「ライオンのたてがみ(The Linon’s Mane)」は、シャーロック・ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、53番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(Strand Magazine)」の1926年12月号に、また、米国では、「リバティー(Liberty)」の1926年11月27日号に掲載された。そして、ホームズシリーズの第5短編集である「シャーロック・ホームズの事件簿(The Case-Book of Sherlock Holmes)」(1927年)に収録された。
ホームズシリーズの長編小説4作 / 短編小説56作の中で、「白面の兵士(The Blanched Soldier → 2022年9月3日 / 9月6日 / 9月21日付ブログで紹介済)」と本作「ライオンのたてがみ」の2作のみが、ホームズによる一人称で書かれており、彼の相棒であるジョン・H・ワトスンは登場しない。
なお、「白面の兵士」は、ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、52番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン」の1926年11月号に、米国では、「リバティー」の1926年10月16日号に掲載された。そして、「ライオンのたてがみ」と同様に、ホームズシリーズの第5短編集である「シャーロック・ホームズの事件簿」(1927年)に収録された。
シャーロック・ホームズは、諮問探偵業から引退して、喧騒のロンドンを後にした。そして、サセックス州(Sussex)のサウスダウンズ(South Downs)、英仏海峡(Channel)を望むことができる海辺の一軒家に居を構えた。ホームズは、老齢の家政婦(ハドスン夫人と言う説あり)、飼っている蜜蜂と書物に囲まれて、静かで、かつ、快適な生活を送っていた。
2021年に英国のロイヤルメール(Royal Mail)から発行された 記念切手「国定公園(National Parks)」の1枚である 「サウスダウンズ国定公園」 |
ハロルド・スタックハーストは、「近くの海岸へ泳ぎに行くところだ。」と、ホームズに話すと、「フィッツロイ・マクファースン(Fitzroy McPherson)が先に泳ぎに行っている筈だ。」と付け加えた。
フィッツロイ・マクファースンは、理学修士(science master)を取得した青年だが、リューマチ熱(rheumatic fever)とそれに続く心臓疾患(heart trouble)に見舞われていた。
ホームズとハロルド・スタックハーストの2人が海岸に着くと、フィッツロイ・マクファースンが、酔っ払いのようによろめきながら歩いて来て、地面にばったりと倒れてしまった。
ホームズ達は、フィッツロイ・マクファースンの元に駆け寄ると、彼を仰向けにした。フィッツロイ・マクファースンは、既に瀕死の状態で、「ライオンのたてがみ(the lion’s mane)」と言う謎の言葉を発する。そして、彼は、地面から立ち上がり、腕を振り上げ、脇腹を下にして、前に倒れ込むと、息を引き取ったのである。
ホームズ達が調べてみると、フィッツロイ・マクファースンの背中には、細い針金の鞭で強く打たれたようなみみず腫れの跡が残っていた。
ホームズがフィッツロイ・マクファースンの死体の側にひざまづき、ハロルド・スタックハーストが立ち竦んでいるところへ、ハロルド・スタックハーストが経営している職業訓練学校の数学講師であるイアン・マードック(Ian Murdoch)が姿を現す。
ホームズは、イアン・マードックに対して、フルワース(Fulworth)の警察署へ通報するよう、頼んだ。ホームズからの依頼を受けたイアン・マードックは、返事もせず、全速力で走り去ったのである。
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