(1991年)の回では、戦勝記念の仮面舞踏会に出席するため、道化役に扮したクロンショー子爵が叔父のユースタス・ベルテン(Eustace Beltaine)の自宅へ迎えにやって来る。その際、叔父からお金の無心を受けたクロンショー子爵は、これをキッパリと断る。ユースタス・ベルテンの自宅として、エニスモアガーデンズ(Ennismore Gardens)にある住宅が撮影に使用されている。


エニスモアガーデンズは、シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のブロンプトン地区(Brompton)内に位置しており、(1)地下鉄ナイツブリッジ駅(Knightsbridge Tube Station)からハイドパーク(Hyde Park)の南側を西へ延びるナイツブリッジ通り(Kightsbridge)/ケンジントンロード(Kensington Road)と(2)同駅からハロッズ(Harrods)デパートの前を通って南西へ延びるブロンプトンロード(Brompton Road)に挟まれた一帯内に所在している。


エニスモアガーデンズの北側には、以前、「キングストンハウス(Kingston House)」と呼ばれる邸宅が建っていた。これは、18世紀中頃、第2代キングストン・アポン・フル公爵イヴリン・ピエールポント(Evelyn Pierrepont, 2nd Duke of Kingston-upon-Hull:1711年ー1773年)が妻のエリザベス・チャドレー(Elizabeth Chudleigh:1720年ー1788年)のために建てた邸宅であったが、エリザベスの死後、いろいろな所有者を転々としたが、1937年に取り壊されてしまった。跡地には、現在、「キングストンハウスノース(Kingston House North)」と「キングストンハウスサウス(Kingston House South)」と呼ばれる2棟のフラットが、エニスモアガーデンズに面するように建っている。

エニスモアガーデンズに面して建つフラット「キングストンハウスサウス」

エニスモアガーデンズを含む一帯は、1840年代から開発が始まり、パブ(「エニスモアアームズ(Ennismore Arms)」ー現存せず)、教会や住居等が建設された。当初は、貴族や政治家が数多く住む場所だったが、キングストンハウスが取り壊された1930年代以降、住民の顔ぶれが芸術家や俳優等に変わる。第二次世界大戦(1939年ー1945年)中、ドイツ軍による爆撃により、付近はかなりの被害を蒙ったが、その後、復興して、現在に至っている。

エニスモアガーデンズを南側から見たところ

エニスモアガーデンズの西側には、
・ロイヤルアルバートホール(Royal Albert Hall)
・インペリアルカレッジ(Imperial College)
・ヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)
・自然史博物館(National History Museum)
・科学博物館(Science Museum)
等があり、学芸や観光の観点からは、非常に便利な場所である。

そういった利便性もあり、現在、エニスモアガーデンズ内の不動産価格はかなり上昇しており、日本円換算で平均6~7億円という驚きの金額である。

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