2025年11月24日月曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その17

兵隊島への招待客の一人であるアンソニー・ジェイムズ・マーストンが、

毒物が入った飲み物を飲んで急死した翌朝、

兵隊島に建つ邸宅の3階にある使用人部屋において、

執事トマス・ロジャーズの妻で、料理人のエセル・ロジャーズが、

いつまで経っても起きて来ず、死亡しているのが発見される。

<筆者撮影>

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(15)就寝中に死亡(dead in their bed)


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に描かれている。
<筆者撮影>


彼らを島で迎えた執事と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)に自分達は雇われていると、招待客に告げる。しかし、彼らの招待客で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。謎の声による告発を聞いた以下の10人は戦慄する。


(A)エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong / 医師 → 2025年10月31日付ブログで紹介済)

1925年3月14日に、ルイーザ・メアリー・クリース(Louisa Mary Clees / 患者)を死に至らせたと告発された。


(B)エミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)

1931年11月5日に、ビアトリス・テイラー(Beatrice Taylor / 使用人の娘)を死に追いやったと告発された。


(C)ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore / 元警部(Detective Inspector)→ 2025年11月2日付ブログで紹介済 )

1928年10月10日に、ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor / 無実の人間)を死に至らせたと告発された。


(D)ヴェラ・エリザベス・クレイソーンVera Elizabeth Claythorne / 体育教師(games mistress)→ 2025年10月21日付ブログで紹介済)

1935年8月11日に、シリル・オギルヴィー・ハミルトン(Cyril Ogilvie Hamilton / 家庭教師をしていた子供)を殺害したと告発された。


(E)フィリップ・ロンバード(Philip Lombard / 元陸軍中尉 → 2025年10月28日付ブログで紹介済)

1932年2月のある日、東アフリカにおいて先住民族21人(21 men, members of an East African tribe)を死に追いやったと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が戦慄する場面-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版
(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


(F)ジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon MacArthur / 退役した老将軍(General)→ 2025年10月30日付ブログで紹介済)

1917年1月14日に、アーサー・リッチモンド(Arthur Richmond / 妻レスリー(Lesley)の愛人だった部下)を故意に死地へ赴かせたと告発された。


(G)アンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston / 遊び好きの上、生意気な青年 → 2025年11月1日付ブログで紹介済)

去年の11月14日に、ジョン・クームズ(John Coombes)とルーシー・クームズ(Lucy Coombes)と言う二人の子供)を殺害したと告発された。


(H)トマス・ロジャーズ(Thomas Rogers → 2025年11月3日付ブログで紹介済)

(I)エセル・ロジャーズ(Ethel Rogers → 2025年11月4日付ブログで紹介済)

1929年5月6日に、ジェニファー・ブレイディー(Jennifer Brady / 仕えていた老女)を死に至らせたと告発された。


(J)ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave / 高名な元判事 → 2025年10月20日付ブログで紹介済)

1930年6月10日に、エドワード・シートン(Edward Seton / 皆が無実と確信していた被告)を殺害したと告発された。


謎の声による告発を受けて、茫然自失する10人。


彼らを告発する謎の声は蓄音機(gramophone → 2025年10月18日付ブログで紹介済)からのもので、トマス・ロジャーズによると、オーウェン夫妻から、最初の日、晩餐会の際に録音したメッセージを流すよう、手紙で指示を受けていたと言う。


兵隊島に建つ邸宅の1階にある食堂の隣室に、
招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発するレコードがセットされた
蓄音機が置かれている。
アガサ・クリスティーの原作によると、
蓄音機が置かれているのは、厳密には、応接間の隣室である。
<筆者撮影>


謎の声による告発を聞いて彼の妻エセル・ロジャーズが気を失ってしまうという混乱の直後、毒物が入った飲み物を飲んだアンソニー・ジェイムズ・マーストンが急死する。


その翌朝、エセル・ロジャーズがいつまで経っても起きて来ず、死亡しているのが発見される。


アームストロング医師はビックとして、目をさました。朝だった。部屋に朝日がさしこんでいる。

それに、誰かが、上にかがみこんで、- 彼をゆさぶっている。執事のロジャーズだ。ロジャーズが真っ青な顔で、「先生 - 先生!」と、呼んでいる。

アームストロング医師ははっきりと目を覚ました。

彼は身体を起こして、あわてて言った。

「どうした」

「先生、家内です。目を覚ましません。どうやっても、目を覚まさないんです。それに - それに、なんだか、様子がおかしいのです」

アームストロング医師はすばやかった、ガウンにそでを通すと、ロジャーズのあとを追った。

アームストロングは静かに横向きに横たわる執事の妻の上にかがみこんで、冷たい手をとり、まぶたを持ちあげた。二、三分して、彼は身体を起こして、ふりむいた。

ロジャーズが低い声で、ささやくようにきいた。

「家内は - そのう - 家内は - ?」

乾いた唇をなめている。

アームストロングはうなずいた。

「うむ、亡くなっている」

アームストロングの目は、前にいる男にじっと向けられていた。医者の視線はベッドのそばのテーブルに移って、それから、洗面台、そして、眠る女にもどった。

(青木 久惠訳)


Nine little soldier boys sat up very late; One overslept himself and then there were Eight.

(9人の子供の兵隊さんが、夜更かしをした。一人が寝坊をして、残りは8人になった。)


謎のオーウェン氏から罪状の告発を受けて、気を失ったエセル・ロジャーズは、
夫のトマス・ロジャーズと医師のエドワード・ジョージ・アームストロングの二人に支えられて、
使用人部屋へと運ばれ、医師の手当てを受けたが、
睡眠薬クロラールの過剰摂取による中毒のため、翌日、目を覚まさなかった。 -
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*被害者:エセル・ロジャーズ(料理人)

*告発された罪状:アガサ・クリスティーの原作の場合、トマス・ロジャーズと妻のエセル・ロジャーズの二人は、1929年5月6日の嵐の夜、仕えていた老女であるジェニファー・ブレイディーが発作を起こした際、処方薬を適切に投与せず、医者を呼びに行っている間に、発作を悪化させて、死に至らせたことになっている。

*犯罪発生時期:1929年5月6日

*死因:睡眠薬クロラールの過剰摂取による中毒死


妻のエセル・ロジャーズが亡くなった後、一人で朝食の準備を行ったトマス・ロジャーズは、
朝食を終えて、ゲスト達が席を立った後、食堂の後片付けをしていた際、
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が9個から8個へと減っていることに気付き、
医師のエドワード・ジョージ・アームストロングに報告する-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


残された8人は、アンソニー・ジェイムズ・マーストンとエセル・ロジャーズの死に方が邸宅内に飾ってある童謡「10人の子供の兵隊」の内容に酷似していること、また、食堂のテーブルの上に置いてあった兵隊人形が10個から8個へと減っていることに気付く。それに加えて、迎えの船が兵隊島へやって来ないことが判り、残された8人は兵隊島に閉じ込められた状態になってしまう。


            

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