2025年11月2日日曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その10

ジグソーパズルの下段のやや右側に、
ファイティングポーズをとる正装姿のウィリアム・ヘンリー・ブロアが、赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)

(9)(22)ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore )

謎のオーウェン氏(Mr. Owen)に招待された以下のメンバーは、それぞれのルートで兵隊島(Solidier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)へと向かっていた。

兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>

<列車:ロンドン / パディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)→ オークブリッジ駅(Oakbridge Station)>

*高名な元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave → 2025年10月20日付ブログで紹介済)/ 一等車

*体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne → 2025年10月21日付ブログで紹介済)/ 三等車

*元陸軍中尉(Lieutenant)のフィリップ・ロンバード(Philip Lombard → 2025年10月28日付ブログで紹介済)/ 三等車

*信仰心の厚い老婦人のエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent → 2025年10月29日付ブログで紹介済)/ 三等車


パディントン駅のコンコースとそれを覆うガラス屋根
<筆者撮影>


<列車:出発地は不明 → エクセター駅(Exeter Station)→ オークブリッジ駅>

*退役した老将軍(General)のジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon Macarthur → 2025年10月30日付ブログで紹介済)


<車(モーリス):ロンドン / ハーリーストリート(Harley Street → 2015年4月11日付ブログで紹介済)→ スティクルヘイヴン村(兵隊島へのボート発着所)>

*医師のエドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong → 2025年10月31日付ブログで紹介済)


ハーリーストリート60番地を示す
非常に凝った外壁の装飾
<筆者撮影>


ハーリーストリート沿いの建物
<筆者撮影>


その建物外壁のアップ写真
<筆者撮影>


<車(ダルメイン):出発地は不明→ スティクルヘイヴン村(兵隊島へのボート発着所)>

*遊び好きで、生意気な青年のアンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston → 2025年11月1日付ブログで紹介済)


招待客の最後の一人である元警部(Detective Inspector)のウィリアム・ヘンリー・ブロアは、港町のプリマス(Plymouth → 2023年9月8日付ブログで紹介済)で、オークブリッジ駅行きの鈍行列車に乗車した。


プリマス海軍記念館(Plymouth Naval Memorial)は、
第一次世界大戦と第二次世界大戦で亡くなった
英国と英国連邦の船員に敬意を表して、捧げられている。


乗客は、ブロアのほかに一人きり。目をとろんとさせた、船乗り風の老人だ。今のところ眠っている。

ブロアは手帳に、なにやら細々と書きこんでいた。

「これで全部か」と、彼は低くつぶやいた。「エミリー・ブレント、ヴェラ・クレイソーン、医者のアームストロング、アンソニー・マーストン、ウォーグレイヴ判事、フィリップ・ロンバード、陸軍殊勲賞とナイトの称号をもつマッカーサー将軍、執事のロジャーズとその女房」

彼は手帳を閉じて、ポケットにしまった。そして隅で眠りこける老人を見た。

「酔ってるな。」ブロアの観察は、正確だった。

彼は頭の中で、今度のことを一つ一つ念入りに考えてみた。

”仕事としては簡単だ。しくじるはずがない。さて、見かけがどうか、だな”

ブロアは立ちあがって、窓ガラスに映る自分をしげしげと見た。口ひげを蓄えた顔はちょっと軍人風でもある。表情が乏しく、グレーの目と目の間が、狭かった。

”軍隊で少佐だったということにするか。いや、忘れてた。元軍人の爺さんがいるんだっけ。すぐに見破られてしまうな。南アフリカはどうだろう。うん、その線だな! 南アフリカに関係があるのは、一人もいないし、南アフリカの旅行案内を読んだばかりだから、話の受け答えもばっちりだ”

うまい具合に、植民地生まれには、ありとあらゆる種類、タイプがいる。南アフリカでひと山当てたことにしよう。それなら、どんな場所でも怪しまれることはあるまい。

兵隊島か。ブロアは、子供の頃に見た兵隊島を思いだした。海岸から一マイル沖合いにある。カモメだらけでいかにもプンプン臭いそうな、岩ばかりの島だ。

あんな島に、わざわざ家を建てるかねえ! 天気が悪いと、ひどい所なのだ。しかし、金持ちは物好きだからな。

(青木 久惠訳)


ジグソーパズルの下段のやや右側に、ファイティングポーズをとる正装姿のウィリアム・ヘンリー・ブロアが、赤枠で囲まれている。また、兵隊島に建つ邸宅の玄関の右側にある階段の前で、同じく、正装して、ファイティングポーズをとるウィリアム・ヘンリー・ブロアの姿が見られる。


兵隊島に建つ邸宅の玄関の右側にある階段の前で、
正装して、ファイティングポーズをとるウィリアム・ヘンリー・ブロアの姿が見られる。
<筆者撮影>


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州の沖合いに浮かぶ兵隊島に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた召使と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と召使夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor)を死に至らせたと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年6月26日付ブログで紹介済)」に準えて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、8番目の被害者となる。


Three little soldier boys walking in the zoo; A big bear hugged one and then there were Two.

(3人の子供の兵隊さんが、動物園内を歩いていた。一人が大きな熊に抱き締められて、残りは2人になった。)


東側の石のテラスにおいて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、

大の字になって倒れており、頭を大きな白大理石の固まりで打ち砕かれていた。

それは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の暖炉の上に置かれていた熊の形をした時計だった。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*被害者:ウィリアム・ヘンリー・ブロア

*告発された罪状:ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor)を死に至らせたと告発された。

ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ロンドン商業銀行が襲われた事件の捜査を担当しており、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーを犯人として逮捕。その実績を買われて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、昇進を果たしている。なお、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーは、終身刑となり、1年後にダートムーア刑務所で死亡。

*犯罪発生時期:1928年10月10日


その日の午前中、フィリップ・ロンバードの提案に基づき、

残った3人は、兵隊島の一番高いところから、鏡で日光を反射させて、対岸へ信号を送る努力を続けた。

午後2時になると、腹をすかしたウィリアム・ヘンリー・ブロアは、屋敷へと戻る。

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、そのまま残る。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*死因:熊の形をした時計の落下による頭蓋骨骨折

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人が屋敷に戻ると、東側の石のテラスにおいて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、大の字になって倒れており、頭を大きな白大理石の固まりで打ち砕かれていた。それは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の暖炉の上に置かれていた熊の形をした時計だった。


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