2017年1月7日土曜日

ロンドン ファリンドンロード / ファリンドンストリート(Farringdon Road / Farringdon Street)― ファリントンストリート (Farrington Street) の候補地

ファリンドンストリートを南側から北側へ向かって眺めたところ

サー・アーサー・コナン・ドイル作「赤毛組合(The Red-Headed League)」(「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」1891年8月号に掲載)の冒頭、ジョン・H・ワトスンがベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れると、彼は燃えるような赤毛の初老の男性ジェイベス・ウィルスン(Jabez Wilson)から相談を受けている最中であった。ジェイベス・ウィルスンは、ロンドンの経済活動の中心地であるシティー(City)近くにあるザクセンーコーブルクスクエア(Saxe-Coburg Squareー2016年1月1日付ブログで紹介済)において質屋(pawnbroker)を営んでおり、最近非常に奇妙な体験をしたと言うので、ホームズとワトスンの二人は彼から詳しい事情を聞くのであった。

ファリンドン駅の改札口―
現在、ロンドンの東側と西側の鉄道ネットワークを
地下で接続するためのクロスレール工事が近くで行われている
ファリンドン駅の向かい側に建つ
地下鉄ファリンドン駅の建物

ジェイベス・ウィルスンの話に興味を覚えたホームズは、彼が質屋で雇っているヴィンセント・スポールディング(Vincent Spaulding)のことについて質問した。彼の説明を聞いたホームズには、何か思い当たる節があるようだった。ジェイベス・ウィルスンが辞去した後、ホームズはワトスンを誘って、地下鉄でシティー近くまで行き、ジェイベス・ウィルスンが営む質屋へと向かった。ホームズは質屋のドアをノックし、応対に出て来たヴィンセント・スポールディングに道を尋ねると、その場を立ち去った。質屋の前の敷石をステッキで数回叩き、そして、ヴィンセント・スポールディングの膝の汚れを確認したホームズがワトスンに告げた内容は、「あの男(ヴィンセント・スポールディング)はロンドンで4番目に狡賢く、3番目に大胆な奴だ。」だった。ホームズとワトスンの二人が質屋の裏の大通りへ出ると、そこには、タバコ屋、新聞販売所、レストランや馬車製造会社の倉庫等の他に、銀行(City and Surburban Bank)の支店(City branch)が建ち並んでいた。


年末早朝のファリンドンロード―
画面奥が北方面

セントジェイムズホール(St. James's Hallー2014年10月4日付ブログで紹介済)でサラサーテ(パブロ・マルティン・メリトン・デ・サラサーテ・イ・ナバスクエス Pablo Martin Meliton de Sarasate y Navascuez:1844年ー1908年 スペイン出身の作曲家兼ヴァイオリン奏者)の演奏会を楽しんだ後、ホームズはワトスンに「今夜仕事を手伝ってほしい。」と頼む。一旦自宅に戻ったワトスンが夜再度ベーカーストリート221Bを訪れると、そこには、ホームズの他に、スコットランドヤードのピーター・ジョーンズ警部(Inspector Peter Jones)とザクセンーコーブルクスクエアに支店がある銀行の頭取であるメリーウェザー氏(Mr Merryweather)が居た。ホームズは、ワトスンを含めた4人でこれからジョン・クレイ(John Clay)という犯罪者を捕まえるのだと言う。また、ジョーンズ警部によると、ジョン・クレイは彼が以前から追っている重罪犯とのこと。ホームズも、ジョン・クレイとは1~2度関わりを持ったことがあるらしい。ホームズ達4人は、2台の馬車に分かれて、ベーカーストリートからザクセンーコーブルクスクエアの質屋の裏側にある銀行へと向かった。

ファリンドンロードがチャーターハウスストリートと交差するところ―
画面を横切る通りがチャーターハウスストリート
ここから通りはロンドン・カムデン区から
シティー内に入る

シャーロック・ホームズは、ベーカーストリートからザクセンーコーブルクスクエアまでの長い道のりの間、あまり話もせず、今日の午後セントジェイムズホールで聞いた曲をハミングしながら、馬車の中で背凭れに凭れていた。私達は、ガス灯に照らされた果てしない迷路のような通りを抜け、ファリントンストリートに出るまで、馬車でガタガタと進んだ。
「もうすぐ近くだ。」と、ホームズが言った。

チャーターハウスストリートを奥へ進むと、
ジェイベス・ウィルスンが営む質屋がある
ザクセンーコーブルクスクエアの最有力候補地である
チャーターハウススクエアへと至る―
画面奥の右手に建つ建物が肉市場である
スミスフィールドマーケット

Sherlock Holmes was not very communicative during the long drive and lay back in the cab humming the tunes which he had heard in the afternoon. We rattled through an endless labyrinth of gaslit streets until we emerged into Farrington Street.
'We are close there now,' my friend remarked.

ホルボーン高架橋―
これを潜ると、ファリンドンロードは、
ファリンドンストリートへと名前を変える

ホームズ、ワトスン、ジョーンズ警部とメリーウェザー氏の4人が馬車で向かったザクセンーコーブルクスクエア近くのファリントンストリート(Farrington Street)は実在する通りではないが、肉市場であるスミスフィールズマーケット(Smithfield Market)の西側に延びるファリンドンロード(Farringdon Road)/ファリンドンストリート(Farringdon Street)がこれに該ると考えられる。


ファリンドンストリート沿いでは、
不動産(オフィス関係)の再開発が非常に盛んである

ファリンドン駅(Farringdon Station)の西側をファリンドンロード(Farringdon Road)が北から南へ向かって延びている。ファリンドンロードの大部分はロンドン・カムデン区(London Borough of Camden)に属しているが、チャーターハウスストリート(Charterhouse Street)と交差する辺りからシティー内に入る。ファリンドンロードはホルボーン高架橋(Holborn Viaduct)を潜ると、ファリンドンストリート(Farringdon Street)へと名前を変える。そして、フリートストリート(Fleet Streetー2014年9月21日付ブログで紹介済)と交差したところで、ニューブリッジストリート(New Bridge Street)と更に名前を変え、テムズ河(River Thames)を渡る。

ファリンドンストリートを北側から南側へ向かって眺めたところ―
画面奥中央を横切る通りがフリートストリートで、
この先でファリンドンストリートは、
ニューブリッジストリートへと名前を変えて、テムズ河を渡る

ファリンドンロードと交差するチャーターハウスストリートを北東方面へ進むと、ジェイベス・ウィルソンが営む質屋があったザクセンーコーブルクスクエアの最有力候補地であるチャーターハウススクエア(Charterhouse Square)へと至る地理関係にあり、ファリンドンロード/ファリンドンストリートをファリントンストリートの候補地と見做しても、全く問題ないと言える。

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