2026年4月6日月曜日

ウィリアム・シェイクスピア作戯曲「マクベス」(’Macbeth’ by William Shakespeare)

ウィリアム・シェイクスピア 作「マクベス」に登場する3人の魔女は、
グラミスの領主で、
スコットランドの将軍であるマクベスに対して、
「コーダーの領主」、そして、「いずれ、王となるお方」と呼びかける一方、
同じく、スコットランドの将軍であるバンクォーに対しては、
「あなたは王にはなれないが、あなたの子孫が王になる。」と予言すると、姿を消すのであった。
(英国の The Orion Publishing Group Ltd. より2020年に発売されたジグソーパズル
「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」から抜粋。)
<筆者撮影>


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1938年に発表した「ポワロのクリスマス(Hercule Poirot’s Christmas - 彼女が執筆した長編としては、第24作目に、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編としては、第17作目に該る)」の場合、序文に彼女から義兄のジェイムズ(James)に対する献辞があるが、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)による戯曲「マクベス(Macbeth)」の有名なセリフである


“Yet who would have thought the old man to have had so much blood in him?”

「あの老人にこんなにたくさんの血があったなどと、誰が考えたことでしょう?」


が、その序文の前に掲げられている。


このように、有名な文章や詩作を引用して、小説の最初に掲げたものを「エピグラフ(epigraph)」と呼び、通常、物語の内容を暗示したり、あるいは、物語のテーマに繋がるような文章や詩作が使用されている。


英国の HarperCollinsPublishers 社から以前に出版されていた
アガサ・クリスティー作「ポワロのクリスマス」ペーパーバック版の表紙 -
ゴーストンホールの2階の「密室」状態の自室において、
喉を切り裂かれて惨殺された当主のシメオン・リーを暗示するように、
彼の部屋のドアが表紙に描かれている。


アドルスフィールドのロングデイルにある屋敷ゴーストンホールの当主で、大富豪の老人であるシメオン・リー( Simeon Lee - 冷酷で横暴な性格)が、クリスマスに、不仲となって、方々に住んでいる自分の家族全員をゴーストンホールに呼び集めた上、彼らを色々と動揺させて楽しむと言う新しい気晴らしを思い付く。

ところが、クリスマスイヴの日(12月24日)に、自室において、自分が惨殺されてしまう。

シメオン・リーの惨殺死体を発見した家族の一人であるリディア・リー(Lydia Lee - シメオン・リーの長男アルフレッド・リー(Alfred Lee)の妻)が、その場において、思わず、この有名なセリフを口走るのである。


ナショナルポートレートギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
ウィリアム・シェイクスピアの肖像画の葉書
(Associated with John Taylor
 / 1610年頃 / Oil on panel
552 mm x 438 mm)


ウィリアム・シェイクスピア作の悲劇「マクベス」(1606年)は、全5幕で構成されている。

「マクベス」は、実在したスコットランド王のマクベス(Macbeth 在位期間:1040年-1057年)をモデルにしていると考えられている。


「マクベス」は、「ハムレット(Hamlet)」(1600年ー1601年)、「オセロー(Othello)」(1603年ー1604年)、そして、「リア王(King Lear)」(1605年ー1606年)と並ぶウィリアム・シェイクスピアの四大悲劇の一つで、その中では最も短い作品である。


「マクベス」については、1611年4月にグローブ座(Globe Theatre → 2023年5月8日付ブログで紹介済)で上演されたのが、現存する最古の記録となっている。


ジグソーパズルの左下の部分に、「グローブ座」が描かれている。
なお、このグローブ座は、現代に復元された「シェイクスピアズ グローブ」で、
ウィリアム・シェイクスピアが座付き劇作家として在籍していた
劇団「宮内大臣一座」が1599年に建てた「グローブ座」の姿とは、異なっている。
(英国の The Orion Publishing Group Ltd. より2020年に発売されたジグソーパズル
「シェイクスピアの世界」から抜粋。)
<筆者撮影>


<第1幕>

スコットランド軍は、反乱軍とノルウェー軍の連合軍を打ち破り、大勝利を挙げる。

スコットランドの将軍であるマクベス(Macbeth - グラミスの領主(Thane of Glamis))とバンクォー(Banquo)が、スコットランド国王ダンカン(Duncan)の陣営へと戻る途中、荒野において、3人の魔女(Three Witches)に出会う。魔女達は、マクベスに対して、「コーダーの領主(Thane of Cawdor)」、そして、「いずれ、王となるお方」と呼びかける一方、バンクォーに対しては、「あなたは王にはなれないが、あなたの子孫が王になる。」と予言すると、姿を消す。


