2014年12月14日日曜日

ロンドン クリスティーズ(Christie's)

キングストリート(King Street)沿いにある
クリスティーズ入口脇にある銘板

サー・アーサー・コナン・ドイル作「高名な依頼人(The Illustrious Client)」において、サー・ジェイムズ・デマリー大佐(Colonel Sir James Damery)経由、匿名の依頼人からの頼みを受けたシャーロック・ホームズは、ド・メルヴィル将軍(General de Merville)の令嬢ヴァイオレット・ド・メルヴィル(Violet de Merville)とオーストリアのアデルバート・グルーナー男爵(Baron Adelbert Grunerーハンサムであるが、非常に残虐な男)の結婚をなんとか阻止しようと試みる。ホームズは、英国のキングストン(Kingston)に住むグルーナー男爵との直接交渉やロンドンのバークリースクエア(Berkeley Square)に住むド・メルヴィル嬢への説得を行うが、残念ながら、どちらも失敗に終わってしまう。そして、ド・メルヴィル嬢との会見の二日後、昼の12時頃、リージェントストリート(Regent Streetーピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)から北方面にのびる大通り)沿いにあるカフェ・ロイヤル(Cafe Royal)の前の路上で、ホームズはグルーナー男爵が放った手下達の襲撃を受けて、瀕死の大怪我を負ってしまうのである。
ホームズの大怪我から1週間が経過した日の夕刊に、グルーナー男爵の渡米予定を伝える記事が掲載された。グルーナー男爵が英国から逃げ出すつもりと考えたホームズは、ジョン・ワトスンに助けを求める。ワトスンに丸一日がかりで中国の陶器に関する詰め込み勉強をさせた後、翌日の夕方、ホームズはワトスンにあるものを手渡すのであった。

キングストリートとバリーストリート(Bury Street)の角にある
クリスティーズの建物

「それじゃ、暖炉の上からその小箱を取ってくれないか。」
彼(=ホームズ)は蓋を開けて、綺麗な東洋の絹で非常に注意深く包まれた小さな品物を小箱から取り出した。彼が絹の包みを解くと、その中から実に美しい濃青色をした精巧な小皿がその姿を現した。
「ワトスン、この小皿は慎重に取り扱ってほしい。何故ならば、これは明朝時代の本物の薄手の磁器なんだ。クリスティーズが取り扱った中でも、これに勝るものはない位の逸品だ。完全な一組が揃っていれば、王国一つの値打ちに匹敵するよ。実際のところ、北京の王宮の外に完全な一揃いが存在しているとは思えないけどね。この小皿を一目見たら、どんな美術品鑑定家でも泣いて喜ぶに違いない。」
('Then hand me that little box from the mantelpiece.'
He opened the lid and took out a small object most carefully wrapped in some fine Eastern silk. This he unfolded, and disclosed a delicate little saucer of the most beautiful deep-blue color.
'It needs careful handling, Watson. This is the real eggshell pottery of the Ming dynasty. No finer piece passed through Christie's. A complete set of this would be worth a king's ransom - in fact, it is doubtful if there is a complete set outside the Imperial palace of Peking. The sight of this would drive a real connoisseur wild'.)

建物外壁に掲げられているクリスティーズの旗

クリスティーズ(Christie's)は、サザビーズ(Sotheby's)と並び、世界中で有名なオークションハウス(=競売会社)で、1766年12月5日、美術商のジェイムズ・クリスティー(James Christie:1730年ー1803年)によってロンドンに設立された。クリスティーズは設立後すぐに第一級のオークションハウスとしての名声を確立し、フランス革命(French Revolution:1789年)後、ロンドンが国際的な美術品取引の新しい中心地となったことに伴い、大きく成長したのである。その後、クリスティーズは1958年に最初の海外事務所をローマに構え、最初の海外競売場をジュネーブに開設して、宝石のオークションを行っている。

クリスティーズのメインとなるロンドン競売場はウエストミンスター区(City of Westminster)のセントジェイムズ地区(St. James's)、キングストリート(King Street)沿いにあり、1823年に開設されている。また、1975年には、サウスケンジントン区(South Kensington)に2番目の競売場が開設され、現在世界中でも最も活発競売場の一つとなっている。

その後も、クリスティーズは成長を続け、ニューヨーク、ロサンゼルス、ヒューストン、パリ、ジュネーブ、アムステルダム、ウィーン、ベルリン、ローマ、ミラノ、マドリードやモスクワといった欧米の主要都市以外に、メキシコ、アルゼンチン、イスラエル、UAE(アラブ首長国連邦)、日本、韓国、中国、香港、シンガポールやタイ等、世界中に競売場を有するに至っているのである。

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