英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。
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| 英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース) |
(27)缶詰が並んだ棚(Shelves of tinned food)
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| 兵隊島に建つ邸宅の地下にある食料品室内の棚の上に、 食べ物の缶詰が並んでいる。 <筆者撮影> |
アンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston / 遊び好きの上、生意気な青年 → 2025年11月1日付ブログで紹介済)、エセル・ロジャーズ(Ethel Rogers / 料理人 → 2025年11月4日付ブログで紹介済)、ジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon MacArthur / 退役した老将軍(General)→ 2025年10月30日付ブログで紹介済)、トマス・ロジャーズ(Thomas Rogers / 執事 → 2025年11月3日付ブログで紹介済)、そして、エミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)の5人が、童謡「10人の子供の兵隊」(nursery rhyme → 2025年11月15日付ブログで紹介済)の調べにのって殺された後、残された5人が昼食をとる場面において、缶詰が並んだ棚が言及される。
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| 兵隊島に建つ邸宅の2階にある ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の壁(画面左側)には、 童謡「10人の子供の兵隊」が書かれた額が掛けられている。 <筆者撮影> |
昼食の時間になると、いつものとおりにとった - ただし、普通の食事のしきたりは、抜きだった。五人は、そろって台所に行った。食料品室には缶詰がずらりと並んでいる。牛タンの缶詰一個と果物の缶詰を二個出して、開けた。台所のテーブルのまわりに立って食べ、終わると五人まとまって、また応接間にもどった - そしてそこに座って - たがいにじっと目を光らせていた。
(青木 久惠訳)
(28)ビスケットが入った缶(A biscuit tin)
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アンソニー・ジェイムズ・マーストンとエセル・ロジャーズの2人が殺された翌朝、エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong / 医師 → 2025年10月31日付ブログで紹介済)、ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore / 元警部(Detective Inspector)→ 2025年11月2日付ブログで紹介済 )とフィリップ・ロンバード(Philip Lombard / 元陸軍中尉 → 2025年10月28日付ブログで紹介済)の3人が兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)を徹底的に捜索したものの、島には自分達8人以外に、人間は誰も居ないことを確認したに過ぎなかった。
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| 兵隊島は、 ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に描かれている。 <筆者撮影> |
ダイニングルームのドアのそばに、ロジャーズが立っていた。三人が階段を下りていくと、ロジャーズは一、二歩前に出て、不安げな低い声で言った。
「お気に召していただけますか。冷製のハムと牛タン、それにジャガイモを少々ゆでておきました。ほかにはチーズとビスケット、缶詰の果物です」
「けっこうじゃないか。じゃあ、食料のたくわえは充分なんだな?」と、ロンバードがきいた。
「はい、たっぷりございます - 缶詰がいろいろと。食料品室にすらりと並んでおります。島は本土と、かなりの間行き来できなくなることがございます。そのときのための備えなんでしょう」
(青木 久惠訳)
(29)銀食器を入れる箱(A silver chest)
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アンソニー・ジェイムズ・マーストン、エセル・ロジャーズ、ジョン・ゴードン・マッカーサー、トマス・ロジャーズ、そして、エミリー・キャロライン・ブレントの5人が殺された後、残された5人は、一人一人、身体検査と持ち物の検査を行った。
判事が言った。
「さて、これで一つ確かになった。われわれ五人の誰も、命をおびやかす武器も薬品も持っていない。その点は安心できるじゃないか。さて、薬を安全な場所にしまおう。たしか食器室に、銀食器を入れる箱があったと思ったが、違ったかな」
「そいつは名案ですよ。でも、箱のキーは、誰が持つんですか。判事さん、あんたですか」と。ブロアが言った。
判事は答えなかった。
彼は食器室に下りていった。ほかの四人も、あとに続いた。銀のナイフやフォーク、皿などを入れる小さな箱があった。判事の指図で薬が箱の中に納められ、カギがかけられた。次に、やはり判事の指示で箱が食器棚に入れられて、食器棚にも同じようにカギがかけられた。カギをかけ終わったところで、判事は箱のキーをフィリップ・ロンバードに渡し、食器棚のキーをブロアに渡した。
「きみたちは二人とも、がっちりした体格をしている。相手からキーを奪おうとしても、容易ではないだろう。われわれ三人には、とても無理だ。食器棚 - あるいは銀食器の箱を壊そうとしても、大きな音をたててしまうし、厄介な仕事だ。誰にも気づかれずに壊すことは、まず、不可能だろうね」
(青木 久惠訳)
(38)銅鑼(A dinner gong)
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| 兵隊島に建つ邸宅の1階にある食堂内の隅に、 食事の準備が整ったことを知らせる銅鑼が置かれている。 <筆者撮影> |
食事の準備が整ったことを知らせる銅鑼については、アガサ・クリスティーの原作上、何回か言及されている。
<招待客の8人が兵隊島に到着した日の夕食前の場面>
夕食を知らせるドラが鳴り、フィリップ・ロンバードは部屋を出て、階段の降り口まで歩いた。彼はヒョウのように、しなやかに、足音をたてずに動く。頭のてっぺんからつま先まで、いかにもヒョウだ。餌食を追う猛獣 - 見てる分にはわくわくする。ロンバードは、フッと一人笑いを浮かべた。
一週間だって?
楽しい一週間に鳴りそうだ。
(青木 久惠訳)
<アンソニー・ジェイムズ・マーストンとエセル・ロジャーズの2人が殺された翌朝の場面>
朝食を知らせるドラが、九時に鳴った。全員がすでに起きて、ドラの音を待っていた。
マッカーサー将軍と判事は、外のテラスをぶらつきながら、とりとめのない政治談義をしていた。
ヴェラ・クレイソーンとフィリップ・ロンバードは、屋敷の裏手にある、島の最頂部にのぼった。丘の頂上にのぼり着くと、ウィリアム・ヘンリー・ブロアが本土をじっと見つめて、立っていた。
「モーターボートはまだ来ませんよ。さっきから見張っているんだけどね」と、ブロアは言った。
(青木 久惠訳)
<アンソニー・ジェイムズ・マーストンとエセル・ロジャーズの2人が殺された翌朝、エドワード・ジョージ・アームストロング、ウィリアム・ヘンリー・ブロアとフィリップ・ロンバードの3人が兵隊島を徹底的に捜索したものの、島には自分達8人以外に、人間は誰も居ないことを確認したに過ぎなかった後の場面>
彼(フィリップ・ロンバード)は続けて、ゆっくり言った。
「どうしてそう思うか。われわれは今まさにそのワナの中にいるからですよ - 絶対に間違いない! ロジャーズのかみさんが死に、アンソニー・マーストンも死んだ! ダイニングテーブルの上の兵隊の人形が、一つずつ消えた。ほら、オーエンの手がはっきり見えるじゃないですか - しかし、オーエンその人はいったいどこにいるんだ」
階段の下から、昼食を知らせるドラの音が厳かに響いてきた。
(青木 久惠訳)







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