2015年9月26日土曜日

ロンドン ミノリーズ通り(Minories)

ミノリーズ通り沿いには、新しい建物と古い建物が混在している

サー・アーサー・コナン・ドイル作「マザリンの宝石(The Mazarin Stone)」では、ある夏の晩7時頃、ジョン・ワトスンがベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れるところから、物語が始まる。


給仕のビリー(Billy)によると、ホームズは現在ある事件にかかりきりだと言う。ホームズは、昨日、職探しの職人に、そして、今日は老婆に変装して出かけた、とのこと。ビリーがワトスンにこっそり教えてくれたところでは、「マザリンの宝石(Mazarin Stone)」という10万ポンドもする王冠のダイヤモンド盗難事件のためのようだ。また、窓辺には、(「空き家の冒険(The Empty House)」でも使われた)ホームズの蝋人形が置かれていた。一体何のために?
その時、寝室のドアが開いて、ホームズが姿を見せる。ホームズ曰く、「『マザリンの宝石』を盗んだのは、ネグレット・シルヴィウス伯爵(Count Negretto Sylvius)で、彼と彼の部下のサム・マートン(Sam Merton)が自分の命を付け狙っている。」と言うのであった。

ミノリーズ通り沿いに建つパブ

「そのシルヴィウス伯爵はどこに居るんだい?」
「僕は午前中ずーっと彼に張り付いて尾行していた。ワトスン、老婆の格好をしていたんだ。これ以上はない位、素晴らしい変装だったよ。実際に、彼は一度僕に日傘を拾ってくれたしね。『マダム、日傘をお忘れですよ。』と、彼は言った。彼は半分イタリア人の血を引いているから、機嫌が良い時は、イタリア南部の上品な態度を崩さないが、機嫌が悪くなると、悪魔の化身になるのさ。ワトスン、人生というのは、風変わりな出来事で満ちているね。」
「ホームズ、そうは言うが、大変なことになったかもしれないじゃないか!」
「そうだね、もしかすると、そうなったかもしれない。僕は彼をミノリーズ通りにあるストラウベンザの工房までつけて行った。ストラウベンザは空気銃を製造していた。ーかなり見事な出来栄えだった、あの出来栄えを考慮すると、今この瞬間にも、あの空気銃が向かいの窓にあっても、おかしくないな。君は人形をもう見たかい?もちろん、ビリーが君にそれを見せたんだな。そうさ、いつ何時、あの空気銃の弾丸があの見事な人形の頭を貫くかもしれない。」

ミノリーズ通りから南方面を望む

'Where is this Count Sylvius?'
'I've been at his very elbow all the morning. You've seen me as an old lady, Watson. I was never more convincing. He actually picked up my parasol for me once. "By your leave, madame," said he - half-Italian, you know, and with the Southern graces of manner when in the mode, but a devil incarnate in the other mood. Life is full of whimsical happenings, Watson.'
'It might have been tragedy.'
'Well, perhaps it might. I followed him to old Straubenzee's workshop in the Minories. Straubenzee made the air-gun - a very pretty bit of work, as I understand, and I rather fancy it is in the opposite window at the present. Have you seen the dummy? Of course, Billy showed it to you. Well, it may get a bullet through its beautiful head at any moment!'

ミノリーズ通りから北方面を見たところ

シルヴィウス伯爵のために、空気銃を製造したストラウベンザ(Straubenzee)の工房があったミノリーズ通り(Minories)は、ロンドンの経済活動の中心地であるシティー(City)内の東端に位置しており、地下鉄オルドゲート駅(Aldgate Tube Station)と地下鉄タワーヒル駅(Tower Hill Tube Station)を南北に結ぶ通りである。ミノリーズ通りを越えて、更に東へ進むと、「切り裂きジャック(Jack the Ripper)」事件でも有名なホワイトチャペル地区(Whitechapelーロンドン・タワーハムレッツ区(London Borough of Tower Hamlets)に属する)へと入る。

ミノリーズ通りの裏側に新築のビルが聳え建っている

マイノリーズ通りの名前は、13世紀末にこの地に建てられた修道院で神に仕える修道女を意味する「minoress」から採られたと言われている。
その後、この辺りはセントボトルフ(St. Botolph)教区として発展したが、1895年にホワイトチャペル教区に統合される。

ガーキン等の近代的なビルがシティー方面には建ち並んでいる—
その手前では、建設用クレーンが稼働中

ミノリーズ通りを含めたシティーとホワイトチャペル地区の境界辺りは、以前から未開発地域として残されており、治安上の懸念もあったが、シティー内に流入する外国企業等が大幅に増加したことに伴い、シティー内で供給可能なオフィスビルが不足するようになった。そのため、近年、この辺り、特にシティー内に属するエリアの開発が積極的に行われて、新しいオフィスビルが数多く建設されている。

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