2021年8月22日日曜日

H・G・ウェルズ作「モロー博士の島」<小説版>(The Island of Dr. Moreau by Herbert George Wells


英国出身で、俳優やコメディアンとして活躍した後、規則的な生活を求めて、作家業へ転身したガイ・アダムス(Guy Adams:1976年ー)が2012年に発表した「シャーロック・ホームズ / モロー博士の軍団(Sherlock Holmes / The Army of Dr. Moreau → 2021年7月21日 / 7月31日 / 8月9日付ブログで紹介済)」の元ネタとなったのは、「モロー博士の島(The Island of Dr. Moreau)」で、英国の作家ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells:1866年ー1946年 → 2020年2月10日 / 2月22日付ブログで紹介済)である。彼の場合、日本において、フルネームではなく、H・G・ウェルズと表記されることが多い。


「モロー博士の島」において、エドワード・プレンディック(Edward Prendick)という青年が、語り手を務める。


1887年2月、南太平洋において、帆船レディーヴェイン号(Lady Vain)が漂流船と衝突事故を起こして沈没。帆船レディーヴェイン号に乗り込んでいたエドワード・プレンディックは、沈没の際、小型ボートで脱出する。

後に、彼は別の船に救助されて、命が助かるが、その船には、動物が多数積まれている上に、異様な外見をした人間も乗船しており、何か怪しい雰囲気が漂っていた。

その後、プレンディックは、その船の船長と衝突した結果、船の目的地である孤島で下船されられてしまった。


その島において、プレンディックは、白髪の男性に出会うことになる。

生物学を学んだ経験があるプレンディックは、その白髪の男性が、英国で高名な学者だったモロー博士(Dr. Moreau)で、残酷な動物実験を行ったとの理由で、学界を追放され、英国からその姿を消した人物であることに気付くのであった。


モロー博士は、プレンディックに対して、「この島は、生物学研究所のようなものだ。」と告げる。モンゴメリー(Montgomery)という男性が、モロー博士の助手を務めていた。

なんと、モロー博士は、この島において、様々な動物を人間のように改造した上、彼ら獣人に知性を与える実験を行っていたのである。島には、


(1)ムリング(M’ling)

(2)犬男(Dog-man)

(3)銀毛の男(grey Sayer)

(4)豹男(Leopard-man)

(5)ハイエナと豚の男(Hyena-swine)


等、多数の獣人が存在していて、人間を模範とする掟を遵守しながら、生活をしていたが、プレンディックは、島内に散らばる斬殺された動物の死骸等から、モロー博士から課せられた掟を破った獣人が居ることに気付くのだった。


そして、ある事件を経て、獣人達は、人間らしい知性を失い、獣と化していく。更に、獣人達との酒宴を最後のキッカケにして、非常に恐ろしい事態へと陥るのであった。


作者のH・G・ウェルズは、1866年にケント州(Kent)のブロムリー(Bromley → 現在のブロムリー・ロンドン自治区(London Borough of Bromley))内の商人の家に生まれた。

彼は奨学金を得て、サウスケンジントン(South Kensington)の科学師範学校(National School of Science→現在のインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College of London))に入学し、生物学を学んだ。また、彼は学生誌「サイエンス スクール ジャーナル(Science School Journal)」に寄稿したりして、将来「SF(空想科学小説)の父」と呼ばれるようになる基礎を同学校に置いて築いたのである。


科学師範学校を卒業した後、彼は当初教員を目指すものの、教育界が非常に保守的な体質であること、また、当時肺を患っていたこと等が原因で、教員への道が閉ざされたため、ジャーナリストとなり、文筆活動へと進むことになった。そして、彼は1890年代から1900年代にかけて、


(1)「タイムマシン(The Time Machine)」(1896年)

(2)「モロー博士の島」(1896年)

(3)「透明人間(The Invisible Man)」(1897年)

(4)「宇宙戦争(The War of the Worlds)」(1898年)

(5)「月世界旅行(The First Man in the Moon)」(1901年)


等、科学師範学校時代に得た科学知識に裏打ちされた SF 小説を次々と発表して、成功を納めた。これらの作品群は、現在においても、非常に有名なものばかりで、今も映像化されたりして、後世に大きな影響を与えている。


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