2020年12月6日日曜日

アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」<グラフィックノベル版>(Peril at End House by Agatha Christie

HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」のグラフィックノベル版の表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-

ニック・バックリーの従姉妹であるマギー・バックリーが殺害された
花火の夜のエンドハウスが描かれている。
また、画面左上には、ホテル マジェスティックにおいて、
ポワロが拳銃の音だとは気付かなかった蜂も描かれている。


12番目に紹介するアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)によるグラフィックノベル版は、「エンドハウスの怪事件(Peril at End House)」(1932年)である。

本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第12作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズに属する長編のうち、第6作目に該っている。


HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」のグラフィックノベル版の裏表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-

エンドハウスにおいて、ニックの従姉妹であるマギーを殺害するのに
使用された拳銃が描かれている。


本作品のグラフィックノベル版は、元々、フランス人の作家である Didier Quella-Guyot(1955年ー)が構成を、そして、フランス人のイラストレーターである Thierry Jollet(1964年ー)が作画を担当して、2009年にフランスの Heupe SARL から「La Maison du peril」というタイトルで出版された後、2010年に英国の HarperCollinsPublishers から英訳版が発行されている。

物語の冒頭、ニックが運転する車のブレーキが効かなくなっている場面


「コーニッシュ リヴィエラ(Cornish Riviera)」と呼ばれるコンウォール州(Cornwall)のセントルー村(St. Loo)に近いホテル マジェスティック(Hotel Majestic)において、エルキュール・ポワロは、相棒で、友人でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)と一緒に、休暇を楽しんでいた。一方、新聞では、世界一周飛行に挑戦中のパイロットであるマイケル・シートン(Michael Seton)が、太平洋上で行方不明になっていることを伝えていた。

画面右手前が、ポワロとヘイスティングス大尉が宿泊しているホテル マジェスティックで、
画面左手奥に、ニックが住むエンドハウスが建っている。


午後のお茶の際、ポワロは、ホテルの庭で蜂が羽音を立てて飛び回っているのを、少しうるさく感じていたところ、発射後の弾丸が庭に落ちているのを見つけた。蜂の羽音に混じって、何者かがホテルの庭において拳銃を発射したのだろうか?

ホテル マジェスティックにおいて出会ったニックから、
ポワロとヘイスティングス大尉は、彼女が3日間に3度も命拾いをしたことを聞く。


ちょうどそこへ、ニック・バックリー(Nick Buckley
  本名:マグダラ・バックリー(Magdala Buckley))という美しい女性が、角を曲がって姿を現した。彼女は、ホテルからほんの目と鼻の先にある別荘エンドハウス(End House)の若き女主人であった。

彼女によると、「3日間に3度も命拾いをした。」とのことだった。

<1度目>彼女が寝ているベッドの頭板の上に架かっている大きな油絵の額が、ある夜、額を支えている針金が切れて落下したが、ちょうど彼女が目を覚ましてベッドから離れていたため、間一髪のところだった。

<2度目>彼女が海水浴のためにエンドハウスから小道を下っていた際、丸石が崖から転がり落ちてきて、もう少しで当たるところだった。

<3度目>車のブレーキが突然効かなくなったが、近くの植え込みに突っ込むだけで、なんとか事無きを得た。

話を終えて、彼女が立ち去った際に忘れていった日よけ帽子の広いつばには、穴が開いており、狙撃によるものだと、ポワロは見抜く。つまり、ポワロが先程拾った弾丸は、何者かが彼女の命を狙って発射したことになる。更に言うと、彼女は、3度ではなく、4度も命を狙われたことになる。大胆にも、名探偵である自分の目前で、殺人を行おうとした犯人に、ポワロはプライドを大きく傷つけられたのである。

ポワロは、ヘイスティングス大尉を伴って、ニックが住むエンドハウスへと赴く。


エンドハウスを訪れたポワロとヘイスティングス大尉は、
ニックから、命拾いをした3件の出来事について、直接聞く(その1)


ニックには、一緒に食事をしたり、飲んだりする友人が、3人居た。

(1)フレディー・ライス(Freddie Rice):2、3年前に、アルコール中毒の夫と別れたものの、元夫は行方知らず。

(2)ジム・ラザラス(Jim Lazarus):美術商

(3)ジョージ・チャレンジャー(George Challenger):英国海軍中佐

ニックは、彼女の取り巻きの友人から、何か恨まれているのだろうか?エンドハウスが多額の抵当に入っていることから、金銭面が動機とは思われなかった。現時点において、ニックの命をつけ狙う犯人の動機が、ポワロには、ハッキリとしなかった。


エンドハウスを訪れたポワロとヘイスティングス大尉は、
ニックから、命拾いをした3件の出来事について、直接聞く(その2)


そのため、ポワロとしては、犯人の可能性がある人物を突き止めるまでの間、何としてでも、ニックの命を守る必要性があった。そこで、ポワロは、ニックに対して、ヨークシャー州(Yorkshire)の牧師の娘で、彼女の従姉妹でもあるマギー・バックリー(Maggie Buckley)を呼び寄せて、いつも彼女の側に居てもらうよう、説得する。

ポワロによる説得の結果、ニックは、
ヨークシャー州に住む彼女の従姉妹であるマギーを、エンドハウスへと呼び寄せた。



ところが、セントルー村で開催された花火の夜、ニックがヨークシャー州から呼び寄せたマギーが、何者かに殺害されてしまった。当夜、マギーは、ニックの真っ赤なチャイナシルクのショールを借りていたため、ニックと間違えられて、犯人に拳銃で撃たれたものと思われた。


何度も、自分の目前で犯行を繰り返す殺人犯の正体を暴くべく、ポワロは灰色の脳細胞をフル回転させるのだった。


セントルー村で開催された花火の夜、エンドハウスへと戻るポワロとヘイスティングス大尉は、
建物の前に、真っ赤なチャイナシルクのショールを羽織った女性が倒れているのを発見する。


前回もコメントした通り、本作品は、アガサ・クリスティーの小説の中で、最も好きな作品の一つである。それ故に、このグラフィックノベル版には、以下の点で、個人的には、不満が残る。

<構成面>ニックの従姉妹であるマギーが殺害されるまでに、全体のページ数の約 2/3 弱を費やしてしまい、物語の後半および終盤が、かなり駆け足の展開となっている。特に、ポワロが殺人犯の正体を暴く場面が、最後の2ページだけとなっていて、正直ベース、ポワロのセリフだけで処理している傾向が、非常に強い。

<作画面>残念ながら、他の作品のイラストレーター達と比べると、本作品の作画は、少しばかり劣っているように感じられる。個人的に非常に好きな作品なだけに、本作品の作画は、イメージにうまく合致していない。


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