英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。
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| 英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース) |
(26)夕食の席に着く招待客(All the guests at dinner)
午後8時から始まった夕食が終わり、体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne / 体育教師(games mistress)→ 2025年10月21日付ブログで紹介済)とエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)の女性陣が、まず最初に、食堂から応接間へ移動。少しして、男性陣の6人も、応接間に入って来た。
執事のトマス・ロジャーズ(Thomas Rogers → 2025年11月3日付ブログで紹介済)が、熱々のブラックコーヒーを皆に配る。
時計の針が午後9時20分を指したとき、応接間の静けさを破って、突然、「声」が響いた。
その謎の声は、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する。謎の声による告発を聞いた彼ら10人は戦慄した。
(A)エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong / 医師 → 2025年10月31日付ブログで紹介済)
1925年3月14日に、ルイーザ・メアリー・クリース(Louisa Mary Clees / 患者)をしに至らせたと告発された。
(B)エミリー・キャロライン・ブレント
1931年11月5日に、ビアトリス・テイラー(Beatrice Taylor / 使用人の娘)を死に追いやったと告発された。
(C)ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore / 元警部(Detective Inspector)→ 2025年11月2日付ブログで紹介済 )
1928年10月10日に、ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor / 無実の人間)を死に至らせたと告発された。
(D)ヴェラ・エリザベス・クレイソーン
1935年8月11日に、シリル・オギルヴィー・ハミルトン(Cyril Ogilvie Hamilton / 家庭教師をしていた子供)を殺害したと告発された。
(E)フィリップ・ロンバード(Philip Lombard / 元陸軍中尉 → 2025年10月28日付ブログで紹介済)
1932年2月のある日、東アフリカにおいて先住民族21人(21 men, members of an East African tribe)を死に追いやったと告発された。
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| 招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、 謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と使用人夫婦が戦慄する場面- HarperCollins Publishers 社から出ている アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版 (→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。 |
(F)ジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon MacArthur / 退役した老将軍(General)→ 2025年10月30日付ブログで紹介済)
1917年1月14日に、アーサー・リッチモンド(Arthur Richmond / 妻レスリー(Lesley)の愛人だった部下)を故意に死地へ赴かせたと告発された。
(G)アンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston / 遊び好きの上、生意気な青年 → 2025年11月1日付ブログで紹介済)
去年の11月14日に、ジョン・クームズ(John Coombes)とルーシー・クームズ(Lucy Coombes)と言う二人の子供)を殺害したと告発された。
(H)トマス・ロジャーズ
(I)エセル・ロジャーズ(Ethel Rogers → 2025年11月4日付ブログで紹介済)
1929年5月6日に、ジェニファー・ブレイディー(Jennifer Brady / 仕えていた老女)を死に至らせたと告発された。
(J)ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave / 高名な元判事 → 2025年10月20日付ブログで紹介済)
1930年6月10日に、エドワード・シートン(Edward Seton / 皆が無実と確信していた被告)を殺害したと告発された。
謎の声による告発を受けて、茫然自失する10人。
執事のトマス・ロジャーズは、思わず、コーヒーの盆を落としてしまい、凄まじい音が響き渡る。
応接間のドアの外で、料理人のエセル・ロジャーズが丸くなって、床の上に倒れこんだ。フィリップ・ロンバードが、アンソニー・ジェイムズ・マーストンに声を掛けて、2人でエセル・ロジャーズを応接間内に運び込み、ソファーに寝かせる。エドワード・ジョージ・アームストロング医師が、彼女を介抱する。
(13)蓄音機(gramophone)
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| 兵隊島に建つ邸宅の1階にある食堂の隣室に、 招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発するレコードがセットされた 蓄音機が置かれている。 アガサ・クリスティーの原作によると、 蓄音機が置かれているのは、厳密には、応接間の隣室である。 <筆者撮影> |
その後、フィリップ・ロンバードが、応接間の隣室に通じるドアを開けると、応接間との境の壁にピッタリ寄せられるように、テーブルが置かれていた。
そして、テーブルの上には、蓄音機が載っており、ラッパ形の大きな拡声器が付いていた。
この蓄音機にセットされていたレコードが、謎の声による告発を発したのだった。
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事に質問された執事のトマス・ロジャーズは、慌てて弁明する。
「判事さま、わたくしは、お指図に従っただけでございます」
「誰の指図だ」
「オーエンさまでございます」
「そこのところを、くわしく説明してもらおうか。オーエンさんの指図とは - 正確に言って、どういうものだったのか」
「レコードをかけるように、ということでした。レコードは引き出しに入っているからと。わたくしがコーヒーを持って、応接間に入ったところで、家内がレコードを回すことになっておりました」
「なんとも、驚いた話じゃないか」と、判事はつぶやいた。
ロジャーズは叫んだ。
「判事さま、本当でございます。神かけて、うそではございません。あれがどんなものか、わたくしは存じませんでした - これっぽっちも。レコードには、ラベルがついておりました - ですから、音楽だとばかり」
ウォーグレイヴはロンバードを見た。
「曲名が書いてあったのか」
ロンバードはうなずいた。彼は突然、白いとがった歯を見せて、ニヤッと笑った。
「ええ、ありましたよ。<白鳥の歌(Swan Song)>って」
(青木 久惠訳)




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