第32話「雲をつかむ死」が収録された エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 3 ケースの表紙 - サー・デイヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet)が 演じるエルキュール・ポワロ(画面左側)と Sarah Woodward が演じるジェーン・グレイ(画面右側)の二人が、 パリの街角を歩いているシーンが載っている。 |
英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第32話(第4シリーズ)として、1992年1月12日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「雲をつかむ死(Death in the Clouds)」(1935年)の TV ドラマ版の場合、名探偵エルキュール・ポワロがパリ(Le Bourget Airfield)からロンドン(Croydon Airport)へと戻る飛行機の後部区画の搭乗客の一人であるマダム・ジゼル(Madame Giselle - フランス人の金貸し / 本名:マリー・モリソー(Marie Morisot))が殺害された後も、原作とはやや異なる展開が行われていく。
亡くなったマダム・ジゼルの近くの床の上に、毒が塗られた矢が落ちており、彼女はその矢で首を刺されていたことが判明する。更に、ポワロの座席の脇から、小さな吹き矢の筒が発見される。
検死審問において、マダム・ジゼルを殺害した容疑者とされたことに立腹したポワロは、ジェーン・グレイ(Jane Grey)の協力を得て、英国警察のジャップ主任警部(Chief Inspector Japp)とフランス警察のフルニエ警部(Inspector Fournier)と一緒に、捜査を進めていく。
(1)
<原作>
ポワロは、ロンドンとパリの両方で捜査を進めていくが、ロンドン側では、ジャップ主任警部が、また、パリ側では、フルニエ警部が、ポワロの捜査に協力する。
<英国 TV 版>
ジャップ主任警部は、ポワロと一緒に、パリへと出張して、電話を使い、パリからロンドン側の捜査を指揮するとともに、フルニエ警部を使い、パリ側の捜査も指揮する。そのため、ジャップ主任警部の出番は、原作対比、かなり増えているが、逆に、その分、フルニエ警部の出番は、限定的になっている。
フルニエ警部が不在の時に、彼の部屋へと入って来たジャップ主任警部は、彼の椅子にどっかりと腰を下ろしてしまう。部屋へと戻って来たフルニエ警部が、自分の椅子に座っているジャップ主任警部を見て、やや不満気な顔をしつつ、「Inspector Japp」と話し掛ける。それを聞いたジャップ主任警部は、フルニエ警部に対して、すかさず「Chief Inspector !」と答えて、「自分の方が偉いんだ!」ということを暗に伝える場面が描かれている。その後、ジャップ主任警部は、公然とフルニエ警部の部屋を自分のオフィスのように使用し始め、更に、フルニエ警部も自分の部下のように使い始め、フルニエ警部自身も、やむを得ず、従っている場面も追加されている。
(2)
<原作>
シシリー・ホーバリー(Cicely Horbury - 伯爵夫人)のメイドを務めるマドレーヌ(Madeleine)で、後にマダム・ジゼルの別居中の娘であることが判明するアン・モリソー(Anne Morisot)は、米国人か、カナダ人の男性と結婚していることを、ポワロは、彼女から知らされる。
原作上、彼女が結婚した場所と時期は、以下の通り。
(場所)ロッテルダム(Rotterdam)
(時期)1ヶ月前
<英国 TV 版>
英国 TV 版の場合、彼女が結婚した場所と時期は、以下の通り。
(場所)パリ
(時期)ポワロ / ジャップ主任警部 / フルニエ警部による捜査が始まった後
(3)
<原作>
マダム・ジゼルの別居中の娘であるアン・モリソーが、シシリー・ホーバリーのメイドを務めるマドレーヌと同一人物であることが判明する流れは、以下の通り。
(a)殺害されたマダム・ジゼルには、別居中の娘アン・モリソーが居て、彼女の財産を相続する立場にあることが判明。
(b)ポワロが、アン・モリソーと面談。
(c)アン・モリソーとの面談後、ポワロは、「彼女には、以前会ったことがあるような気がする。」とコメント。
(d)ジェーン・グレイの「爪を鑢で削る必要がある。」という発言を受けて、ポワロは、「アン・モリソーとシシリー・ホーバリーのメイドであるマドレーヌは、同一人物である」ことに気付く。
(e)ポワロは、フルニエ警部に対して、アン・モリソーを早急に探すように指示。
<英国 TV 版>
マダム・ジゼルの別居中の娘であるアン・モリソーが、シシリー・ホーバリーのメイドを務めるマドレーヌと同一人物であることが判明する流れは、以下の通り。
(a)パリで結婚式を挙げたアン・モリソーが、フルニエ警部の元を訪れて、マダム・ジゼルの財産相続を要求(「I’ve come to claim my inheritance.」と発言している)。
(b)パリに到着したポワロとジャップ警部の二人が、フルニエ警部を訪問した際、フルニエ警部から上記の話を聞くが、
・アン・モリソーの住所を教えてもらっていない。
・それ以降、アン・モリソーは戻って来ていない。
という事実を知らされる。
(c)ジェーン・グレイを伴って、マダム・ジゼルのフラットを訪れたポワロは、マダム・ジゼルのメイドから、「アン・モリソーが、マダム・ジゼル(本名:マリー・モリソー)の娘である」ことを知らされる。
(d)アン・モリソーが、フルニエ警部を再訪。ジャップ主任警部と一緒に、アン・モリソーと面談したポワロは、彼女に対して、「どこかで会ったことはないか?」と尋ねたところ、彼女は、「そんなことはない。」と答えた。
(e)ジェーン・グレイの「爪を鑢で削る必要がある。」という発言を受けて、ポワロは、「アン・モリソーとシシリー・ホーバリーのメイドであるマドレーヌは、同一人物である」ことに気付く。
(f)ポワロは、ジャップ主任警部を連れて、アン・モリソーが滞在しているホテルへと急いで駆け付けたところ、ホテルの受付係から、「彼女は、米国人の男性と一緒に、列車で英国へと向かった。」と知らされる。
(4)
<原作>
フルニエ警部による捜査の結果、ブローニュ(Boulogne)行きの船上(boat-train)で、アン・モリソーの遺体を発見。彼女の遺体の側には、毒薬が入った瓶が置かれており、彼女は自分で毒を飲んだように思われた。
<英国 TV 版>
フランス警察が、パリ北駅(Gare du Lord)発の列車を停めて、列車内を調べたところ、アン・モリソーの遺体を発見。彼女の遺体の傍には、毒薬が入った瓶が落ちており、彼女は自殺したように思われた。
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