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| ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く ミス・マープルシリーズの短編集「ミス・マープル最後の事件簿」の一場面 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が亡くなった後の1979年に英国で出版された短編集「ミス・マープル最後の事件簿(Miss Marple’s Final Cases)」には、ミス・ジェーン・マープルが登場する短編6作とその他の短編2作の合計8作が収録された。
なお、米国において、本短編集に収録された作品のほとんどが雑誌に掲載済だったこともあり、当初、本短編集は、米国では出版されなかった。
短編集「ミス・マープル最後の事件簿」には、以下の8編が収録されている。
・「教会で死んだ男(Sanctuary)」
・「奇妙な冗談 / 風変わりないたずら(Strange Jest)」→ 米国(1941年)と英国(1944年)の雑誌に掲載された際の原題は、「The Case of the Buried Treasure」
・「昔ながらの殺人事件 / 巻尺殺人事件(Tape-Measure Murder)」→ 英国(1942年)の雑誌に掲載された際の原題は、「The Case of the Retired Jeweller」
・「管理人事件 / 管理人の老婆(The Case of the Caretaker)」
・「申し分のないメイド / 申し分のない女中(The Case of the Perfect Maid)」→ 英国(1942年)の雑誌に掲載された際の原題は、「The Perfect Maid」
・「ミス・マープルの思い出話 / ミス・マープルは語る(Miss Marple Tells a Story)」→ 英国(1935年)の雑誌に掲載された際の原題は、「Behind Closed Doors」
・「仄暗い鏡の中に / 暗い鏡のなかに(In a Glass Darkly)」
・「洋裁店の人形(The Dressmaker’s Doll)」
なお、「仄暗い鏡の中に / 暗い鏡のなかに」と「洋裁店の人形」については、ミス・マープルシリーズに属する作品ではない。
1954年11月、アガサ・クリスティーは、自分の生まれ故郷であるデヴォン州(Devon)のチャーストン フェラーズ(Churston Ferrers)にあるセントメアリー聖母教会(St. Mary the Virgin Church)に寄付をするため、ある中編を執筆して、その印税収入を充てようとした。そこで、彼女は自分の住まいがあるグリーンウェイ(Greenway)を小説の舞台にした。それが「エルキュール・ポワロとグリーンショア屋敷の阿房宮(Hercule Poirot and the Greenshore Folly → 2014年9月27日付ブログで紹介済)」で、60年の歳月を経て、2014年に初めて出版された。殺人事件が発生する小説の舞台に実在の場所である「グリーンウェイ」をそのまま使用できないので、「グリーンショア」と変更したものと思われる。なお、この中編は、雑誌掲載には難しい長さであったため、残念ながら、未発表のままに終わっている。
上記の中編の代わりに、アガサ・クリスティーは、ミス・マープルを主人公とした短編「グリーンショウ氏の阿房宮(Greenshaw's Folly)」を教会に寄付している。
アガサ・クリスティーは、この中編を長編にして、2年後の1956年に「死者のあやまち(Dead Man's Folly)」を発表している。
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| 2014年に英国の HarperCollins Publishers 社から出版された 「エルキュール・ポワロとグリーンショア屋敷の阿房宮」のハードカバー版本体の見開き画 (By Mr. Tom Adams) |
上記を受けて、現在、「ミス・マープル最後の事件簿」には、エルキュール・ポワロを探偵役とした中編 / 長編からミス・マープルを主人公に変更した短編「グリーンショウ氏の阿房宮」を含めた9編が収録されている。
(66)ベーコン用豚肉(gammon)
「奇妙な冗談 / 風変わりないたずら」において、人気の舞台女優ジェーン・ヘリアー(Jane Helier)が、あるカップルに対して、ミス・マープルを紹介する。
ジェーン・ヘリアーの友人であるチャーミアン・ストラウド(Charmian Stroud)は、エドワード・ロシター(Edward Rossiter)と婚約中。2人の大伯父に該るマシュー・ストラウド(Matthew Stroud)が最近亡くなった。彼は、死の直前に謎の言葉を残していた。大伯父の遺産が屋敷の何処かに隠されているようだが、2人が大伯父の隠し財産を見つけるべく、屋敷中を探したものの、何も見つからなかった。
そこで、2人は、ジェーン・ヘリアーを通じて、ミス・マープルに助けを求めたのである。
物語中、ミス・マープルが、焼きハム(baked ham)のレジピを読む場面が出てくる。食材として、ベーコン用豚肉とほうれん草等が必要だった。
(67)巻尺(tape measure)
「昔ながらの殺人事件 / 巻尺殺人事件」の場合、ミス・マープルが住むセントメアリーミード村(St. Mary Mead)において、殺人事件が発生する。
宝石商アーサー・スペンロウ(Arthur Spenlow)の妻スペンロウ夫人(Mrs. Spenlow)が、夫妻の自宅の居間の床の上に倒れているのが発見された。首を何かベルトのようなもので絞められて殺されていたのである。
彼女の絞殺死体を見つけたのは、彼女の家を訪ねて来た仕立て女のポリット(Miss Politt)と戸口で声を掛けたアマンダ・ハートネル(Miss Amanda Hartnell → 2024年8月16日付ブログで紹介済)の2人だった。
被害者の夫アーサー・スペンロウが冷静過ぎる態度を示したため、疑いの目が彼に向けられる。アーサー・スペンロウは、「午後、ミス・マープルに電話で呼ばれた。」と言って、アリバイを訴えるが、ミス・マープルには、彼に電話をした覚えがなかった。
警察はアーサー・スペンロウを疑っているが、彼のことを気に入っているミス・マープルは、事件の真相を調べ始める。
ミス・マープルが調べた結果、スペンロウ夫人の絞殺に使用された凶器は、巻尺だった。となると、彼女を殺害した犯人は、自ずと明らかだった。
(68)ハッカ入りキャンディー棒(peppermint stick)
「申し分のないメイド / 申し分のない女中」の場合、ミス・マープルのメイドであるエドナ(Edna)が、彼女の従姉妹で、同じようにメイドをしているグラディス(Gladys)のことで、ミス・マープルに相談する。
グラディスは、オールドホール(Old Hall)に住むラヴィニア・スキナー(Lavinia Skinner:姉)とエミリー・スキナー(Emily Skinner)のところで奉公していたが、宝石を盗んだと疑われて、暇を出されてしまった。それが更に悪い評判を呼んで、グラディスは、新しい奉公先を見つけられない、とのことだった。
エドナから相談を受けたミス・マープルは、早速、手助けを始めるが、スキナー姉妹は、グラディスよりも優秀で、申し分のないメイドを既に雇っていたのである。
ミス・マープルは、ある人物の指紋を採取するために、ハッカ入りキャンディー棒を使用している。








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