2016年9月11日日曜日

ロンドン 聖ソフィア大聖堂/モスクワロード(St. Sophia Cathedral / Moscow Road)

聖ソフィア大聖堂の入口ホール全景

アガサ・クリスティー作「あなたの庭はどんな庭?(How Does Your Garden Grow ?)」(1935年ー短編集「レガッタデーの事件(The Regatta Mystery)」に収録)は、エルキュール・ポワロの事務所にアメリア・バロウビー(Amelia Barrowby)という独身の老婦人から依頼の手紙が届くところから、物語の幕が上がる。
彼女から来た手紙に書かれている依頼の内容は、「自分の身を案じているので、自宅に来てほしい。」という非常に曖昧なものであった。この奇妙な依頼の手紙に興味を持ったポワロは、秘書のミス・レモン(Miss Lemon)に指示して、「いつでも相談に応じる。(I will do myself the honour to call upon you at any time you suggest.)」と返信をするが、その後、彼女からは何も音信もなかった。

聖ソフィア大聖堂の外観全景


暫くして、ミス・レモンが手紙の差出人であるアメリア・バロウビーが死亡したことを新聞記事で偶然見つけ、ポワロに知らせる。アメリア・バロウビーが亡くなった際、姪のデラフォンテーン夫妻(Mr. and Mrs. Delafontaine)と一緒に食事をしていたのだが、(1)アーティチョークのスープ、(2)魚のパイと(3)アップルタルト以外、何も口にしていなかった。ところが、彼女の遺体からは、ストリキニーネが発見されたのである。ストリキニーネはとても苦い味がするため、アーティチョークのスープ、魚のパイやアップルタルトに混入されていたとは思えなかった。また、彼女は珈琲も飲まず、水だけを飲んでいた。ストリキニーネが混入したと考えられるのは、彼女が飲んでいた持病用のカプセル薬だけだった。そのカプセル薬に触れたのは、ロシア人の話相手(コンパニオン)のカトリーナ・リーガー(Katrina Rieger)のみだったため、彼女へ疑いの目が向けられた。
アメリア・バロウビーの死に疑問を感じたポワロは現地へ赴き、調査を始めるのであった。

聖ソフィア大聖堂の外観(その1)

聖ソフィア大聖堂の外観(その2)

英国のTV会社 ITV1 で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「あなたの庭はどんな庭?」(1991年)の回では、アメリア・バロウビーをストリキニーネで毒殺したと疑われ、姿を消してしまったコンパニオンのロシア人カトリーナ・レイガー(Katrina Reiger)の居所を突き止めたポワロは彼女に対して、警察への出頭を勧める。この場面は、聖ソフィア大聖堂(St. Sophia Cathedral)の内部で撮影されている。

聖ソフィア大聖堂の右側入口―
英語で表示されている

聖ソフィア大聖堂の左側入口―
ギリシア語で表示されている

聖ソフィア大聖堂は、ロンドンの中心部シティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のベイズウォーター地区(Bayswater)内に所在しており、地下鉄ベイズウォーター駅(Bayswater Tube Station)の前を南北に延びるクイーンズウェイ通り(Queensway)の中間辺りから西に延びるモスクワロード(Moscow Road)沿いに建っている。

聖ソフィア大聖堂の正面外観全景

聖ソフィア大聖堂の右側入口ドア

ITV1で放映されたポワロシリーズでは、カトリーナが身を寄せていたのは「ロシア正教会」という設定であるが、実際には、聖ソフィア大聖堂は「ギリシア正教会」の建物である。

聖ソフィア大聖堂の入口ホール(その1)

聖ソフィア大聖堂の入口ホール(その2

聖ソフィア大聖堂の入口ホール(その3

聖ソフィア大聖堂は、ギリシアからロンドンのパディントン地区(Paddington)、ベイズウォーター地区(Bayswater)やノッティングヒル地区(Notting Hill)に移住したギリシア人コミュニティーのために、その建設が計画され、英国の建築家であるジョン・オルドリッド・スコット(John Oldrid Scott:1841年ー1913年)が設計を担当した。彼は英国の協会建設に数多く携わり、聖ソフィア大聖堂にはネオビザンティン建築様式を用いた。
ネオビザンティン建築様式は、5世紀から11世紀にかけて東ローマ帝国内で用いられたビザンティン様式の流れを組むもので、19世紀中頃から20世紀初頭に発展し、特にロシアや東ヨーロッパにおいて当様式を用いた大聖堂や教会が多く建設されている。ネオビザンティン建築様式は、主に円形のアーチ(梁)、ヴォールト(かまぼこ型を特徴とする天井)やドーム(屋根)等にその特徴が見い出される。
なお、ジョン・オルドリッド・スコットの父親であるサー・ジョージ・ギルバート・スコット(Sir George Gilbert Scott:1811年ー1878年)も英国の有名な建築家で、外務省(Foreign Commonweath Officeー2016年1月2日付ブログで紹介済)やアルバート公記念碑(Albert Memorialー2016年3月13日付ブログで紹介済)等の設計で知られている。
聖ソフィア大聖堂は、ジョン・オルドリッド・スコットによる設計に基づき、1878年から1879年にかけて建設された。

聖ソフィア大聖堂の入口ホール(その4)

聖ソフィア大聖堂の入口ホール(その5)

聖ソフィア大聖堂の入口ホール(その6)

聖ソフィア大聖堂の外観は控えめな印象を受けるが、大聖堂の内部に一歩入ると、壁全面が多色彩の大理石で覆われていて、非常に絢爛豪華である。ITV1で放映されたポワロシリーズにおいても画面上アップになったが、ドーム天井から吊り下げられている十字架が更に見る者を圧倒する。聖ソフィア大聖堂を訪れた日は、内部で結婚式が行われていたため、残念ながら、その十字架の写真を撮ることはできなかった。

入口ホールから撮った天井から吊り下げられている十字架

2006年に、大聖堂の地下に博物館がオープンしている。

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