2023年4月8日土曜日

ヴォーン・エントウィッスル作「スラックストンホールの亡霊」(The Revenant of Thraxton Hall by Vaughn Entwistle) - その3

英国の Titan Publishing Group Ltd. から2014年に出ている
ヴォーン・エントウィッスル作「スラックストンホールの亡霊」における
第2章のタイトルとスラックストンホールの挿絵
(Images : Dreamstime / Funny Little Fish)-
なお、「ロンドンで最も憎まれた男(The Most Hated Man in London)」とは、
シャーロック・ホームズを、ジェイムズ・モリアーティー教授と一緒に、
ライヘンバッハの滝壺へと葬ったアーサー・コナン・ドイルのことを指している。


シャーロック・ホームズは、自分の創造主であるアーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)に対して、微笑んだ。

「さあ、ゲームの始まりだ。(The game is afoot my boy.)」と。


コナン・ドイルが書き物机の上を見ると、「心霊現象研究協会(SPR : Society for Psychical Research)」と言う団体から届いた手紙が消え失せていた。更に、自分の目の前のホームズの姿も、居なくなっていた。

どうやら、コナン・ドイルは、執筆している間に、眠ってしまったようだった。書き物机の上の原稿用紙には、「Elementary」という文字が、ずーっと書き続けられていた。

驚いたことに、翌朝、「心霊現象研究協会」からの招待状が、実際に、朝一番で彼宛に届いたのである。


コナン・ドイルが、ロンドンの高級住宅街メイフェア地区(Mayfair)内にある「xxxxx クレッセント42番地(42 xxxxx Crescent)」を再訪するべく、自宅があるロンドン郊外のサウスノーウッド(South Norwood)からウォータールー駅(Waterloo Station → 2014年10月19日付ブログで紹介済)へと、午前10時15分の列車で向かう。

ウォータールー駅を出たところで、コナン・ドイルは、友人で、かつ、同業者(作家)でもあるオスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド(Oscar Fingal O’Flahertie Wills Wilde:1854年ー1900年)と出会った。コナン・ドイルから事情を聞いたオスカー・ワイルドは、快く同行を申し出る。そこで、二人は、馬車でメイフェア地区の「xxxxx クレッセント42番地」へと向かった。


ナショナルポートレートギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
オスカー・ワイルドの写真の葉書
(Napoleon Sarony / 1882年 / Albumen panel card
305 mm x 184 mm) 


目的地に着いた二人であったが、「xxxxx クレッセント42番地」は、もぬけの殻で、コナン・ドイルが昨日会った謎の女性(レディー・ホープ・スラックストン(Lady Hope Thraxton))は、既に居なかった。

丁度そこへ、彼女に短期間家を貸していたジェニングス夫妻(Mr. & Mrs. Jennings)が、使用人達と共に、出かけていたイタリアのトスカーナ地方から帰宅。彼らによると、当該女性は、急な家庭の事情により、当初の予定を繰り上げて、退去した、とのことだった。


ジェニングス夫妻と一緒に居た不動産屋(Realtor)のアルフレッド・チーサム(Alfred Cheetham)より、コナン・ドイルは、謎の女性からの手紙を渡される。その手紙には、「I had a peculiarly vivid dream. I saw you in a coffin, your hands folded upon your chest.(中略)You were dead.」と書かれていた。

これ以上、本件に関与した場合、降霊術者(spiritualist medium)である謎の女性による予言通り、彼女だけではなく、コナン・ドイルも、その命を失うということなのだろうか?


不動産屋から渡された謎の女性の手紙の内容を見たオスカー・ワイルは、コナン・ドイルに対して、更なる同行を申し出た。

2週間後、コナン・ドイルとオスカー・ワイルドの二人は、列車の1等車に乗って、ランカシャー州(Lancashire)に所在するスラックストンホール(Thraxton Hall)へと向かうのであった。


列車で北へと向かうコナン・ドイルは、通過するトンネルの中で、トンネルの壁に、ホームズの幻影を再度見かける。自分に対して話しかけるホームズを見て、コナン・ドイルは、思った。

「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」に「最後の事件(The Final Problem)」を発表して、シャーロック・ホームズを、ジェイムズ・モリアーティー教授(Professor Jame Moriarty)と一緒に、スイスのマイリンゲン(Meiringen)にあるライヘンバッハの滝(Reichenbach Falls)の底へと葬ることは、容易だったが、彼の亡霊を葬り去ることは、非常に難しい。(It was easy to kill Sherlock Holmes with the stroke of a pen. However, his ghost was proving considerably more difficult to lay.)」と。


コナン・ドイルとオスカー・ワイルドの二人が向かう先にあるランカシャー州のスラックストンホールにおいて、一体、何が彼らを待ち受けているのだろうか?


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