2017年9月24日日曜日

ロンドン ビショップスゲート地区(Bishopsgate)−その1

セントメアリーアクス通り(St. Mary Axe)沿いに建つ通称「ガーキンビル(The Gherkin)」–
ビルの形状がキュウリに似ているので、そう呼ばれているが、
ビルの正式名は「30 St. Mary Axe」

サー・アーサー・コナン・ドイル作「四つの署名(The Sign of the Four)」(1890年)では、若い女性メアリー・モースタン(Mary Morstan)がベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れて、風変わりな事件の調査依頼をする。

ガーキンビル(その2)

元英国陸軍インド派遣軍の大尉だった彼女の父親アーサー・モースタン(Captain Arthur Morstan)は、インドから英国に戻った10年前に、謎の失踪を遂げていた。彼はロンドンのランガムホテル(Langham Hotel→2014年7月6日付ブログで紹介済)に滞在していたが、娘のモースタン嬢が彼を訪ねると、身の回り品や荷物等を残したまま、姿を消しており、その後の消息が判らなかった。そして、6年前から年に1回、「未知の友」を名乗る正体不明の人物から彼女宛に大粒の真珠が送られてくるようになり、今回、その人物から面会を求める手紙が届いたのである。
彼女の依頼に応じて、ホームズとジョン・H・ワトスンの二人は彼女に同行して、待ち合わせ場所のライシアム劇場(Lyceum Theatreー2014年7月12日付ブログで紹介済)へ向かった。そして、ホームズ達一行は、そこで正体不明の人物によって手配された馬車に乗り込むのであった。

ビショップスゲート通り(Bishopsgate)沿いに建つ「ヘロンタワー(Heron Tower)」

ホームズ、ワトスンとモースタン嬢の三人は、ロンドン郊外のある邸宅へと連れて行かれ、そこでサディアス・ショルト(Thaddeus Sholto)という小男に出迎えられる。彼が手紙の差出人で、ホームズ達一行は、彼からモースタン嬢の父親であるアーサー・モースタン大尉と彼の父親であるジョン・ショルト少佐(Major John Sholto)との間に起きたインド駐留時代の因縁話を聞かされるのであった。
サディアス・ショルトによると、父親のジョン・ショルト少佐が亡くなる際、上記の事情を聞いて責任を感じた兄のバーソロミュー・ショルト(Bartholomew Sholto)と彼が、モースタン嬢宛に毎年真珠を送っていたのである。アッパーノーウッド(Upper Norwood)にある屋敷の屋根裏部屋にジョン・ショルト少佐が隠していた財宝を発見した彼ら兄弟は、モースタン嬢に財宝を分配しようと決めた。

ヘロンタワー(その2)

しかし、ホームズ一行がサディアス・ショルトに連れられて、バーソロミュー・ショルトの屋敷を訪れると、バーソロミュー・ショルトはインド洋のアンダマン諸島の土着民が使う毒矢によって殺されているのを発見した。そして、問題の財宝は何者かによって奪い去られていたのである。

ヘロンタワー(その3)

「ここが事件現場か!」と、彼(スコットランドヤードのアセルニー・ジョーンズ警部)は、押し殺してしゃがれた声で言った。「これは、酷い現場だな!しかし、彼らは一体何者だ?本当に、この家はウサギ小屋みたいにゴチャゴチャしているな!」
「アセルニー・ジョーンズ、僕のことは覚えている筈だが…」と、ホームズは静かに言った。
「ええ、勿論ですよ。」と、彼は息をゼイゼイさせて言った。「理論家のシャーロット・ホームズさんじゃありませんか。覚えていますとも。ビショップゲートの宝石事件で、原因と推論と影響について、あなたが我々に解説してくれたことは、絶対に忘れやしません。あなたが我々を正しい方向へ導いてくれたのは事実ですが、あれは的確な指示と言うよりも、幸運だったと言うことを、今であれば、ホームズさん、あなたもお認めになるでしょう?」
「あれは、ちょっとした非常に単純な推理だ。」
「まあまあ!恥ずかしがらずに、素直に認めて下さいよ。しかし、これは一体何だ?嫌な事件だ!本当に嫌な事件だ!厳格な事実がここにはある。ー理論の出る幕はないですな。私が偶々別の事件でノーウッドに来ていたのは、都合が良かった。この事件の知らせが届いた時、私はノーウッド警察署に居合わせたんですよ。ところで、ホームズさん、この男の死因は何だと思いますか?」

ヘロンタワー(その4)

‘Here’s a business!’ He cried, in a muffled, husky voice. ‘Here’s a pretty business! But who are all these? Why, the house seems o be as full as rabbit-warren!’
‘I think you must recollect me, Mr Athelney Jones,’ said Holmes quietly.
‘Why, of course I do!’ he wheezed. ‘It’s Mr Sherlock Holmes, the theorist. Remember you! I’ll never forget how you lectured us all on causes and inferences and effects in Bishopgate jewel case. It’s true you set us on the right track; but you’ll own now that it was more by good luck than good guidance.’
‘It was a piece of very simple reasoning.’
‘Oh, come, now, come! Never be ashamed to own up. But what is all this? Bad business! Bad business! Stern facts here - no room for theories. How lucky that I happened to be out at Norwood over another case! I was at the station when message arrived. What d’you think the man died of?’

地下鉄モーゲート駅(Moorgate Tube Station)と
地下鉄リヴァプールストリート駅(Liverpool Street Station)の間にある
フィンズベリーサーカス(Finsbury Circus)を囲むオフィスビル群−
中央のビルには、数年前までメガバンクの一つが入居していたが、
同行が退去した後に、三菱地所が再開発。
また、右側のビルにも、数年前まで別のメガバンクが入居していた。

バーソロミュー・ショルトの殺害現場において、スコットランドヤードのアセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones)がホームズに出会った際に、話題にした宝石盗難事件があったビショップゲート(Bishopgate)と言うのは、正確には、ビショップスゲート(Bishopsgate)で、ロンドンの経済活動の中心地であるシティー・オブ・ロンドン(City of London)内の北東にある地区のことだと思われる。
ビショップスゲート地区は、シティー・オブ・ロンドンの端に位置しており、ロンドン・イズリントン区(London Borough of Islington)やロンドン・ハックニー区(London Borough of Hackney)等と境界線を接している。

0 件のコメント:

コメントを投稿