英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から 2020年に刊行されている Pushkin Vertigo シリーズの一つである 横溝正史作「犬神家の一族」の裏表紙 (Cover design by Anna Morrison) |
194x年(昭和2x年)の2月、那須(Nasu)湖畔の本宅において、信州財界の大物(one of the leading businessmen of the Shinshu region)である犬神佐兵衛(Sahei Inugami)が、81歳の生涯を終えた。
犬神佐兵衛は、裸一貫の身から事業を興して、犬神グループ(Inugami Group)を創設すると、グループの中核となる製糸業で、莫大な資産を築き、日本の生糸王(Silk King of Japan)と称されるまでになっていた。
同年の10月18日、私立探偵(private investigator)の金田一耕助(Kosuke Kindachi)が、東京から那須湖畔を訪れた。
彼が那須湖畔を訪れたのは、古館法律事務所(Furudate Law Office)に勤務する若林豊一郎(Toyoichiro Wakabayashi)から、「近いうちに、犬神家に容易ならざる事態が起きそうだ。そこで、那須へ来て、調査してほしい。そして、容易ならざる事態をなんとか未然に防いでほしい。」と書かれた手紙を受け取ったからである。
那須ホテル(Nasu Inn)に宿泊した金田一耕助は、早速、電話で若林豊一郎に連絡をとった。
若林豊一郎が那須ホテルにやって来るのを待つ間、金田一耕助が那須湖越しに犬神家の邸宅を望んでいると、野々宮珠世(Tamayo Nonomiya)がボートで湖へと漕ぎ出すのに、目を止めた。
野々宮珠世は、那須神社(Nasu Shrine)の神官である野々宮大弐(Daini Nonomiya)の孫で、野々宮大弐を終生の恩人と慕う犬神佐兵衛によって、犬神家に引き取られて、犬神家に寄寓しているのである。
野々宮珠世が漕ぐボートを、金田一耕助が眺めていると、彼女が乗るボートが突然沈み始めるのを目撃し、慌てて湖畔へと駆け出した。そして、金田一耕助は、野々宮珠世の身辺の世話役で、護衛も務める下男の猿増(Saruzo)と一緒に、沈むボートから彼女を救出する。金田一耕助と猿蔵が調べたところ、野々宮珠世が乗っていたボートには、穴が開けられていたのである。
猿蔵によると、野々宮珠世が命を狙われたのは、3度目とのこと。1度目は、野々宮珠世の寝室のベッドの中に、蛇が入れられており、2度目は、彼女が運転する車のブレーキが効かないように細工されていたのだ。正体不明の何者かが仕掛けた罠に、野々宮珠世は3度も掛かったが、奇跡的に、3度とも、危機一髪で助かった訳だ。
野々宮珠世と猿蔵と別れて、金田一耕助が那須ホテルへ戻ったところ、彼に仕事を依頼してきた古館法律事務所の若林豊一郎が、何者かによって毒殺されていた。
部下の若林豊一郎が殺されたことを知らされ、那須ホテルへと駆け付けた古館法律事務所の所長である古館恭三(Kyozo Furudate)は、金田一耕助に対して、驚くべきことを告げる。それは、若林豊一郎が犬神家の誰かに買収され、古館法律事務所の金庫に保管している犬神佐兵衛の遺言状を盗み見て、買収者にその内容を知らせていたようだった。
部下の若林豊一郎が心配していた通り、犬神家に容易ならざる事態が起きる可能性を懸念した古館恭三は、金田一耕助に、犬神佐兵衛の遺言状の公開の場に立ち会うように依頼したのである。
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