2014年4月13日日曜日

シャーロック・ホームズの更なる冒険 / タイタニック号の悲劇 (The Titanic Tragedy)


シャーロック・ホームズの更なる冒険 / タイタニック号の悲劇
(The further adventures of Sherlock Holmes / The Titanic Tragedy)
著者 William Seil 1996年
   出版 Titan Books 2012年 

彼、ジョン・ワトスンは、ロンドンのピカデリーサーカスの部屋で孤独な生活を送っていた。医師から実質的に引退して、歴史小説の執筆に残りの人生を捧げていた。一方、シャーロック・ホームズは、1903年に引退し、英国南部のイーストボーン近くの丘陵地帯サウスダウンズで蜜蜂を飼いながら(養蜂)、悠々自適の生活を送っていた。そんなある春の夜、ワトスンはホームズからの手紙を受け取る。

ホームズとワトスンは、英国政府の密命を帯びて、新型潜水艦の設計図を持って太平洋を渡る政府の密使に付き添うところから、物語が始まる。二人が乗船したのは、1912年4月10日に英国南部のサウザンプトン港から処女航海に旅立った’不沈客船’タイタニック号。ャーロック・ホームズは、1903年に引退し、英国南部のイーストボーン近くの丘陵地帯サウスダウンズで蜜蜂を飼いながら(養蜂)、悠々自適の生活を送っていた。そんなある春の夜、ワトスンはホームズからの手紙を受け取る。

ホームズとワトスンは、英国政府の密命を帯びて、新型潜水艦の設計図を持って太平洋を渡る政府の密使に付き添うところから、物語が始まる。二人が乗船したのは、1912年4月10日に英国南部のサウザンプトン港から処女航海に旅立った’不沈客船’タイタニック号。

新型潜水艦の設計図の盗難およびそれをめぐる殺人事件に加えて、多くの実在の人物(エドワード・スミス船長、ワイルド航海士長をはじめとする航海士達、ホワイトスターライン社の社長ブルース・イズメイ、タイタニック号設計担当者である造船家トーマス・アンドリューズや’思考機械’ ヴァン・ドゥーゼン教授を生み出した推理作家ジャック・フットレル等)や架空の人物(かのモリアーティー教授の弟ジェイムズ・モリアーティ大佐等)が登場。はたして、新型潜水艦の設計図を英国政府の密使から盗んだのは、誰なのか?ホームズとワトスンがジャック・フットレルと初めて出会った際に、ワトスンを通して、ホームズがジャック・フットレルの「13号独房の問題」を高く評価していることが語られ、非常に興味深い。

運命の1912年4月14日(この日、タイタニック号は氷山との接触により沈没)に向けて、タイタニック号の隅から隅まで動き回って、ホームズとワトスンの捜索は続く。タイタニック号と言うと「豪華客船」の代名詞通り、一等船客専用の大階段、ダイニングルームやプロムナードデッキ等が注目されるが、物語では、ホームズとワトスンはジャック・フットレルが居る3等船客用エリア等もきちんと訪ねている。読者にとってあまりにも有名な悲劇が予期される中、それをタイムリミットとして、非常にうまく話が盛り上げられている。そのため、約260ページの間、中だるみもなく、楽しく読むことができた。これから他に紹介するホームズのパスティーシュ物の中でも、個人的には一番面白かったと言えるし、一番のおすすめである。もしも論ではあるが、ジャック・フットレルがタイタニック号に乗船していなければ、ホームズのライバルの一人と目されるヴァン・ドゥーゼン教授の物語が更に楽しめたかと思うと、非常に残念である。

タイタニック号の悲劇にホームズとワトスン、そしてジャック・フットレル等を登場させるという発想は一見簡単に思いつきそうな気もするが、運命の日に向けての緊迫感を盛り上げつつ、ストーリーをまとめるのは意外と難しかったのではないかと思う。

以前、科学博物館(Science Museum)で
行われていた「タイタニック号展」の入場券


読後の私的評価(満点=5.0)

1)事件や背景の設定について ☆☆☆☆☆(5.0)
1912年4月14日未明、北大西洋で沈没したタイタニック号を舞台にしており、実在の人物と架空の人物とが非常にうまく組み合わされている。

2)物語の展開について ☆☆☆☆☆(5.0)
氷山との接触により沈没という運命の1912年4月14日に向けて、章毎にタイムリミットが少しずつ減っていく筋立てであり、タイタニック号の結末を知る読者の緊張感を徐々に盛り上げている。一方、ホームズとワトスンは新型潜水艦の設計図を盗んだ犯人を、(彼らは全く知らないその)タイムリミットまでに見つけ出す必要があり、二重の意味で話を非常にうまく盛り上げていると言える。文章自体もとても読みやすかった。

3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆☆☆(4.0)
タイタニック号の沈没については、神ではないホームズとワトスンにはどうしようもできないところ、彼らはタイタニック号の隅から隅まで動き回って、実在の人物や架空の人物と会い、話をうまく回転させている。ただし、推理小説としてのトリックや謎解き要素は少なく、スパイ小説あるいは冒険小説の要素が強い。

4)総合 ☆☆☆☆半(4.5)
約300ページ弱の話ではあるが、途中の中だるみは全くなく、最初から最後まで気に読ませる展開で、とても楽しく読むことができた。本を読んだ時期が、ちょうタイタニック号が沈没してから100周年に該る2012年4月で、テレビではタタニック号関連のドキュメンタリーが何回か放送されたり、本屋でも関連本が多数出版されていた。そういったドキュメンタリーを事前に観たり、関連本を読んだりしいたため、予備知識があったこともあり、内容がとても面白く感じた。

1 件のコメント:

  1. 今作品の翻訳が読みたいですね。まあ、自分でも訳してみようとは思いますが。

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