2014年4月27日日曜日

ロンドン 地下鉄ベーカーストリート駅 ジュビリーラインのプラットフォームにあるホームズの物語(4)

(4)ライオンのたてがみ(The Lion's Mane)


初出:「リバティ」(米)1926年11月号
                                 「ストランドマガジン」(英)1926年12月号
                                                                   事件の発生:1907年7月
収録:「シャーロック・ホームズの事件簿(The Casebook of Sherlock Holmes)」

ホームズは探偵業から引退し、英国サセックス丘陵の南斜面にある別荘に居を構え、蜜蜂と書物に囲まれた静かな生活を送っていた。嵐が去った朝、ホームズは散歩に出かけ、近くで学校を運営している隣人のハロルド・スタックハースト氏に出会う。海岸に向かった二人の前に、フィッツロイ・マクファースン青年がよろめきながら歩いてきて、ばったりと倒れる。彼は「ライオンのたてがみ」という謎の言葉を残して、息を引き取る。彼の背中には、細い鞭で打たれたような赤いミミズ腫れの痕が何本も残っていた、という場面が描かれている。


本作品は、サー・アーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズ作品の第57作目で、56ある短編小説のうちでは、53番目に発表された。探偵業から引退したホームズの一人称で書かれている二作のうちの一つで、もう一つは「白面の兵士」(The Blanched Soldier)である。

この物語で、ホームズは、マクファースン青年が残した「ライオンのたてがみ」というダイイングメッセージを頼りに事件を追って行くのだが、これは実は「サイアネアクラゲ」と呼ばれるクラゲの通称(Lion's Mane Jellyfish)で、学名は「サイアネア・カピラータ」(Cyanea cpillata)、英国の西岸から南西部や南部の海岸で見ることができるそうである。ホームズが引退後に暮らしていたのは英国南部のサセックスなので、このクラゲの生息地である。

プラットフォームの絵は、場面描写として物語の雰囲気をとてもよく伝えている。しかしながら、個人的には、他に有名な事件が多過ぎて、この物語は正直あまり印象に残っていない。という訳で、なぜ7つの壁画の絵の一つに選ばれたのかが少々疑問である。