2014年12月27日土曜日

ロンドン トッテナムコートロード/グッジストリート(Tottenham Court Road/Goodge Street)


サー・アーサー・コナン・ドイル作「青いガーネット(The Blue Carbuncle)」では、クリスマスから二日目の朝、ジョン・ワトスンがベーカーストリート221Bを訪問すると、シャーロック・ホームズは紫色の化粧着(dressing-gown)を着て、ソファーの上でくつろいでいた。ソファーの隣に置かれた木製椅子の背もたれの角には、薄れてボロボロになった固いフェルト製帽子が掛けられていて、ホームズは拡大鏡とピンセットでこの帽子を調べていたようであった。ワトスンの問いに、ホームズは「この帽子は、退役軍人(commissionaire)のピータースン(Peterson)が置いていったものだ。」と答える。ホームズの説明は、以下のように続くのである。

トッテナムコートロード沿いに並ぶクリスマスマーケットの店

トッテナムコートロードとトッテナムストリート
(Tottenham Street)が交差する角にある広場に立つクリスマスツリー

「まず最初に、この帽子がどのような経緯でここにやって来たのかを説明しよう。この帽子は、クリスマスの朝、丸々と太ったガチョウと一緒にここに持ち込まれたんだ。今頃、ガチョウはピータースンの竃(かまど)の前で火に炙られているに違いない。事実関係はこんな風だ。君も知っている通り、ピータースンは非常に実直な男だ。クリスマスの朝4時頃、彼はちょっとした宴席から帰るところで、トッテナムコードロードを家に向かって歩いていた。彼の前方には、ガス灯の明かりの中、白いガチョウを肩にかけた背の高い男が千鳥足で歩いているのが見えた。ピータースンが(トッテナムコートロードと)グッジストリートの角に来た時、背の高い男と街のゴロツキ達の間で喧嘩が始まったんだ。ゴロツキ達の一人が背の高い男の帽子を叩き落としたので、男が自分の身を守ろうと、ステッキを持ち上げて、頭上で振り回したところ、はずみで後ろにあった商店のショーウィンドのガラスを割ってしまった。男をゴロツキ達から守ろうと、ピータースンはその場に駆け付けた。ところが、男はショーウィンドのガラスを割ってしまったことに動揺していた上に、警察官のような制服を着た人間が自分の方に向かって来るのを見て、ガチョウを落とし、慌てて逃げ出したんだ。そして、男はトッテナムコートロードの裏に横たわる迷路のような小さな通りの中に消えてしまった。ゴロツキ達もまたピータースンの登場に驚いて逃去った。その結果、ピータースンは一人喧嘩の現場に取り残され、そして、勝利の戦利品として、つぶれた帽子と申し分のないクリスマスのガチョウだけが彼の手の中に残ったんだ。(And, first, as to how it came here. It arrived upon Christmas morning, in company with a good fat goose, which is, I have no doubt, roasting at this moment in front of Peterson's fire. The facts are these : about four o'clock on Christmas morning, Peterson, who, as you know, is a very honest fellow, was returning from some small jollification and was making his way homeward down to Tottenham Court Road. In front of him he saw, in the gaslight, a tallish man, walking with a slight stagger and carrying a white goose slung over his shoulder. As he reached the corner of Goodge Street, a row broke out between this stranger and a little knot of roughs. One of the latter knocked off the man's hat, on which he raised his stick to defend himself, and, swinging it over his head, smashed the shop window behind him. Peterson had rushed forward to protect the stranger from his assailants, but the man, shocked at having broken the window and seeing an official-looking person in uniform rushing towards him, dropped his goose, took to his heels and vanished amid the labyrinth of small streets which lie at the back of Tottenham Court Road. The roughs had also fled at the appearance of Peterson, so that he was left in possession f the field of battle, and also of the spoils of victory in the shape of this battered hat and a most unimpeachable Christmas goose.)」

グッジストリートの西側から東方面を見たところ
奥に見えるのが、トッテナムコートロード

グッジストリート沿いにあるパブ「The Fitzrovia」

ピータースンがボロボロになった帽子と丸々と太った白いガチョウを手に入れることになったグッジストリート(Goodge Street)は、大英博物館(British Museum)やロンドン大学(University of London)等が点在するブルームズベリー(Bloomsbury)地区内にある。グッジストリートは、トッテナムコートロード(Tottenham Court Road)を間にして、大英博物館やロンドン大学とは反対側(=西側)に位置している。また、グッジストリートの近くには、通りの名を冠した地下鉄グッジストリート駅(Goodge Street)がトッテナムコートロード沿いにある。

トッテナムコートロード沿いにある地下鉄グッジストリート駅

グッジストリートから始まり、トッテナムコートロードに並行して北へのびるホワイトフィールドストリート(Whitefield Street)を少し北上すると、そこにはポロック玩具博物館(Pollock's Toy Museum & Shop)という小さな私設博物館がある。ここでは、厚紙でつくられた人形劇の劇場、テディー・ベアや人形の家等のコレクションが数多く展示されている。また、通りに面した部分は、昔懐かしい玩具を販売するショップとなっている。

ホワイトフィールドストリートとスカラストリート(Scala Street)が交差する
角に建つポロック玩具博物館(入口は画面右手奥)

ポロック玩具博物館の建物壁面

なお、原題の「Carbuncle」とは、頂点が丸くカットされた「ガーネット」のことを指している。ガーネットの色としては、白色、赤色、黄色、緑色や紫色等が存在するが、「青色」は存在していないため、本物語で出てきた宝石が果たして「ガーネット」であったのかどうかは疑問である。

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