2025年11月23日日曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その16

ジグソーパズルの右下に、招待客8人と執事 / 料理人夫婦を
兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)に集めた
謎の人物であるオーウェン氏が、
手紙に「U. N. Owen」とサインしている場面が、赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(14)U. N. オーウェン(U. N. Owen)


午後8時から始まった夕食が終わり、招待客の8人は、食堂から応接間へ移動。執事のトマス・ロジャーズ(Thomas Rogers → 2025年11月3日付ブログで紹介済)が、熱々のブラックコーヒーを皆に配った。

兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)に建つ邸宅の1階にある食堂において、
招待客の8人が夕食をとるテーブルの中央に、10人の子供の兵隊人形が置かれている。
アガサ・クリスティーの原作の場合、丸いテーブルとなっているが、
ジグソーパズルの場合、四角い長テーブルとなっている。
なお、テーブルの左側には、手前から、
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ、
ヴェラ・エリザベス・クレイソーン、
エドワード・ジョージ・アームストロング、そして、ウィリアム・ヘンリー・ブロアが座り、
テーブルの右側には、手前から、
ジョン・ゴードン・マッカーサー、エミリー・キャロライン・ブレント、
アンソニー・ジェイムズ・マーストン、そして、フィリップ・ロンバードが着席している。
画面中央奥には、執事のトマス・ロジャーズが、給仕するために控えている。
また、画面右端には、招待客が待つテーブルへ料理を運ぶ
料理人のエセル・ロジャーズの姿が見られる。
<筆者撮影>


時計の針が午後9時20分を指したとき、応接間の静けさを破って、突然、「声」が響いた。

その謎の声は、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する。謎の声による告発を聞いた彼ら10人は戦慄する。


(A)エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong / 医師 → 2025年10月31日付ブログで紹介済)

1925年3月14日に、ルイーザ・メアリー・クリース(Louisa Mary Clees / 患者)を死に至らせたと告発された。


(B)エミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)

1931年11月5日に、ビアトリス・テイラー(Beatrice Taylor / 使用人の娘)を死に追いやったと告発された。


(C)ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore / 元警部(Detective Inspector)→ 2025年11月2日付ブログで紹介済 )

1928年10月10日に、ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor / 無実の人間)を死に至らせたと告発された。


(D)ヴェラ・エリザベス・クレイソーンVera Elizabeth Claythorne / 体育教師(games mistress)→ 2025年10月21日付ブログで紹介済)

1935年8月11日に、シリル・オギルヴィー・ハミルトン(Cyril Ogilvie Hamilton / 家庭教師をしていた子供)を殺害したと告発された。


(E)フィリップ・ロンバード(Philip Lombard / 元陸軍中尉 → 2025年10月28日付ブログで紹介済)

1932年2月のある日、東アフリカにおいて先住民族21人(21 men, members of an East African tribe)を死に追いやったと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が戦慄する場面-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版
(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


(F)ジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon MacArthur / 退役した老将軍(General)→ 2025年10月30日付ブログで紹介済)

1917年1月14日に、アーサー・リッチモンド(Arthur Richmond / 妻レスリー(Lesley)の愛人だった部下)を故意に死地へ赴かせたと告発された。


(G)アンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston / 遊び好きの上、生意気な青年 → 2025年11月1日付ブログで紹介済)

去年の11月14日に、ジョン・クームズ(John Coombes)とルーシー・クームズ(Lucy Coombes)と言う二人の子供)を殺害したと告発された。


(H)トマス・ロジャーズ

(I)エセル・ロジャーズ(Ethel Rogers → 2025年11月4日付ブログで紹介済)

1929年5月6日に、ジェニファー・ブレイディー(Jennifer Brady / 仕えていた老女)を死に至らせたと告発された。


(J)ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave / 高名な元判事 → 2025年10月20日付ブログで紹介済)

1930年6月10日に、エドワード・シートン(Edward Seton / 皆が無実と確信していた被告)を殺害したと告発された。


謎の声による告発を受けて、茫然自失する10人。


ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事は、執事のトマス・ロジャーズに対して、蓄音機(gramophone → 2025年11月18日付ブログで紹介済)で問題のレコードをかけるように指示をしたオーウェン氏(Mr. Owen)のことを尋ねる。

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事の問いに、ロジャーズは答える。


「このお屋敷の持ち主でございます」

「わたくしはまだ一度もお目にかかっておりませんので」

「わたくしども - 家内もわたくしも、ここに来て、まだ一週間にならないのでございます。職業紹介所の紹介で手紙をもらって、雇われました。プリマスのレジャイナ・エージェンシーです。」

「これこれの日に来るようにということでした。ですから、そのようにいたしました。ここには、なにもかもそろっておりました。食料品はたっぷり買いおきがありましたし、なにからなにまで、すばらしく整っていて、しなければならなかったのは、ほこりを払うぐらいでした」

「またお手紙が来まして、泊まりがけのお客さまがたが来られるので、お部屋を準備するように、というお指図をいただきました。そして昨日の午後の配達で、またオーエンさまからお手紙が来たのです。オーエンさまと奥さまは、すぐにはいらっしゃれない、お客さまにくれぐれも失礼のないようにとのことでした。そしてお夕食とコーヒーのこと、それにレコードをかけるようにとの、お指図がありました」

(青木 久惠訳)


兵隊島に建つ邸宅の1階にある食堂の隣室に、
招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発するレコードがセットされた
蓄音機が置かれている。
アガサ・クリスティーの原作によると、
蓄音機が置かれているのは、厳密には、応接間の隣室である。
<筆者撮影>


雇い主のオーウェン氏からトマス・ロジャーズ宛に出された手紙は、ロンドン中心部のピカデリー通り(Piccadilly)沿いで、グリーンパーク(Green Park)に面して建つ高級ホテルの「リッツ ロンドン(The Ritz London → 2025年7月2日 / 7月14日付ブログで紹介済)」からで、タイプライターで打たれていた。


判事の人さし指が唇をなでた。今度は、感心しているような顔つきだ。

「(中略)ユーリック・ノーマン・オーエン(Ulick Norman Owen)か!ブレントさんの手紙では、名字は、ミミズののたくったような走り書きで、よく読めない。しかし、名前のほうは、まあまあ、読める - ユーナ・ナンシー(Una Nancy)だ。いいかね、どちらも頭文字じゃ同じになる。ユーリック・ノーマン・オーエンと、ユーナ・ナンシー・オーエン。頭文字はどっちも同じで、U. N. Owen だ。ところで、ちょいと連想を働かせて、この名前を UNknown と変えてみたら、どうだろう。アンノウン、すなわち、”名なし”だよ!」

ヴェラが大きな声で言った。

「でも、いくらなんでも、そんなおかしなことって!」

判事はゆっくりうなずいて、言った。

「そう、そのとおりだ。われわれは間違いなく、頭のおかしな人間から招待を受けたようだ - もしかしたら、危険きわまりない殺人鬼かもしれないな」

(青木 久惠訳)


0 件のコメント:

コメントを投稿