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英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている アガサ・クリスティー作「杉の柩」のペーパーバック版の表紙 - 棘がある薔薇の茎を背景にした表紙が、 裁判において用いられる儀礼用の小型の木槌(gavel)の形に切り取られている。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1940年に発表した「杉の柩(Sad Cypress)」の場合、婚約中のエリノア・カーライル(Elinor Carlisle)とロデリック・ウェルマン(Roderick Welman)の2人が、ロンドンで生活を送っていルところから、物語が始まる。エリノア・カーライルは、金持ちの未亡人であるローラ・ウェルマン(Mrs. Laura Welman)の姪で、ロデリック・ウェルマンは、ローラ・ウェルマンの亡き夫の甥に該る。
裕福な叔母ローラ・ウェルマンは、現在、寝たきりの状態で、彼女が亡くなった場合、エリノア・カーライルとロデリック・ウェルマンの2人には、かなりの額の財産が入る予定で、彼らは、ローラ叔母の遺産が入り次第、結婚するつもりでいた。
そんな時、「寝たきりの未亡人の財産が、若い女に狙われている。」と言う匿名の手紙が、エリノア・カーライルの元に届く。
エリノア・カーライルとロデリック・ウェルマンの2人は、本気で心配した訳ではないが、見舞いのため、ローラ叔母が住むハンターベリー(Hunterbury)の屋敷へと向かった。
ローラ叔母は、発作の後遺症で左半身が麻痺しており、エリノア・カーライルが彼女と話をしていると、そこにローラ叔母を治療している若いピーター・ロード医師(Dr. Peter Lord)がやって来る。自分の患者の美しい姪に初めて会ったピーター・ロード医師は、思わず赤面する。
一方、その頃、外を散歩していたロデリック・ウェルマンは、ローラ叔母のお気に入りで、ウェルマン家の門番の娘であるメアリー・ジェラード(Mary Gerrard)に出会い、その美しさに心を奪われてしまう。
その翌週、エリノア・カーライルとロデリック・ウェルマンの2人は、ピーター・ロード医師より、ローラ叔母が再び発作に襲われたとの連絡を受け、ハンターベリーの屋敷へと急いだ。
死期が近いことを悟ったローラ叔母は、エリノア・カーライルに対して、「(お気に入りの)メアリー・ジェラードのために、遺言書に追加条項を加えたいので、翌朝、弁護士を呼んでほしい。」と強く希望した。
ピーター・ロード医師によると、その日、ローラ叔母の容態は大丈夫な筈であったが、翌朝、ローラ叔母は、眠ったまま、亡くなっていた。
ローラ・ウェルマンを看護していたジェシー・ホプキンズ看護婦(Nurse Jessie Hopkins)は、持って来た筈のモルヒネがないことに気付く。
また、ローラ・ウェルマンの弁護士であるセドン(Mr. Seddon)は、彼女が遺言書を作成していなかったことを告げる。
その結果、唯一の血縁者であるエリノア・カーライルが、ローラ叔母の全財産を相続することになった。その一方で、ロデリック・ウェルマンが、メアリー・ジェラードに対する想いを明らかにしたため、エリノア・カーライルとロデリック・ウェルマンの婚約は、白紙となってしまう。
ジェシー・ホプキンズ看護婦の助言を受けたメアリー・ジェラードは、ニュージーランドに居る伯母に財産を遺す遺言書を作成する。また、エリノア・カーライルも、ロデリック・ウェルマンに全財産を遺す遺言書を作成した。
ロデリック・ウェルマンが居ないハンターベリーの屋敷に住む気になれないエリノア・カーライルは、屋敷を売ることに決めた。
約1ヶ月後、ハンターベリーの屋敷の買い手がついたので、エリノア・カーライルは、引き渡しの準備と家具の整理のために、屋敷を訪れた。また、メアリー・ジェラードも、ジェシー・ホプキンズ看護婦と一緒に、門番小屋の片付けに来ていた。
エリノア・カーライルの心中には、メアリー・ジェラードに対する嫉妬と憎しみが渦巻いていたが、表向きは礼儀正しさを崩さず、メアリー・ジェラードとジェシー・ホプキンズ看護婦の2人を、昼食(お茶とサンドウィッチ)に誘った。ところが、エリノア・カーライルがつくった魚肉ペーストのサンドウィッチを食べたメアリー・ジェラードが、昼食後間もなく、急に苦しんで、息を引き取ってしまったのである。
その結果、エリノア・カーライルは、メアリー・ジェラードに対して、モルヒネを盛った疑いで、警察に逮捕される。
ピーター・ロード医師は、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)の元を訪れると、「エリノア・カーライルが無実であることを立証してほしい。」と依頼するのであった。
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| エルキュール・ポワロは、 ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。 <筆者撮影> |
(69)魚肉ペースト(練りもの)のサンドウィッチ(plate of fish-paste sandwiches)
ハンターベリーの屋敷の買い手がついたエリノア・カーライルは、引き渡しの準備と家具の整理のために、屋敷を訪れた。
メアリー・ジェラードに対する嫉妬と憎しみが渦巻いていたものの、エリノア・カーライルは、表向きは礼儀正しさを崩さず、門番小屋の片付けに来ていたメアリー・ジェラードとジェシー・ホプキンズ看護婦の2人を、昼食(お茶とサンドウィッチ)に誘う。ところが、エリノア・カーライルがつくった魚肉ペーストのサンドウィッチを食べたメアリー・ジェラードが、昼食後間もなく、急に苦しんで、息を引き取ってしまったのである。メアリー・ジェラードの死因は、モルヒネ中毒だった。
メアリー・ジェラードが摂取することになったモルヒネは、何に入っていたのか?エリノア・カーライルが準備した魚肉ペーストのサンドウィッチなのか?(→ 3人とも魚肉ペーストのサンドウィッチを食しているが、エリノア・カーライルとジェシー・ホプキンズ看護婦の2人には、異常はなかった。)それとも、ジェシー・ホプキンズ看護婦が淹れた紅茶か?(→ メアリー・ジェラードとジェシー・ホプキンズ看護婦の2人は紅茶を飲んだが、エリノア・カーライルは紅茶を飲まなかった。)
(70)棘のない薔薇(thornless rose)
メアリー・ジェラードがモルヒネ中毒により亡くなる事件が発生した当日、ハンターベリーの屋敷の台所において、ジェシー・ホプキンズ看護婦が袖のカフスを外して、薬缶の端を洗い、桶にあけた際、エリノア・カーライルは、ジェシー・ホプキンズ看護婦の手首に何かに刺された痕を見つけた。
エリノア・カーライルの問い掛けに対して、青ざめた顔をしていたジェシー・ホプキンズ看護婦は、「門番小屋の側にある薔薇の垣根で、棘に刺されたんですが、直ぐに抜いてしまいました。」と口早に答えた。
メアリー・ジェラードをモルヒネを盛って殺害した容疑で、エリノア・カーライルに対する裁判が始まった後、エルキュール・ポワロとピーター・ロード医師の2人が確認してみると、門番小屋の側にあったのは、「ゼフィライン(Zephirine Rose)」と言う薔薇で、棘がない品種だったのである。
(71)裁判官(judge)
メアリー・ジェラードをモルヒネを盛って殺害した容疑で、エリノア・カーライルは訴追されるが、その裁判を担当したのが、べディングフェルド裁判官(Mr. Judge Beddingfeld)だった。






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