2017年12月24日日曜日

吸血鬼ドラキュラ(Dracula)−その1

創元推理文庫「吸血鬼ドラキュラ」の表紙
表紙のオブジェは、松野光洋氏が造形。

Loren D. Estleman 作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / シャーロック・ホームズ対ドラキュラ(The further adventures of Sherlock Holmes / Sherlock Holmes vs. Dracula)」(1978年→2015年1月11日付ブログで紹介済)のベースとなった「吸血鬼ドラキュラ(Dracula)」は、アイルランド人の小説家であるブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、エイブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)が執筆したゴシック小説 / ホラー小説である。

小説の時代設定は現代で、最終章において、7年後のことが語られているので、1880年代の5月3日から同年11月6日にかけての話であり、英国のウィトビー(Whitby)やロンドン、そして、トランシルヴァニア(Transylvania)が主な舞台となる。物語は三人称で語られていて、全て手紙、日記、新聞記事や航海日誌等による記述で、ストーリーが構成されている。

英国南西部デヴォン州(Devon)の州都エクセター(Exeter)で弁護士事務所を営むピーター・ホーキンズ(Peter Hawkins)の代理として、新人事務弁護士(solicitor)であるジョナサン・ハーカー(Jonathan Harker)が、ロンドンにあるカーファックス屋敷(Carfax)を購入したいと依頼して来たドラキュラ伯爵(Count Dracula)を訪ねるために、トランシルヴァニアのカルパチア山脈にあるドラキュラ城(Castle Dracula)へやって来るところから、物語は始まる。
実は、ドラキュラ伯爵は吸血鬼で、新たな獲物を求めて、英国への進出を狙っていたのである。ジョナサン・ハーカーがトランシルヴァニアへ呼び寄せられたのは、ドラキュラ伯爵による罠で、彼の配下である三人の女吸血鬼によって、ジョナサン・ハーカーはドラキュラ城で囚われの身となってしまうが、彼は命からがらなんとかドラキュラ城から脱出する。

その後、間もなくして、英国北東部ノースヨークシャー州(North Yorkshire)東部のエスク川(River Esk)河口にある漁港ウィットビーに、ロシア船籍の船デメテール号(Demeter)が突然姿を現して難破する。船内には、船長一人しか居なかった。だた一人生き残った船長によると、船内に居た乗組員は、航海中に一人ずつ姿を消していき、最後には自分だけが残ったと言う。デメテール号が港で難破した際、巨大な犬のような生き物が、船の甲板から陸地へ跳び移ったのが目撃された。それは、吸血鬼ドラキュラの化身であり、遂に彼は英国への上陸を果たしたのである。
心臓が悪い母親と一緒に、ウィットビーに滞在しているルーシー・ウェステンラ(Lucy Wsetenra)は、アーサー・ホルムウッド(Arthur Holmwood)、ジャック・セワード医師(Dr. Jack Seward)とクウィンシー・モリス(Quincey Morris)の親友三人組から求婚され、彼女はアーサー・ホルムウッドの求婚を受ける。その一方で、彼女は夢遊病であり、彼女の親友で、かつ、ジョナサン・ハーカーの婚約者であるウィルヘルミナ・マレー(Wilhelmina Murray)は、彼女のことを心配していた。この夢遊病が元で、ルーシー・ウェステンラはドラキュラ伯爵に襲われ、英国での最初の犠牲者となってしまう。ルーシー・ウェステンラの身を案じたジャック・セワード医師は、自分の恩師であるエイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授(Professor Abraham Van Helsing)に助けを求め、彼女の治療を依頼するのであった。

吸血鬼であるドラキュラ伯爵を除く主要な登場人物は、以下の通り。
<ドラキュラ伯爵と戦う人達>
(1)ジョナサン・ハーカー → ピーター・ホーキンズの代理として、ロンドンにあるカーファックス屋敷の購入を依頼された新人事務弁護士
(2)アーサー・ホルムウッド → ルーシー・ウェステンラの求婚者の一人で、後に彼女の婚約者となる。男爵である父親の死去に伴い、ゴダルミング卿(Lord Godalming)の爵位を受け継ぐ。
(3)ジャック・セワード → カーファックス屋敷の近くにある精神病院の院長で、ルーシー・ウェステンラの求婚者の一人。
(4)クウィンシー・モリス → 米国テキサス州の大地主で、ルーシー・ウェステンラの求婚者の一人。
(5)エイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授 → ジャック・セワードの恩師で、精神医学を専門とするアムステルダム大学の名誉教授。
<ドラキュラ伯爵に狙われる犠牲者達>
(6)ルーシー・ウェステンラ → 心臓が悪い母親と一緒に、ウィットビーに滞在している女性。ウィルヘルミナ・マレーの親友で、アーサー・ホルムウッドの婚約者。
(7)レンフィールド(Renfield) → ジャック・セワードが院長を務める精神病院に入院している患者で、蝿、、蜘蛛、鳥や鼠等を食べ、その命を奪うという独自の観念を有する。
(8)ウィルヘルミナ・マレー → 教師。ルーシー・ウェステンラの親友で、ジョナサン・ハーカーの婚約者。

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