2015年4月26日日曜日

ロンドン リージェントサーカス(Regent Circus)

南側のリージェントストリートから見たオックスフォードサーカス

サー・アーサー・コナン・ドイル作「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン(Charles Augustus Milverton)」(出版社によっては、「犯人は二人」や「恐喝王ミルヴァートン」と訳しているケースあり)では、ドーヴァーコート伯爵(Earl of Dovercourt)との結婚式を2週間後に控えたレディー・エヴァ・ブラックウェル(Lady Eva Brackwell)からの依頼を受けて、シャーロック・ホームズとジョン・ワトスンは、彼女が昔出した手紙をロンドン一の悪党かつ恐喝王であるチャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン(Charles Augustus Milverton)から取り戻そうしていた。
レディー・エヴァ・ブラックウェルを絶望的な状況から救い出すために、夜間、ミルヴァートンの屋敷に無事侵入したホームズとワトスンであったが、予期せぬ事態が彼らを待っていた。ミルヴァートンの部屋には別の来客、黒いヴェールを架けた貴婦人が既に居たのである。彼女は昔ミルヴァートンによって人生を破滅させられており、その復讐のためにやって来たのだった。彼女が取り出したレボルバーからミルヴァートンに向け、連続して発射される銃弾。屋敷内に響き渡る銃声。床に倒れ伏すミルヴァートンを尻目にして姿を消す謎の貴婦人。その混乱に乗じて、ホームズとワトスンはレディー・エヴァ・ブラックウェルの手紙を無事に処分すると、なんとか追跡者を振り切って、ベーカーストリート221Bに戻って来た。
翌日、ホームズの元を訪れたスコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)から、ミルヴァートンの屋敷での惨劇に関する捜査への助力を依頼されるが、ホームズは「被害者(=ミルヴァートン)よりも犯人達に共感するから、この事件は扱わない。」と言って、断ってしまうのであった。

地下鉄オックスフォードサーカス駅を示す電光掲示板(その1)
地下鉄オックスフォードサーカス駅を示す電光掲示板(その2)

私達が目撃したミルヴァートンの屋敷での惨劇について、ホームズは私には一言も話さなかったが、私が観察したところ、午前中ずーっと彼は考え込んでいる様子だった。そして、ホームズのうつろな目とぼんやりした態度から、彼が何かを思い出そうと努力しているような印象を私は受けた。私達が昼食をとっている途中、ホームズは突然立ち上がったのだ。「ワトスン、なんとことだ。判ったぞ!」と、彼は叫んだ。「帽子をとって、僕と一緒に来てくれ!」彼は全速力でベーカーストリートを下り、オックスフォードストリートに沿って、リージェントサーカスへ達するところまでやって来た。左側には、当時の有名人や美女の写真が飾られた店のショーウィンドがあった。ホームズの視線がショーウィンドに飾られた写真の一つに釘付けとなった。彼の視線をたどると、高貴な頭に高いダイヤモンドのティアラをつけて、宮中礼服に身を包み、威厳があり、堂々としている女性の写真がそこにあった。繊細にカーブした鼻、際立った眉、真っ直ぐな口元、そして、その下にある強く小さな顎。その後、彼女の夫だった偉大な貴族で、かつ政治家でもあった人物の高貴な称号を見て、私は息を飲んだ。私はホームズと目を合わせた。そして、ホームズは唇に指をあてると、私達は店のショーウィンドから立ち去ったのであった。

オックスフォードサーカスの北西の角に建つ建物—
ミルヴァートンを射殺した貴婦人の写真を飾っていた店はここにあったと思われる

Holmes had not said one word to me about the tragedy which we had witnessed, but I observed all the morning that he was in his most thoughtful mood, and he gave me the impression, from his vacant eyes and his abstracted manner, of a man who is striving to recall something to his memory. We were in the middle of our lunch when he suddenly sprang to his feet. 'By Jove, Watson; I've got it!' he cried. 'Take your hat! Come with me!' He hurried at his top speed down Baker Street and along Oxford Street, until we had almost reached Regent Circus. Here on the left hand there stands a shop window filled with photographs of the celebrities and beauties of the day. Holmes's eyes fixed themselves upon one of them, and following his gaze I saw the picture of a regal and stately lady in court dress, with a high diamond tiara upon her noble head. I looked at that delicately-curved nose, at the marked eyebrows, at the straight mouth, and the strong little chin beneath it. Then I caught my breath as I read the time-honoured title of the great nobleman and statesman who wife she had been. My eyes met these of Holmes, and he put his finger to his lips as we turned away from the window.

バスの向こう側辺りに、
写真を飾っていたショーウィンドがあったものと思われる

ミルヴァートンを射殺した貴婦人の写真をホームズとワトスンが見た店があるリージェントサーカス(Regent Circus)は架空の住所で、実際に存在していない。
おそらく、東西に走るオックスフォードストリート(Oxford Streetートッテナムコードロード(Tottenham Court Road)とマーブルアーチ(Marble Arch)を結ぶ通り)と南北に走るリージェントストリート(Regent Streetーパル・マル通り(Pall Mall)とリージェンツパーク(Regents Park)を結ぶ通り)が交差する場所を指しているものと思われる。現在、その場所はオックスフォードサーカス(Oxford Circus)と呼ばれており、原作では、リージェントストリートからとった「リージェント」とオックスフォードサーカスからとった「サーカス」を組み合わせているものと思われる。
そういう訳で、オックスフォードサーカスの近くに、その店があったものと推測できる。ホームズとワトスンはベーカーストリート221Bから南へ下って来た後、オックスフォードストリートを東方面へ進み、オックスフォードサーカス(原作では、リージェントサーカス)に至る手前の左手にその店は位置していたことになるので、その店の正確な場所は、オックスフォードサーカスの北西の角の近くという訳である。現在、オックスフォードサーカスの北西の角にある建物には、スウェーデンのファッションブランド「エイチ・アンド・エム(H&M)」が入居している。

オックスフォードサーカスの北西の角には、
現在、「H&M」が入居している

オックスフォードサーカス交差点の下には、地下鉄オックスフォードサーカス駅(Oxford Circus Tube Station)があり、セントラルライン(Central Line)、ベーカールーライン(Bakerloo Line)とヴィクトリアライン(Victoria Line)が通っている。

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