2016年10月9日日曜日

アガサ・クリスティー没後40周年記念切手3「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)」

エルキュール・ポワロ(右側)とアーサー・ヘイスティングス大尉(左側)が
エミリー・イングルソープの命を奪った毒薬の壜が置かれたテーブルを挟んで
座っているシーンが描かれている―
画面中央が髑髏の形になっている

(3)「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)」(1920年)

本作品は、アガサ・クリスティーの商業デビュー作であり、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編第1作目、かつ、ポワロの初登場作品に該る。

なお、本作品は、第一次世界大戦(1914年ー1918年)中の1916年に執筆され、米国の Jane Lane 社から、1920年(10月)に発表されている。英国本国の場合、Jane Lane 社の英国会社である The Bodley Head 社から、1921年(1月)に出版された。


第一次世界大戦(1914年ー1918年)中に負傷したアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings - 30歳)は、英国に帰還する。旧友であるジョン・キャヴェンディッシュ(John Cavendish - 45歳)の招きで、エセックス州(Essex)にあるスタイルズ荘(Styles Court)を訪れたヘイスティングス大尉であったが、到着早々、事件に巻き込まれるのであった。


ジョン・キャヴェンディッシュの義母で、スタイルズ荘の持ち主である老婦人エミリー・イングルソープ(Emily Inglethrop - 70歳を超えている)は、20歳も年下のアルフレッド・イングルソープ(Alfred Inglethrop)と再婚して、屋敷で暮らしていた。屋敷内には、他には、


(1)ジョン・キャヴェンディッシュ → エミリーの義理の息子(兄)

(2)メアリー・キャヴェンディッシュ(Mary Cavendish)→ ジョン・キャヴェンディッシュの妻

(3)ローレンス・キャヴェンディッシュ(Lawrence Cavendish - 40歳)→ エミリー・イングルソープの義理の息子(弟)

(4)シンシア・マードック(Cynthia Murdoch)→ エミリー・イングルソープの友人の孤児で、現在は、彼女の養子

(5)エヴリン・ハワード(Evelyn Howard - 40歳位)→ エミリー・イングルソープの話相手(住み込みの婦人)


が住んでいた。


7月18日(水)の朝、エミリー・イングルソープがストリキニーネで毒殺されているのが発見された。


エミリー・イングルソープの前夫の遺言書によると、スタイルズ荘については、エミリー・イングルソープの死後、ジョン・キャヴェンディッシュが相続することになっていた。

一方、エミリー・イングルソープが保有する現金資産に関しては、彼女が毎年更新する遺言書の内容に従って分配されることになっており、彼女が作成した最新の遺言書によると、現在の夫であるアルフレッド・イングルソープが相続する内容だった。

前日の7月17日(火)、エミリー・イングルソープが、夫のアルフレッド・イングルソープか、義理の息子のジョン・キャヴェンディッシュとの間で、言い争いをしていたようだった。その後、彼女は遺言書を書き替えたが、その新しい遺言書は、どこにも見当らなかった。


エミリー・イングルソープの死により、最も大きな利益を得ることになる夫のアルフレッド・イングルソープが、まず容疑者として疑われる。

ただ、彼女が毒殺された日の夜、彼はスタイルズ荘を不在にしていたが、何故か、居所を明らかにしようとしない上に、村の薬局において、ストリキニーネを購入したしたのは、自分ではないと強く否定する。

エミリー・イングルソープの話相手であるエヴリン・ハワードは、アルフレッド・イングルソープの従妹であるにもかかわらず、以前から彼のことを憎んでいるようで、エミリー・イングルソープを毒殺した人物は、彼で間違いないと言う出張を崩さなかった。


スタイルズ荘の近くのスタイルズセントメアリー村(Styles St. Mary)にベルギーから戦火を避けて亡命していた旧友ポワロと再会したヘイスティングス大尉は、ポワロに対して、この難事件の捜査を依頼する。


スコットランドヤードのジェイムズ・ジャップ警部(Inspector James Japp)が、エミリー・イングルソープの毒殺犯人として、アルフレッド・イングルソープを逮捕しようとするが、ポワロは、ストリキニーネ購入時における薬局の記録上の署名が彼の筆跡ではないことを証明して、アルフレッド・イングルソープの逮捕を思いとどまらせた。


そのため、スコットランドヤードのジェイムズ・ジャップ警部が、アルフレッド・イングルソープの次に疑ったのは、エミリー・イングルソープの死により利益を得る上に、事件当夜のアリバイがないジョン・キャヴェンディッシュであった。

ストリキニーネ購入時における薬局の記録上の署名が彼の筆跡に酷似していること、また、アルフレッド・イングルソープとよく似た付け髭と鼻眼鏡が発見されたことが決め手となり、ジョン・キャヴェンディッシュは逮捕されてしまう。


果たして、スコットランドヤードのジェイムズ・ジャップ警部による捜査通り、ジョン・キャヴェンディッシュが、義理の母であるエミリー・イングルソープを、ストリキニーネで毒殺したのであろうか?

ポワロの灰色の脳細胞は、どのような結論を導き出すのか?


アガサ・クリスティーの没後40周年を記念して発行された切手には、旧友ジョン・キャヴェンディッシュの義母エミリー・イングルソープの命を奪った毒薬の壜を挟んで、ヘイスティングス大尉がポワロと事件の真相を解明しようとしているシーンが描かれている。
切手中央は、髑髏(どくろ)の形になっていて、ヘイスティングス大尉(左側)とポワロ(右側)の頭部が髑髏の両目に、テーブルの上に置かれたランプが髑髏の鼻に、そして、テーブルに敷かれたテーブルクロスが髑髏の歯を表している。

1914年に結婚した最初の夫アーチボルド・クリスティー大尉(Captain Archibald Christie:1889年ー1962年)が、第一次世界大戦(1914年ー1918年)中、フランスへ出征している間、アガサ・クリスティーは薬剤師の助手として奉仕活動に従事していた。その際に、彼女は毒薬の知識を得ており、本作品において、その経験が存分に生かされている。

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