コーダー城(Cawdor Castle → 2023年11月17日付ブログで紹介済)の外観 -

コーダー城は、実在する城で、

スコットランド(Scotland)ハイランド州(Highland)のインヴァネス(Inverness)近郊に位置する

コーダー村(Cawdor)内に所在している。

しかし、史実は、ウィリアム・シェイクスピア作「マクベス」とは異なり、

同戯曲がモデルにしたスコットランド王のマクベスが実在した11世紀時点で、

コーダー城は、まだ建設されていなかった。

コーダー城が実際に建設されたのは、15世紀で、

コーダーの領主であるカルダー家(Calder Family)によってである。

<筆者撮影>


すると、そこにダンカン国王の使者が到着して、武勲により、マクベスがコーダーの領主に任ぜられたことを伝えた。マクベスとバンクォーの2人は、魔女の予言通りになったことに驚く。そして、マクベスは、心の中で、王となると言う予言も現実となるのではないかと、秘かに希望を膨らませる。

陣営へと戻ったマクベスとバンクォーに対して、ダンカン国王は、2人の功績を讃えるが、自分の長男である王子マルカム(Malcolm)を王位継承者に定める。それを聞いたマクベスは、魔女達の予言の実現を危ぶみ、ある決意をするのであった。


<第2幕>

夫から魔女達の予言の話を聞いたマクベス夫人(Lady Macbeth)に唆されたマクベスは、ダンカン国王の暗殺を企てる。

マクベス夫人が、ダンカン国王の部屋付きの従者達に対して、薬を入れた酒を飲ませて、眠らせた後、マクベスが、ダンカン国王を短剣で殺害する。

翌朝、ダンカン国王の死体が発見されると、その混乱に乗じて、マクベスは、部屋付きの従者達を斬殺し、その口を封じた上で、彼らをダンカン国王の殺害犯だと報告した。

父王を殺されて、自分の命も危ういと恐れた長男のマルカム王子はイングランドへ、そして、次男のドナルベイン王子(Dobalbain)はアイルランドへと逃亡する。その結果、ダンカン国王を殺害した真の犯人の嫌疑が逃亡した2人の王子にふりかかることになり、マクベスが次のスコットランド国王に指名されるのであった。


<第3幕>

魔女達の予言通り、スコットランド国王の座に就いたマクベスであったが、魔女達がバンクォーに告げた予言が実現することを恐れ、バンクォーと彼の息子であるフリーアンス(Fleance)に対して、暗殺者を放った。バンクォーは暗殺できたものの、フリーアンスは取り逃がしてしまう。

貴族達との宴会の席において、その報告を聞いたマクベスは、ふと見ると、バンクォーの亡霊も宴会に列席していることに気付き、恐怖する。そして、夫を唆して、ダンカン国王を殺害させたマクベス夫人も、次第に不安に苛まれて行くのであった。


こうして、グラミスの領主で、将軍のマクベスが、妻と謀り、主君であるダンカン国王を暗殺して、王位に就いたものの、魔女達による予言の内容を恐れ、次第に錯乱して、暴君化する。

そして、最後は、マクベスは、イングランドへと亡命したために、妻子を殺害されたファイフの領主(Thane of Fife)であるマクダフ(Macduff)と父王を殺害されたマルカム王子による復讐劇により、命を失うのである。


テイト・ブリテン美術館
(Tate Britain → 2018年2月18日付ブログで紹介済)で購入した

19世紀後半から20世紀前半にかけて、
主にパリとロンドンで活動した米国人の画家である
ジョン・シンガー・サージェント
(John Singer Sargent:1856年ー1925年
→ 2023年7月28日 / 8月12日付ブログで紹介済)作
「マクベス夫人を演じるエレン・テリー
(Ellen Terry as Lady Macbeth
→ 2023年7月31日 / 8月3日付ブログで紹介済)」

(1889年)
Oil paint on canvas
221 cm x 114.3 cm
Purchased by Sir Joseph Duveen in 1906


「マクベス」において、「あの老人にこんなにたくさんの血があったなどと、誰が考えたことでしょう?」と言う有名なセリフは、マクベス夫人が発しているため、「ポワロのクリスマス」においても、女性であるリディア・リー(シメオン・リーの長男アルフレッド・リーの妻)に割り振られたものと思われる。


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