2023年6月27日火曜日

サイモン・ゲリエ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 大いなる戦争」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Great War by Simon Guerrier) - その3

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2021年に出版された
サイモン・ゲリエ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 大いなる戦争」の表紙(一部)


1917年12月第1週の深夜、英国軍を含む連合国側と同盟国側が相対する東部戦線(East Front)、つまり、フランスのレベック(Rebecq - 現在のベルギーのワロン地域にある場所)から2 - 3マイル離れた野戦病院において、救急看護奉仕隊(VAD - Voluntary Aid Detachment)として勤務していたオーガスタ・ワトスン(Miss Augusta Watson)の前に、60歳代後半の男性が来客として現れた。それは、シャーロック・ホームズだった。


2日後の朝、オーガスタ・ワトスンは、看護師長(Matron)のシスター グロリア(Sister Gloria)に呼び出される。

シスター グロリアによると、ホームズは、前戦の視察を希望しており、レイナー・フィッツジェラルド将軍(General Rayner Fitzgerald)が現在手配中、とのこと。シスター グロリアは、オーガスタ・ワトスンに対して、ホームズの運転手を務めるように指示するとともに、将軍と自分のスパイになるように依頼した。

行き先は、東部戦線の前戦だった。


前戦に着いたホームズは、まず最初に、亡くなったフィリップ・オグル=トンプソン大尉(Captain Philip Ogle-Thompson)の後任の将校であるボイス大尉(Captain Boyce)と面談した後、彼の部下達(=フィリップ・オグル=トンプソン大尉の元部下達)にもヒアリングを行った。

フィリップ・オグル=トンプソン大尉は、皆から嫌われていたようだった。また、フィリップ・オグル=トンプソン大尉の元部下でもあったウィリアム・マレー・ダットン上等兵(Private William Murray Dutton)は、3日前に戦死した(killed in action)と言う情報も得られた。


前線から戻る途中、オーガスタ・ワトスンは、ホームズに対して、「2番目の手紙は、戦場から送られたと考えているのか?」と尋ねると、ホームズは、「前線にも、タイプライターや紙はあった。」と答える。

ホームズは、車から降りる際、オーガスタ・ワトスンに対して、「前線までの道をよく知っている兵士(男性)のドライバーは一杯居るにもかかわらず、君をドライバーとして付けてもらって、非常に助かった。」と、声を掛けた。どうやら、ホームズは、全ての事情を知っているようだ。


野戦病院へと戻ったオーガスタ・ワトスンは、レイナー・フィッツジェラルド将軍に対して、次のように報告する。


(1)2番目の手紙は、フィリップ・オグル=トンプソン大尉の元部下だったウィリアム・マレー・ダットン上等兵が書いたものだと思われる。なお、彼は、2-3日前に戦死している。

(2)フィリップ・オグル=トンプソン大尉は、非常に厳格だったので、彼の部下からは、あまり好かれていないようだった。


丁度そこへ、将軍の秘書であるモンタギュー(Montagu)が、ホームズの来訪を告げる。やって来たホームズは、オーガスタ・ワトスンの同席を希望した。


ホームズは、ボイス大尉との面談中、彼のポケットから落ちた紙のメモを、将軍に見せる。そこには、「66/1  76/1  66/1  89/1  54/1  83/1  90/1」と、賭けの倍率のようなものが書かれていた。


フランスへとやって来る前に、ホームズがフィリップ・オグル=トンプソン大尉の両親を訪ねた際、見せたもらった彼の私物の中に、婚約者の写真が入ったフレームがあった。ホームズがフレームの裏を外すと、そこには、


  71/1     66/1

  44/1     76/1

  64/1     66/1

  58/1     89/1

  63/1     54/1

101/1     83/1

  65/1     90/1


と書かれたメモが残されていたのである。


ホームズからの話を聞いたレイナー・フィッツジェラルド将軍は、ホームズとオーガスタ・ワトスンの2人を、秘密の階段へと案内する。

防音が施された部屋で、将軍は、机の上に置かれた本の間に挟まれていた紙を、2人に見せる。そこにも、


11.10     12/1

12.10       9/1

13.10     63/1

14.10     24/1

15.10       8/1

16.10     11/1


と、謎のメモが書かれていた。

将軍によると、この部屋には、自分を含めて、4人しかアクセスできない、とのことだった。


オーガスタ・ワトスンは、亡くなったフィリップ・オグル=トンプソン大尉と彼の後任であるボイス大尉の2人には、これらのメモの意味を判っていたに違いないと断言するのであった。


果たして、東部戦線において、同盟国側と相対する英国軍を含む連合国側の中で、一体、何か良からぬ計画が進行しているのだろうか?


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