2019年2月3日日曜日

ロンドン チジックモール(Chiswick Mall)

チジックモールからテムズ河とチジック小島を見たところ

アガサ・クリスティー作「スペイン櫃の秘密(The Mystery of the Spanish Crest)」は、短編集「クリスマスプディングの冒険(The Adventure of the Christmas Pudding)」(1960年)に収録されている一遍である。

チジックモールから西方面を見たところ(その1)
チジックモールから西方面を見たところ(その2)

裕福な独り者であるチャールズ・リッチ少佐(Major Charles Rich)が、クレイトン夫妻(Mr and Mrs Clayton)、スペンス夫妻(Mr and Mrs Spence)とマクラーレン中佐(Commander McLaren)という長年来の友人5人を、自宅のフラットへ食事に招く。ところが、直前になって、招待客の一人であるクレイトン氏に、急な商用でスコットランドへ出かける必要が生じて、食事会に参加できなくなった。マクラーレン中佐と一緒にクラブで一杯飲んだ後、クレイトン氏は、駅へ向かう途中、事情を説明するために、リッチ少佐のフラットに立ち寄ったが、生憎と、リッチ少佐は外出していた。そこで、クレイトン氏は、リッチ少佐への伝言を残すべく、リッチ少佐の執事バージェス(Burgess)に居間へ案内してもらう。バージェスは、キッチンでの準備のため、クレイトン氏を居間に残したまま、その場を後にするが、リッチ少佐への伝言をしたためた後、クレイトン氏が立ち去るところを見かけていなかった。10分程して、リッチ少佐が帰宅し、バージェスを使い走りに外出させた。

チジックモール沿いの家並み(その1)
チジックモール沿いの家並み(その2)
チジックモール沿いの家並み(その3)

その後、クレイトン氏を除いた残り5人で、食事会は滞りなく終わったのであるが、翌朝、居間の掃除をしていたバージェスは、部屋の角に置いてあるスペイン櫃の蓋を開けると、櫃の内には首を刺し貫かれたクレイトン氏の死体が入っていたのである。スコットランドに居る筈のクレイトン氏が、スペイン櫃の内に居たのか?そして、彼は櫃の内で何をしていたのか?

チジックモールとテムズ川の間にある庭園(その1)
チジックモールとテムズ川の間にある庭園(その2)

リッチ少佐は、クレイトン氏殺害の容疑で、警察に逮捕される。リッチ少佐はクレイトン夫人に魅かれており、リッチ少佐にとって、クレイトン氏は邪魔な存在だったと、警察は推測する。そして、食事会の直前、帰宅したリッチ少佐は、居間で彼への伝言をしたためているクレイトン氏に出会い、口論の末、クレイトン氏を刺し殺して、スペイン櫃内に押し込んだ単純明快な事件だと、警察は考えたのである。

チジックモールとテムズ川の間にある庭園(その3)
チジックモールとテムズ川の間にある庭園(その4)

クレイトン夫人と共通の友人経由、クレイトン夫人から依頼を受けたエルキュール・ポワロは首をひねった。刺し殺されたクレイトン氏の死体をスペイン櫃内に押し込んだまま、リッチ少佐は、その櫃がある居間で残りの招待客4人と一緒に食事会を行い、翌朝、執事のバージェスがクレイトン氏の死体を発見するまで、そのまま死体を放置していたことになる。リッチ少佐は、それ程までに愚かなのだろうか?ポワロの灰色の脳細胞が動き出す。

チジックモール沿いの家並み(その4)
チジックモール沿いの家並み(その5)

英国のTV会社 ITV1 で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie’s Poirot」の「スペイン櫃の秘密」(1991年)の回では、物語の冒頭、ポワロとヘイスティングス大尉は劇場でオペラを観劇していた。幕間に、以前事件を解決してあげたことがあるレディー・キャロライン・チャタートン(Lady Caroline Chatterton)にポワロは声をかけられ、彼女の友人であるクレイトン夫人が夫のクレイトン氏に殺されるのではないかという奇妙な相談を受ける。アガサ・クリスティーの原作では、クレイトン氏が刺し殺されて、リッチ少佐の自宅の居間にあるスペイン櫃の内から死体で見つかったことを、ポワロは新聞で知るが、TV版の場合、原作とは異なり、事件が発生する前に、ポワロが関与するストーリー展開となっている。レディー・チャタートンから相談を受けたポワロは、後日、ヘイスティングス大尉を伴って、彼女の自宅を訪問の上、更に詳しい説明を受けるが、レディー・チャタートンの自宅として、チジックモール(Chiswick Mall)にある家が撮影に使用されている。

チジックモールとテムズ川の間にある庭園(その5)
チジックモールから見たチジック小島(その1)

チジックモールは、ハウンズロー・ロンドン自治区(London Borough of Hounslow)のチジック地区(Chiswick)内にあり、ハマースミス・アンド・フラム・ロンドン自治区(London Borough of Hammersmith and Fulham)のハマースミス地区(Hammersmith)を抜けて、ロンドンの中心部からヒースロー(Heathrow Airport)へと向かうグレイトウェストロード(Great West Road)とテムズ河(River Thames)に挟まれた場所にある。

チジックモールから見たチジック小島(その2)
チジック小島の上を通り、ヒースロー空港へと向かう航空機

グレイトウェストロードは、ロンドンの中心部とヒースロー空港を結ぶ幹線道路で、更に西へ進むと、M4という高速道路に変わるため、車の往来は非常に激しいが、テムズ河方面へ向かって、左へ曲がり、チジックモールへ入ると。そこはテムズ河沿いの非常に閑静な住宅街である。
写真を撮影した日は、雨上がり後の冬の非常に寒い午後だったが、多くの人が、家族づれで、あるいは、犬を連れて、散歩しているのが、不思議だった。


チジックモールからテムズ河方面を望むと、直ぐ目の前には、チジック小島(Chiswick Eyot)と呼ばれる小島が横たわっている。

0 件のコメント:

コメントを投稿