2014年4月26日土曜日

ロンドン 地下鉄ベーカーストリート駅 ジュビリーラインのプラットフォームにあるホームズの物語(3)

(3)赤毛組合(The Red-Headed League)


初出:「ストランドマガジン」(英)1891年8月号
事件の発生:1890年10月
収録:「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」

燃えるような赤毛の初老の男性で、質屋のジェイベズ・ウィルスン氏は非常に興味深い話を持ってベーカー街にやって来た。事件を調査するホームズとワトスンは、スコットランドヤードのジョーンズ警部と銀行の頭取であるメリーウェザー氏と一緒に、質屋の裏の銀行に向かった。銀行の地下室には、増資のために借り受けたナポレオン金貨3万枚が保管されていた。その地下室の暗闇の中で犯人の潜入を待つ場面が描かれている。


「赤毛組合」は、サー・アーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズ作品の第4作目で、56ある短編小説のうち、2番目に発表された。ある年の秋、ジェイベズ・ウィルスンという人物が、赤毛の人間を募集する広告が掲載された「モーニング・クロニクル」紙の切り抜き(1890年4月27日付)を持参して、ホームズとワトスンの元をたずねて来た。彼は、採用の翌日から赤毛組合で大英百科事典(Encyclopedia Britannica)を書写する仕事を始めたのだが、8週間後のある日突然、赤毛組合は解散してしまう。そこでホームズとワトスンに、赤毛組合がなぜ突然解散してしまったのか、その理由の調査依頼にやってきたのである。


本作品においては、日付の矛盾が発生していると言われている。

先ず最初に、物語の出だし部分で「去年の秋」と言っているにもかかわらず、ジェイベズ・ウィルスン氏が持ってきた新聞の日付は「1890年4月27日」になっており、その時新聞広告の切り抜きを見たワトスンが「それはちょうど2ヶ月前の広告だ。」と言っていることから、ジェイベス・ウィルソンがホームズとワトスンの元を訪ねて来たのは、1890年の6月末だということが分かる。

彼が赤毛組合で働き始めたのが、新聞広告の後の4月末頃だと考えると、赤毛組合が解散された日は、それから8週間後ということは、おそらく6月末なのである。

ところが、物語の中では、赤毛組合の事務所のドアに貼られた解散を知らせる貼り紙についても書かれており、その日付が1890年の10月9日なのである。

ということで、日付の辻褄が合わないのである。

更に言うと、1890年の4月27日は日曜日で、当時、ロンドン市内では、日曜日は新聞が発行されておらず、またその時点で「モーニングクロニクル(Morning Chronicle)」紙(実在していた新聞)は既に廃刊となっていた、という話もある。


・ワトスンの物語の出だしの記述       去年の秋

・赤毛組合の新聞広告の日付        1890年4月27日(日)

・ウィルスンが赤毛組合で面接を受ける   1890年4月28日(月)(?)

・ウィルスンが赤毛組合で働き始める    1890年4月29日(火)(?)

     ↓

   8週間後

・赤毛組合解散              1890年6月末(?)

・ウィルスンがホームズの元を訪ねた日付  1890年6月末(ワトスンの

                     「2ヶ月前の広告」の発言から推定)

・赤毛組合のドアに貼られた解散通知の日付   1890年10月9日


ワトスンの物語の出だしの記述と、赤毛組合のドアに貼られた解散通知の日付は合致しているので、新聞広告の日付が8月の10日前後となれば、全ての日付の整合性はとれると思う。
物語の筋には影響はないものの、枝葉末節が気になって仕方がないのが、ホームズのファンなのである。

プラットフォームに飾られた絵は、終盤の一番のハイライトとなる場面で、この物語の雰囲気がとても良く出ている。