2017年10月21日土曜日

ロンドン ローワーキャンバーウェル(Lower Camberwell)

キャンバーウェルニューロード(Camberwell New Road)沿いの住宅街(その1)

サー・アーサー・コナン・ドイル作「四つの署名(The Sign of the Four)」(1890年)では、若い女性メアリー・モースタン(Mary Morstan)がベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れて、風変わりな事件の調査依頼をする。

キャンバーウェルニューロード(Camberwell New Road)沿いの住宅街(その2)

元英国陸軍インド派遣軍の大尉だった彼女の父親アーサー・モースタン(Captain Arthur Morstan)は、インドから英国に戻った10年前に、謎の失踪を遂げていた。彼はロンドンのランガムホテル(Langham Hotel→2014年7月6日付ブログで紹介済)に滞在していたが、娘のモースタン嬢が彼を訪ねると、身の回り品や荷物等を残したまま、姿を消しており、その後の消息が判らなかった。そして、6年前から年に1回、「未知の友」を名乗る正体不明の人物から彼女宛に大粒の真珠が送られてくるようになり、今回、その人物から面会を求める手紙が届いたのである。
彼女の依頼に応じて、ホームズとジョン・H・ワトスンの二人は彼女に同行して、待ち合わせ場所のライシアム劇場(Lyceum Theatreー2014年7月12日付ブログで紹介済)へ向かった。そして、ホームズ達一行は、そこで正体不明の人物によって手配された馬車に乗り込むのであった。

キャンバーウェルニューロード(Camberwell New Road)沿いの住宅街(その3)

ホームズ、ワトスンとモースタン嬢の三人は、ロンドン郊外のある邸宅へと連れて行かれ、そこでサディアス・ショルト(Thaddeus Sholto)という小男に出迎えられる。彼が手紙の差出人で、ホームズ達一行は、彼からモースタン嬢の父親であるアーサー・モースタン大尉と彼の父親であるジョン・ショルト少佐(Major John Sholto)との間に起きたインド駐留時代の因縁話を聞かされるのであった。
サディアス・ショルトによると、父親のジョン・ショルト少佐が亡くなる際、上記の事情を聞いて責任を感じた兄のバーソロミュー・ショルト(Bartholomew Sholto)と彼が、モースタン嬢宛に毎年真珠を送っていたのである。アッパーノーウッド(Upper Norwood)にある屋敷の屋根裏部屋にジョン・ショルト少佐が隠していた財宝を発見した彼ら兄弟は、モースタン嬢に財宝を分配しようと決めた。

キャンバーウェルニューロード(Camberwell New Road)沿いの住宅街(その4)

しかし、ホームズ一行がサディアス・ショルトに連れられて、バーソロミュー・ショルトの屋敷を訪れると、バーソロミュー・ショルトはインド洋のアンダマン諸島の土着民が使う毒矢によって殺されているのを発見した。そして、問題の財宝は何者かによって奪い去られていたのである。

バサルロード(Vassall Road)沿いに建つ教会
Saint John the Divine

彼(ホームズ)は、二人で話をするするために、私を階段の上まで連れて行った。
「思いがけない事件のせいで」と、彼は言った。「ここまでやって来た本来の目的を、僕達は見失っていた。」
「私も君と同じようにそう思っていたところだ。」と、私は答えた。「モースタン嬢を事件が起きたこの家にこのまま居させるのは、好ましくない。」
「その通りだ。君には、彼女を家まで送って行ってほしい。彼女はローワーキャンバーウェルのセシル・フォレスター夫人宅に住んでいるから、ここからそれ程遠くはない。もし君がもう一度馬車で出かけてくれるのであれば、僕はここで君を待っているよ。それとも、君はもう疲れ果ててしまったかい?」
「とんでもない。この異様な事件の内容がもっとハッキリするまでは、私の気も休まりそうもないよ。私は今までに人生の表も裏も見てきたが、今夜奇妙な出来事が次々と起きて、正直なところ、神経がかなり疲弊している。けれど、既にかなり深入りしているから、この事件がどうなるのか、君と一緒に、最後まで見届けたい。」

「緋色の研究(A Study in Scarlet)」でも紹介したバサルロード(その1)

He led me out to the head of the stair.
‘This unexpected occurrence,’ he said, ‘has caused us rather to lose sight of the original purpose of our journey.’
‘I have just been thinking so,’ I answered; ‘it is not right that Miss Morstan should remain in this stricken house.’
‘No. You must escort her home. She lives with Mrs Cecil Forrester, in Lower Camberwell, so it is not very far. I will wait for you here if you will drive out again. Or perhaps you are too tired?’
‘By no means. I don’t think I could rest until I know more of this fantastic business. I have seen something of the rough side of life, but I give you my word that this quick succession of strange surprises tonight has shaken my nerve completely. I should like, however, to see the matter through with you, now that I have got so far.’

「緋色の研究(A Study in Scarlet)」でも紹介したバサルロード(その2)

モースタン嬢が住んでいるセシル・フォレスター夫人の家があるローワーキャンバーウェル(Lower Camberwell)は、テムズ河(River Thames)の南岸にあるロンドン・サザーク区(London Borough of Southwark)のキャンバーウェル地区(Camberwell)にあると思われる。「ローワー」の意味からすると、テムズ河に近いキャンバーウェル地区の北方面ではないかと推察される。

「緋色の研究(A Study in Scarlet)」でも紹介したバサルロード(その3)

キャンバーウェル地区は、1889年まではサリー州(Surrey)の一部であり、ということは、「四つの署名」事件が発生した時点(1888年)では、ローワーキャンバーウェルもサリー州に属していたことになる。
そして、1900年にはロンドン・キャンバーウェル区(Metropolitan Borough of Camberwell)となり、1965年に大部分がロンドン・サザーク区に吸収された。ただし、ロンドン・キャンバーウェル区の一部はロンドン・ランベス区(London Borough of Lambeth)に編入されている。

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