2023年4月19日水曜日

拳銃を持ったシャーロック・ホームズ - その7

サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)が執筆したシャーロック・ホームズシリーズにおいて、拳銃を持ったシャーロック・ホームズの挿絵につき、紹介したい。

また、ホームズに加えて、ジョン・H・ワトスンや他の登場人物が拳銃を持った挿絵も掲載する。


今回は、ホームズシリーズの4番目で、かつ、最後の長編である「恐怖の谷(The Vallery of Fear)」に収録されている挿絵に関して、紹介する。


ホームズシリーズの第1短編集「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1892年)、第2短編集「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」(1893年)、第3長編「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」1901年8月ー1902年4月)、そして、第3短編集「シャーロック・ホームズの帰還(The Return of Sherlock Holmes)」(1905年)まで挿絵を担当していた挿絵画家であるシドニー・エドワード・パジェット(Sidney Edward Paget:1860年ー1908年)は、1908年1月28日に亡くなったため、第4長編「恐怖の谷」の挿絵は、他のイラストレーターによる挿絵となっている。


(14)「恐怖の谷」


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第3章「バールストンの惨劇(The Tragedy of Birlstone)」
1月6日の夜11時半頃、
サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)の
バールストン館(Birlstone House)に住む
ジョン・ダグラス(John Douglas)と思われる男性が、書斎において、
銃身を切り落として短くした散弾銃で、
至近距離から頭を撃ち抜かれて、惨殺される事件が発生する。
顔が滅茶滅茶になっていた被害者は、
寝間着とピンクのガウンを羽織っているだけで、
足には室内スリッパを履いて、
部屋の真ん中に、仰向けに倒れていた。
被害者を除くと、画面左側から、
ジョン・ダグラスの知人であるセシル・ジェイムズ・バーカー(Cecil James Barker)、
サセックス州警察(Sussex Constabulary)の
ウィルスン巡査部長(Sergeant Wilson)、
そして、開業医(general practiioner)のウッド医師(Dr. Wood)。
死体の胸元辺りに、銃身を切り落として短くした散弾銃が置かれている。
挿絵:フランク・ワイルズ

「恐怖の谷」は、ホームズシリーズの長編小説4作のうち、最後に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1914年9月号から1915年5月号まで掲載された。また、米国でも、「ニューヨーク トリビューン(The New-York Tribune)」の日曜版に連載された。


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第4章「暗闇(Darkness)」
サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)の
バールストン館(Birlstone House)に到着した
シャーロック・ホームズは、
死体の右前腕にある非常に奇妙な印(丸の中に三角がある焼き印)に興味を示して、
ジョン・ダグラス(John Douglas)の執事であるエイムズ(Ames)に尋ねる
被害者を除くと、画面左側から、ホームズ、
スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部(Inspector Alec MacDonald)、
サセックス州刑事部長(chief Sussex detective)のホワイト・メイスン(White Mason)、
執事のエイムズ、そして、ジョン・H・ワトスン。
死体を間に挟んで、ホームズの反対側に、
銃身を切り落として短くした散弾銃が置かれている。
挿絵:フランク・ワイルズ

「恐怖の谷」は、第1長編「緋色の研究(A Study in Scarlet)」(1887年)や第2長編「四つの署名(The Sign of the Four)」(1890年)と同様に、2部構成を採っており、第1部には、サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)のバールストン館(Birlstone House)に住むジョン・ダグラス(John Douglas)と思われる男性が、銃身を切り落として短くした散弾銃によって、至近距離から頭を撃ち抜かれて、惨殺された事件の発生から、ホームズの推理により、事件の解決に至るまでが含まれて、また、第2部では、事件の背景となった「恐怖の谷」と呼ばれる米国ペンシルヴァニア州ヴァーミッサ峡谷(Vermissa Valley)にある炭鉱街で発生した事件が語られている。


第1部において発生した事件の黒幕として、ホームズの終生のライヴァルで、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)が暗躍している。


第2部において語られる事件について、コナン・ドイルは、米国ペンシルヴァニア州の炭鉱で起きた労働闘争とピンカートン探偵社(Pinkerton agent)の活躍を描いた「モリー・マグワイヤーズと探偵達(The Mollie Maguires abd the Detectives)」(1877年)を題材にしている可能性が高いと言われている。


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第7章「解決(The Solution)」
サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)の
バールストン館(Birlstone House)の主人である

ジョン・ダグラス(John Douglas)による告白が続く
問題の夜、彼が寝間着の上にガウンを羽織って、
邸内の見回りに行った際、書斎において、
米国から彼を追ってきたテッド・ボルドウィン(Ted Baldwin)に襲われる。
テッド・ボルドウィンは、コートから銃を取り出すと、撃鉄を起こした。
ジョン・ダグラスは、相手が発砲する前に、その銃身を握り締めると、
二人は、銃を奪い合って、格闘した。
画面左側の人物がテッド・ボルドウィンで、
画面右側の人物がジョン・ダグラス。
挿絵:フランク・ワイルズ

第1部 / 第2部ともに、人物の入れ替わりトリックが鍵となるが、本作品がベースとなり、人物の入れ替わりトリックは、ミステリー用語として、「バールストン ギャンビット(Birlstone Gambit)」と呼ばれるようになった。


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