英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から 2024年に刊行されている Pushkin Vertigo シリーズの一つである 高木彬光作「能面殺人事件」の表紙 (Cover design by Jo Walker) |
「能面殺人事件(The Noh Mask Murder)」は、日本の推理作家である高木彬光(Akimitsu Takagi:1920年ー1995年)によるデビュー長編推理小説で、神津恭介(Kyosuke Kamizu)シリーズの第1作目に該る「刺青殺人事件(The Tattoo Murder → 2024年4月21日 / 4月23日 / 4月25日付でブログで紹介済)」(1948年)に続く長編推理小説の第2作である。
「能面殺人事件」は、1949年に雑誌「宝石」に掲載された。
高木彬光の長編推理小説第1作である「刺青殺人事件」は、第二次世界大戦(1939年ー1945年)/ 太平洋戦争(1941年-1945年)後間もない戦後混乱期の社会情勢を背景として、妖艶な刺青である「自雷也(Jiraiya - 蝦蟇の妖術を使う)」、「大蛇丸(Orochimaru - 蛇の妖術を使う)」、そして、「綱出姫(Tsunedahime - 蛞蝓の妖術を使う)」の三すくみによる呪い、日本家屋の浴室内における密室殺人や胴体のない死体等、怪奇趣味に彩られた本格推理小説である。
一方、高木彬光の長編推理小説第2作である「能面殺人事件」の場合、「刺青殺人事件」と同じく、密室殺人を主軸として、昔からの呪いを秘める鬼女(般若)の能面を付けた謎の人物の暗躍、殺人現場に残されたジャスミンの香り、そして、葬儀屋に注文された三つの棺等、怪奇趣味に彩られた本格推理小説となっている。
また、刺青殺人事件」において、探偵役を務めるのは、高木彬光によるシリーズ探偵の一人である神津恭介であるが、「能面殺人事件」では、当初、作者と同じ名前の高木彬光(Akimitsu Takagi)が探偵役を務めるものの、物語の途中で、舞台から姿を消してしまう。その後は、高木彬光のワトスン役だった柳光一(Koichi Yanagi)が、探偵役として、三つの殺人事件にかかる捜査の過程を記録していく形式を採っている。
作者の高木彬光によると、デビュー作の「刺青殺人事件」と第2作目の「能面殺人事件」のどちらを先に執筆するのか、非常に迷った末に、「刺青殺人事件」を選択した、とのこと。
なお、「能面殺人事件」は、第3回探偵作家クラブ賞を受賞している。
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