2014年11月30日日曜日

ロンドン リージェントストリート/カフェ・ロイヤル(Regent Street/Cafe Royal)

リージェントストリート沿いの
カフェ・ロイヤルの旧入口

サー・アーサー・コナン・ドイル作「高名な依頼人(The Illustrious Client)」において、サー・ジェイムズ・デマリー大佐(Colonel Sir James Damery)経由、匿名の依頼人からの頼みを受けたシャーロック・ホームズは、ド・メルヴィル将軍(General de Merville)の令嬢ヴァイオレット・ド・メルヴィル(Violet de Merville)とオーストリアのアデルバート・グルーナー男爵(Baron Adelbert Grunerーハンサムであるが、非常に残虐な男)の結婚をなんとか阻止しようと試みる。ホームズは、英国のキングストン(Kingston)に住むグルーナー男爵との直接交渉やロンドンのバークリースクエア(Berkeley Square)に住むド・メルヴィル嬢への説得を行うが、残念ながら、どちらも失敗に終わってしまう。そして、ド・メルヴィル嬢との会見の二日後、昼の12時頃、リージェントストリート(Regent Streetーピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)から北方面にのびる大通り)沿いにあるカフェ・ロイヤル(Cafe Royal)の前の路上で、ホームズはグルーナー男爵が放った手下達の襲撃を受けて、瀕死の大怪我を負ってしまうのである。

グラスハウスストリートに面した
カフェ・ロイヤルの旧裏口

チャリングクロス駅(Charing Cross Station)近辺に居たジョン・ワトスンは、夕刊紙の売り子が持つ新聞の見出しを見て、しばし呆然と立ち尽くす。そこには、黄色の地に黒色の文字で次のように書かれていた。
「シャーロック・ホームズ氏が暴漢の襲撃に遭う!(Murderous Attack upon Sherlock Holmes)」と...
「有名な私立探偵のシャーロック・ホームズ氏が今朝襲撃に遭って重態に陥ったことは非常に遺憾である。今のところ、その詳細は不明なるも、事件は12時頃、リージェントストリート沿いのカフェ・ロイヤルの前で発生した模様。襲撃はステッキで武装した二人の男達によって行われ、ホームズ氏は頭部と身体に打撃を受けて、医師団によると、重傷とのこと。当初、ホームズ氏はチャリングクロス病院に運ばれたが、その後、本人の希望でベイカーストリートの自宅に移送された。ホームズ氏を襲撃した犯人達は紳士然とした服装の男達で、カフェ・ロイヤルの中を通り、裏側のグラスハウスストリートへと抜けて、目撃者の追及から免れた模様。負傷したホームズ氏の活動と明晰な頭脳に常日頃悩まされてきた犯罪者達の一味と目される。(We learn with regret that Mr Sherlock Holmes, the well-known private detective, was the victim this morning of a murderous assault which has left him in a precarious position. There are no exact details to hand, but the event seems to have occurred about twelve o'clock in Regent Street, outside the Cafe Royal. The attack was made by two men armed with sticks, and Mr Holmes was beaten about the head and body, receiving injuries which the doctors describe as most serious. He was carried to Charing Cross Hospital, and afterwards insisted upon being taken to his rooms in Baker Street. The miscreants who attacked him appear to have been respectably dressed men, who escaped from the bystanders by passing through the Cafe Royal and out into Glasshouse Street behind it. No doubt they belonged to that criminal fraternity which has so often had occasion to bewail the activity and ingenuity of the injured man.)」

カフェ・ロイヤル前のリージェントストリートにおいて
ホームズを襲撃したグルーナー男爵の手下達が逃走した先の
グラスハウスストリート

ホームズがグルーナー男爵が放った手下達の襲撃を受けたカフェ・ロイヤルはリージェントストリート沿いにあり、住所は「68 Regent Street, Mayfair, London W1B 4DY」である。
元のカフェ・ロイヤルは、フランス人のワイン商人だったダニエル・ニコラス・セヴェノン(Daniel Nicholas Thevenon)によって1865年に創業された。フランスで自己破産した彼は、妻を伴い、1863年に英国に移住した際に、英国風の名前ダニエル・ニコルス(Daniel Nicols)に改名した。彼の息子(名前は父親と同じダニエル・ニコルス)の下でカフェ・ロイヤルは繁盛し、1890年代に入ると、ロンドンの人気スポットとなった。そこには、オスカー・ワイルド(Oscar Wilde:1854年ー1900年/代表作ー「サロメ」や「ドリアン・グレイの肖像」)、ヴァージニア・ウルフ(Virginia Wolf:1882年ー1941年/代表作ー「ダロウェイ夫人」、「灯台」、「オーランドー」や「波」)、デイヴィッド・ハーバート・ローレンス(David Herbert Lawrence:1885年ー1930年/代表作ー「チャタレイ夫人の恋人」や「息子と恋人」)やジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw:1856年ー1950年/代表作ー「ピグマリオン」や「ウォレン夫人の職業」)等、英国を代表する作家達が多数つめかけたのであった。

リージェントストリートとグラスハウスストリートを繋ぐ
エアーストリート(Air Street)沿いにあるホテルの玄関口

大改装のため、カフェ・ロイヤルは2008年12月に一旦閉鎖され、約4年間の改装工事(イスラエルの不動産会社による開発)を経て、2012年12月に159の客室を有する5つ星ホテルに新しく生まれ変わり、現在に至っている。

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