英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」(1969年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Poirot」の第63話(第12シリーズ)「ハロウィーンパーティー」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の終盤も、以下の違いが見受けられる。
(17)
<原作>
エルキュール・ポワロは、殺人を目撃したのは、本当は、ジョイス・レイノルズ(Joyce Reynolds)ではなく、ミランダ・バトラー(Miranda Butler)だと推理する。そして、ポワロは、アリアドニ・オリヴァー(Ariadne Oliver)に連絡をとり、「ミランダ・バトラーと母親のジュディス・バトラー(Judith Butler)の身に危険が迫っている。」と説明して、直ぐに2人をウッドリーコモン(Woodleigh Common)からロンドンへと避難させるように依頼した。ところが、ロンドンへと向かう途中、アリアドニ・オリヴァー達3人が、昼食のために立ち寄った場所から、ミランダ・バトラーが、突然、姿を消してしまう。彼女達の後を追って来た造園師のマイケル・ガーフィールド(Michael Garfield)によって、ミランダ・バトラーは、連れ出されてしまったのである。
<TV ドラマ版>
エルキュール・ポワロは、殺人を目撃したのは、本当は、ジョイス・レイノルズではなく、ミランダ・バトラーだと推理する。そして、ミランダのことを心配した母親のジュディス・バトラーが、ミランダの部屋の様子を見に行くと、部屋はもぬけの殻で、ミランダの姿は、どこにもなかった。TV ドラマ版の場合、ミランダ・バトラーは、マイケル・ガーフィールドによって連れ出された訳ではなく、自らの意思で、家を抜け出して、マイケル・ガーフィールドに会いに出かけたのである。
(18)
<原作>
マイケル・ガーフィールドが、ミランダ・バトラーに毒杯を飲ませようとした際、ポワロが雇った2人の青年達が、彼女を救出する。
<TV ドラマ版>
マイケル・ガーフィールドが、ミランダ・バトラーに毒杯を飲ませようとした際、ポワロが駆け付けて来て、ステッキでマイケル・ガーフィールドを殴り、彼女を救出する。
(19)
<原作>
マイケル・ガーフィールドは、ミランダ・バトラーに毒杯を飲ませることが阻止されると、自らその毒杯を呷って、自殺を遂げる。
<TV ドラマ版>
マイケル・ガーフィールドは、ミランダ・バトラーに毒杯を飲ませることが阻止された後、そのまま警察に逮捕され、自殺を遂げることはない。
(20)
<原作>
オルガ・セミノフ(Olga Seminoff - ヘルツェゴヴィナ(Herzegovina)出身 / 外国語の勉強を目的として、家事手伝いをしながら、外国の家庭に住まわせてもらう制度を利用していた女性(au pair girl))の死体は、一連の殺人事件の共犯者であるマイケル・ガーフィールドとロウィーナ・ドレイク(Rowena Drake)が逮捕される前に、ポワロの助言を受けた警察によって、発見される。場所は、元採掘場の近くの森の中にあった打ち捨てられた井戸の底からだった。オルガ・セミノフの殺害に使用されたナイフも、彼女の死体と一緒に、見つかっている。
<TV ドラマ版>
オルガ・セミノフの死体は、一連の殺人事件の共犯者であるマイケル・ガーフィールドとロウィーナ・ドレイクが逮捕される後に、ポワロの助言を受けた警察によって、発見される。場所は、マイケル・ガーフィールドが造園した庭園からであるが、具体的な場所については、言及されていない。オルガ・セミノフの殺害に使用されたナイフは、彼女の死体と一緒には、見つかっていない。
(21)
<原作>
マイケル・ガーフィールドは、ロウィーナ・ドレイクの夫であるドレイク氏(Mr. Drake)がまだ存命中の頃から、ロウィーナ・ドレイクと愛人関係があった一方、オルガ・セミノフの恋人でもあった。
