2017年10月29日日曜日

シャーロック・ホームズ生還100周年記念切手1-「ライゲートの大地主(The Reigate Squires)」

シャーロック・ホームズ生還100周年記念切手「ライゲートの大地主」が添付された絵葉書

今週から5回にわたって、英国のロイヤルメール(Royal Mail)が発行したシャーロック・ホームズ生還100周年記念切手について、紹介していきたい。

サー・アーサー・コナン・ドイル作「最後の事件(The Final Problem)」(「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1893年12月号に発表)において、1891年(5月4日)に、犯罪界のナポレオンこと、ジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)と一緒に、スイスのマイリンゲン(Meiringen)にあるライヘンバッハの滝壺(Reichenbach Falls)に姿を消したと思われていたホームズが、「空き家の冒険(The Emputy House)」(「ストランドマガジン(Strand Magazine)」の1903年10月号に発表)において、1894年(4月5日)にジョン・H・ワトスンの前に再び姿を現す。
「ストランドマガジン」への発表年月ではなく、物語の事件発生年月で言うと、ホームズがロンドンへの生還を果たしたとされる年である1894年からの100周年を記念して、1993年10月12日に、ロイヤルメールから5種類の記念切手が発行された。「ライゲートの大地主(The Reigate Squires)」はそのうちの一つで、コナン・ドイルによる発表順では、一番古い作品となる。

「ライゲートの大地主」は、56あるホームズシリーズの短編のうち、コナン・ドイルが19番目に発表した作品で、英国では「ストランドマガジン」の1893年6月号に、また、米国では「ハーパーズ ウィークリー(Harper's Weekly)」の1893年6月17日号に掲載された。その後、同作品は、同年に出版された第2短編集となる「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」に収録されている。

「ストランドマガジン」に発表された際、「ライゲートの大地主(The Reigate Squire)」という題名であったが、「シャーロック・ホームズの回想」に収録された時には、「ライゲートの大地主達(The Reigate Squires)」という複数形の題名に改題された。また、「ハーパーズウィークリー」に発表された際には、「ライゲートの謎(The Reigate Puzzle)」という題名が使用されている。

シャーロック・ホームズ生還100周年記念切手
「ライゲートの大地主」のアップ写真

1887年4月、ワトスンは、フランスのリヨン(Lyon)において極度の過労で倒れたホームズを連れて、サリー州(Surrey)のライゲート(Reigate)へ療養に出かける。
ライゲートでの療養中、療養先のへイター大佐(Colonel Hayter→ワトスンの旧友で、退役軍人)の家で、ホームズとワトスンの二人は、地元の有力者であるアクトン老人(Mr Acton)の家に強盗が押し入ったという話を聞く。その強盗はアクトン老人の書斎から本一冊、燭台二つ、文鎮一つ、晴雨計一つ、そして、麻糸の玉を一つしか盗んで行かなかったらしい。それ程には価値がないものばかりを盗んだ強盗の話を聞いたホームズはこの事件に興味を示すが、ワトスンに「ここには療養に来ているのだから。」とたしなめられてしまう。
翌朝の朝食の席で、ホームズとワトスンは、「今度は、強盗が大地主のカニンガム老人(Mr Cunningham)の家に押し入り、御者のウィリアム・カーワン(William Kirwan)が心臓を撃ち抜かれて殺された。」と聞かされる。カニンガム老人と息子のアレック・カニンガム(Alec Cunningham)の親子は、御者のウィリアムを殺して逃げ去る犯人を見たと証言していた。当時、強盗が押し入ったアクトン家とカニンガム家は、土地の所有権をめぐって係争中であり、その奇妙な符号に、ホームズは再度興味を掻き立てるのであった。
地元警察のフォレスター警部(Inspector Forrester)は、ロンドンからライゲートへ療養に来ている名探偵に敬意を表して、殺されたウィリアムが強く握りしめていた手紙の切れ端と思われる紙片をホームズに見せてくれた。フォレスター警部から渡された紙の筆跡を調べたホームズは、「これは、僕が思ったよりも、遥かに底が深い事件ですね。」と告げるが、彼の目には輝きが戻っていた。

記念切手には、ワトスンの目の前で、ホームズがフォレスター警部から渡された紙の切れ端を調べるシーンが描かれている。

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