2024年5月5日日曜日

P・D・ジェイムズ作「女には向かない職業」(An Unsuitable Job for a Woman by P. D. James)- その1

英国の Faber and Faber Limited から
2020年に刊行されている
 
P・D・ジェイムズ作「女には向かない職業」の表紙
Cover design by Faber and Faber Limited /
Cover illustration by Ms. Angela Harding


フィリス・ドロシー・ジェイムズ(Phyllis Dorothy James:1920年ー2014年)は、英国の女流推理作家で、一般に、「P・D・ジェイムズ(P. D. James)」と呼ばれている。

彼女は、1920年にオックスフォード(Oxford)に出生した後、ケンブリッジ女子高校(Cambridge High School for Girls)を卒業し、1949年から1968年まで国民保健サービス(National Health Service : NHS)に勤務。その後、内務省(Home Office)において、Police Department や Criminal Policy Department 等で働き、それらの経験が、彼女の小説に生かされている。

彼女は、それまでの功績が評価され、1991年に一代貴族として、「ホーランドパークのジェイムズ女男爵(Baroness James of Holland Park)」に叙された。


P・D・ジェイムズの主なシリーズは、アダム・ダリグリッシュ(Adam Dalgliesh)シリーズで、彼女の処女作、かつ、シリーズの第1作でもある「女の顔を覆え(Cover Her Face → 2020年11月21日付ブログで紹介済)」(1962年)からシリーズ最終作に該る「秘密(The Private Patient)」(2008年)まで、全14作品が発表されている。

アダム・ダリグリッシュは、初登場時、スコットランドヤードの主任警部(Chief Inspector)であるが、シリーズが進むと、警視(Superintendent)へと昇進する。


P・D・ジェイムズのシリーズには、アダム・ダリグリッシュシリーズの他に、女探偵のコーデリア・グレイ(Cordelia Gray)シリーズがあり、


(1)「女には向かない職業(An Unsuitable Job for a Woman)」(1972年)

(2)「皮膚の下の頭蓋骨(The Skull Beneath the Skin)」(1982年)


の2作品が発表されている。

今回は、コーデリア・グレイシリーズの第1作に該る「女には向かない職業」について、紹介したい。


6月の朝、コーデリア・グレイ(22歳)は、地下鉄オックスフォードサーカス駅(Oxford Circus Tube Station)を出ると、キングリーストリート(Kingly Street)へ入り、探偵事務所(Detective Agency)へと急いでいた。

彼女は、地下鉄ベーカールーライン(Bakerloo Line)に乗り、テムズ河(River Thames)の南岸から地下鉄オックスフォードサーカス駅へと向かったが、ランベスノース(Lambeth North)の辺りで地下鉄の故障に見舞われて、出勤に30分遅れていたのである。


実は、コーデリア・グレイは、若輩ながら、バーナード・G・プライド(Bernard G. Pryde)と一緒に、プライド探偵事務所(Pryde’s Detective Agency)の共同パートナーを務めていた。

また、バーナード・G・プライドは、元警察官で、アダム・ダリグリッシュの部下でもあった。


探偵事務所に着いたコーデリア・グレイは、パートナーのバーナード・G・プライドが自殺している現場に遭遇して、驚く。

実は、バーナード・G・プライドは、癌に罹っており、手首を切って、事務所内で自殺していたのである。


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