2021年9月25日土曜日

コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」<小説版>(The Gloria Scott by Conan Doyle ) - その1

ストランドマガジン」の1893年4月号 に掲載された
コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」の挿絵(その1)
<シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)によるイラスト> -
大学在籍時、ヴィクター・トレヴァー(Victor Trevor)の飼い犬が
シャーロック・ホームズの足首に噛み付いたことが切っ掛けとなり、二人は知り合う。
ヴィクターがホームズを見舞ううちに、二人は親友になる。
ヴィクターは、ホームズが大学に居た2年間にできた唯一の友人であった。
画面左の人物がシャーロック・ホームズで、
画面右の人物がヴィクター・トレヴァー。


米国の作家であるリチャード・ルイス・ボイヤー(Richard Lewis Boyer:1943年ー2021年)が1976年に発表した「スマトラ島の巨大ネズミ(The Giant Rat of Sumatra → 2021年7月14日 / 7月18日 / 7月25日付ブログで紹介済)」は、元々、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が発表した短編小説「サセックスの吸血鬼(The Sussex Vampire → 2021年8月15日 / 8月29日付ブログで紹介済)」において言及されている「語られざる事件」をベースにしている。


「サセックスの吸血鬼」は、ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、48番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1924年1月号に、また、米国でも、「ハーツ インターナショナル(Heart’s International)」の1924年1月号に掲載された。そして、ホームズシリーズの第5短編集である「シャーロック・ホームズの事件簿(The Casebook of Sherlock Holmes)」(1927年)に収録された。


「語られざる事件」である「スマトラ島の大ネズミ」事件こと、「マチルダブリッグス号(Matilda Briggs)」事件は、「サセックスの吸血鬼」の冒頭で語られている。その後、更に、「グロリア・スコット号事件(The Gloria Scott)」についても、言及されている。


‘… But what do we know about vampires? Does it come within our purview either? Anything is better than stagnation, but really we seem to have been switched on to a Grimms’ fairy tale. Make a long arm, Watson, and see what V has to say.’

I leaned back and took down the great index volume to which he referred. Holmes balanced it on his knee and his eyes moved slowly and lovingly over the record of old cases, mixed with the accumulated information of a lifetime.

‘Voyage of the Gloria Scott,’ he read. ‘That was a bad business. I have some recollection that you made a record of it, Watson, though I was unable to congratulate you upon the result. …’ 


「しかし、吸血鬼について、僕達は何が分かっているんだ?吸血鬼は、僕達の調査範囲に含まれるのか?どんな事件であっても、何もないよりもマシだが、実際、グリム童話の世界に迷い込んだみたいだな。ワトスン、少しばかり、手を伸ばして、それをとってくれないか。「V」の項目に、何が書かれているか、見てみよう。」 

私は、後ろに手を伸ばして、彼が言った分厚い索引を取り出した。ホームズは、その索引を膝の上に置き、生涯にわたって収集した情報が混じった古い事件の記録を、ゆっくりと、そして、愛おしそうに、調べていった。

「グロリア・スコット号の航海」と、彼は読み上げた。「これは、嫌な事件だったよ。ワトスン、確か、君はこの事件を公表したな。正直、あまりいい出来だったとは言えないがね。」


ストランドマガジン」の1893年4月号 に掲載された
コナン・ドイル作「グロリア・スコット号事件」の挿絵(その2)
<シドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)によるイラスト> -
ホームズが、ヴィクター・トレヴァーに招待されたノーフォーク州(Norfolk)の屋敷から
ロンドンへと帰る前日、ハドスン(Hudson)と名乗る船乗りが屋敷を訪れた。
画面左奥の人物がヴィクター・トレヴァーで、
画面右奥の人物がシャーロック・ホームズ。
また、画面左手前の人物が、地主で、治安判事も務めるトレヴァー氏(Trevor senior)で、
画面右手前の人物が、謎の人物であるハドスン。


「グロリア・スコット号事件」は、ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、17番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1893年4月号に、また、米国でも、「ハーパーズ ウィークリー(Harper’s Weekly)」の1893年4月15日号に掲載された。そして、ホームズシリーズの第2短編集である「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」(1893年)に収録された。


シャーロック・ホームズが初登場したのは、「緋色の研究(A Study in Scarlet)」(1887年)であるが、同作品が、彼が手掛けた最初の事件ではない。

「グロリア・スコット号事件」こそ、ホームズが大学在籍中に手掛けた最初の事件で、彼が諮問探偵を職業とする切っ掛けを描いた重要な作品である。

物語の第1話が必ずしもシリーズ全体の最初の話ではないというストーリー構成は、欧米の諸作に見受けられるが、「グロリア・スコット号事件」は、その先駆的な作品の一つと言える。


本作品は、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)の下宿で、ホームズがジョン・H・ワトスンに対して、事件を回想しながら聞かせる形で、物語が進行する。実際、物語の冒頭部分以外は、ホームズによる一人称で語られている。 


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