2016年12月24日土曜日

ロンドン ケンジントンゴア通り(Kensington Gore)

ケンジントンゴア通りから見たロイヤルアルバートホール

アガサ・クリスティー作「負け犬(The Under Dog)」は、短編集「負け犬他(The Under Dog and Other Stories)」(1950年)に収録されている短編の一つである。


エルキュール・ポワロの元を、レディー・アストウェル(Lady Astwell)の話相手(コンパニオン)であるリリー・マーグレイヴ(Lily Margrave)が事件の依頼に訪れる。彼女はレディー・アストウェルの指示でここに来たのだと言う。

ケンジントンゴア通りの東側に建つフラット

実は、10日前に、サー・ルーベン・アストウェル(Sir Ruben Astwell)が、モン・ルポ荘(Mon Repos)内の「塔の部屋(Tower Room)」と呼ばれる特別な書斎において、何者かに後頭部を鈍器のようなもので撲られ、殺害されるという事件が発生していた。サー・ルーベン・アストウェルを殺害した犯人として、彼の甥であるチャールズ・レヴァーソン(Charles Leverson)が逮捕されるが、レディー・アストウェルは、「証拠は全くないが、直感によると、犯人は甥ではなく、サー・ルーベン・アストウェルの温厚な秘書オーウェン・トレフューシス(Owen Trefusis)だ。」と考えているのだそうだ。そこで、レディー・アストウェルは、話相手のリリー・マーグレイヴをポワロの元へ使わせて、事件の調査を頼もうとしていた。事件発生当時、モン・ルポ荘には、西アフリカから戻って来たばかりで、サー・ルーベン・アストウェルと同じ位の癇癪持ちの弟ヴィクター・アストウェル(Victor Astwell)が滞在しており、サー・ルーベン・アストウェルとの間で一悶着あったようである。

ケンジントンゴア通りの中間辺りから
ロイヤルアルバートホールを望む

一方、話相手のリリー・マーグレイヴはレディー・アストウェルの考えには同調しておらず、その上、彼女としては、できればポワロにこの事件の調査には関わってほしくないと思っているように、ポワロには感じられた。リリー・マーグレイヴは事件に関連する何か重要なことを隠しているようだ。リリー・マーグレイヴの不自然な態度に興味を抱いたポワロは、レディー・アストウェルの依頼を受け、モン・ルポ荘を訪れて、サー・ルーベン・アストウェルを撲殺した犯人を見つけ出すべく、捜査に乗り出すのであった。

ケンジントンゴア通りの中間辺りから南側を望む

英国の TV 会社 ITV1 で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「負け犬」(1993年)の回では、何者かに撲殺されたサー・ルーベン・アストウェルは、アストウェル化学の社長という設定になっている。また、彼の弟であるヴィクター・アストウェルについては、アガサ・クリスティーの原作では、兄と同じ癇癪持ちであるが、TV 版では、兄とは対照的で冷静な副社長という役割に変わっている。更に、サー・ルーベン・アストウェルの秘書であるオーウェン・トレフューシスは、TV 版では、アストウェル化学の主席研究員(Chief Chemist)という役割に変更されている。それに加えて、アガサ・クリスティーの原作では、リリー・マーグレイヴの兄で、容疑者の一人となるハンフリー・ネイラー大尉(Captain Humphrey Naylor)がサー・ルーベン・アストウェルを恨む理由として、アフリカの金鉱が関係していたが、TV 版では、アストウェル化学に自分の実験データを無断で使用されたことが関連している。

奥に見える建物は、インペリアルカレッジ・ロンドン

物語の後半、殺害されたサー・ルーベン・アストウェルが書斎の金庫内に保管していたハンフリー・ネイラーの実験データを持ち出したリリー・マーグレイヴは、兄へ届けるべく、バス、列車、そして、タクシーを乗り継いで、ロンドン市内の兄の元へと向かう。彼女の跡をポワロとアーサー・ヘイスティングス大尉が車で追う場面のうち、ロンドン市内でのシーンの一つが、ケンジントンゴア通り(Kensington Gore)で撮影されている。ポワロとアーサー・ヘイスティングス大尉が乗った車はケンジントンゴア通りを北側から南側へと走り抜けて、インペリアルカレッジ・ロンドン(Imperial College London)の建物へと向かっている。

ケンジントンゴア通りが
プリンスコンソートロードに突き当たった地点

ケンジントンゴア通りは、ロンドンの中心部シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のブロンプトン地区(Brompton)内にあり、ロイヤルアルバートホール(Royal Albert Hallー2016年2月20日付ブログで紹介済)のすぐ横を通って、ハイドパーク(Hyde Parkー2015年3月4日付ブログで紹介済)の南側にあるケンジントンロード(Kensington Road)とインペリアルカレッジ・ロンドンの北側にあるプリンスコンソートロード(Prince Consort Road)を南北に結んでいる。

「ゴア(Gore)」とは、狭い三角形の土地のことを意味している。英語の辞書によると、「槍形の地所」のことを指す。

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