<TV ドラマ版>
マイケル・ガーフィールドが、ロウィーナ・ドレイクと愛人関係があったことに加えて、オルガ・セミノフの恋人でもあったと言う言及は為されていない。
(22)
<原作>
ロウィーナ・ドレイクの夫であるドレイク氏は、数年前に、車に轢かれて、亡くなっているが、誰がその犯人なのか、明らかにされないまま、物語は終わりを迎える。
<TV ドラマ版>
ロウィーナ・ドレイクの夫であるドレイク氏は、彼女と愛人関係にあったマイケル・ガーフィールドが運転する車に轢き殺されている。
(23)
<原作>
オルガ・セミノフの死体は、マイケル・ガーフィールドとロウィーナ・ドレイクの2人によって、元採掘場の近くの森の中にあった打ち捨てられた井戸へと運ばれて、処分されている。その現場を、ミランダ・バトラーが目撃。
<TV ドラマ版>
オルガ・セミノフの死体は、マイケル・ガーフィールドが単独で、自分が造園した庭園へと運び、地面に穴をほって、埋めている。その現場を、ミランダ・バトラーが目撃。
(24)
<TV ドラマ版>
TV ドラマ版における各実行犯は、以下の通り。
*ドレイク氏: マイケル・ガーフィールドが運転する車で轢殺。
*オルガ・セミノフ: ロウィーナ・ドレイクがナイフで刺殺。
*レスリー・フェリアー(Leslie Ferrier - 法律事務所の事務員): マイケル・ガーフィールドがナイフで刺殺。
*ジョイス・レイノルズ: ロウィーナ・ドレイクによって、溺死。
*レオポルド・レイノルズ(Leopold Reynolds): マイケル・ガーフィールドによって、溺死。
<原作>
ドレイク氏(犯人が誰だったのかは、最後まで不明のまま)とジョイス・レイノルズ(ロウィーナ・ドレイクによって、溺死)を除くと、マイケル・ガーフィールドとロウィーナ・ドレイクのどちらが実行犯だったのかについては、明確にはされていない。
(25)
<原作>
マイケル・ガーフィールドは、新しい庭園を造園することにしか、興味がなく、愛人関係にあったロウィーナ・ドレイクのお金で、ギリシアの島を手に入れていた。そして、彼は、その島に完璧な庭園を造園するために、ウッドリーコモンを去ろうと考えており、ロウィーナ・ドレイクのことを、最早、必要とはしていなかった。ただし、マイケル・ガーフィールドは、毒杯を呷って、自殺を遂げていたので、ロウィーナ・ドレイク本人に対して、その事実が告げられることはなかった。
<TV ドラマ版>
ポワロは、アリアドニ・オリヴァー、ジュディス・バトラー、ミランダ・バトラー、ロウィーナ・ドレイク、フランセス・ドレイク(Frances Drake - ロウィーナ・ドレイクの娘)とエドマンド・ドレイク(Edmund Drake - ロウィーナ・ドレイクの息子)の6名を前にして、ロウィーナ・ドレイクがマイケル・ガーフィールドの共犯者であることを明らかにした際、既に逮捕されていたマイケル・ガーフィールドが、警察によって、連れて来られた。そして、マイケル・ガーフィールドは、ロウィーナ・ドレイクに対して、自分の興味があったのは、彼女のお金と新しい庭園を造園することだけで、彼女のことは全く愛していないと、明らかにする。マイケル・ガーフィールドによる告白を聞いたロウィーナ・ドレイクは、非常に激怒して、暴れ回るのであった。
事件が全て片付いた後、ポワロは、アリアドニ・オリヴァーに対して、「Hallowe’en is not a time for the telling of the stories macabre, but to light the candles for the dead. (ハロウィーンとは、恐ろしい話をするのではなく、亡くなった人達のことを思い、彼らのために、蝋燭を灯す時節だ。)」と語り、ウッドリーコモンを後にするところで、物語は終わりを迎える。
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