アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「五匹の子豚(Five Little Pigs)」(1943年)は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第32作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズに属する長編のうち、第21作目に該っている。
なお、タイトルの「五匹の子豚」は、マザーグースの童謡(5匹の子豚が登場する数え歌 - 以下を御参照)に因んでいる。
タイトルの「五匹の子豚」は、マザーグースの童謡に因んでいる。 そして、エルキュール・ポワロが訪ねる事件の重要関係者である5人に対して、 上記の5つの歌詞が割り当てられている。 (英国の HarperCollinsPublishers から出ている アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋) |
この子豚は、市場へ行った。(This little pig went to market.)
この子豚は、家に居た。(This little pig stayed home.)
この子豚は、ローストビーフを食べた。(This little pig had roast beef.)
この子豚は、何も持っていなかった。(This little pig had none.)
この子豚は、「ウィー、ウィー、ウィー」と鳴く。(And this little pig cried, Wee-wee-wee.)
帰り道が分からない。(I can’t find way my home.)
エルキュール・ポワロに対して、再調査を依頼したカーラ・ルマルション(Carla Lemarchant)の母親カロリン・クレイル(Caroline Crale)が画家の夫アミアス・クレイル(Amyas Crale)を毒殺したと考えられている事件の重要関係者である5人は、以下の通り。
(1)フィリップ・ブレイク(Philip Blake)ーアミアス・クレイルの親友で、カロリン・クレイルに振られた過去がある。現在は、株式仲買人をしている。
画面左側の人物がエルキュール・ポワロで、画面右側の人物がフィリップ・ブレイク。 (英国の HarperCollinsPublishers から出ている アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋) |
(2)メレディス・ブレイク(Meredith Blake)ーフィリップの兄で、カロリン・クレイルに秘かに恋愛感情を抱いていた。現在は、隠居して、薬草の研究をしている。
画面左側から、メレディス・ブレイク、エルキュール・ポワロ、そして、カーラ・ルマルション。 (英国の HarperCollinsPublishers から出ている アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋) |
(3)エルサ・ディティシャム(Elsa Dittisham)ー旧姓は、エルサ・グリヤー(Elsa Greer)。事件当時、アミアスの絵のモデルで、彼の愛人でもあった。現在は、ディティシャム卿夫人(Lady Dittisham)となっている。
画面左側の人物がエルサ・ディティシャム(旧姓:エルサ・グリヤー)で、 画面右側の人物がエルキュール・ポワロ。 (英国の HarperCollinsPublishers から出ている アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋) |
(4)セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams)ー事件当時、カロリン・クレイルの異母妹であるアンジェラ・ウォレン(Angela Warren)の家庭教師だった。
画面左側の人物がエルキュール・ポワロで、画面右側の人物がセシリア・ウィリアムズ。 (英国の HarperCollinsPublishers から出ている アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋) |
(5)アンジェラ・ウォレンーカロリン・クレイルの異母妹。事件当時、クレイル家に同居しており、女癖の悪いアミアスを毛嫌いしていた。赤ん坊の頃、カロリンがカッとなったため、片目を失明。現在は、考古学者をしている。
最初のコマにおける画面左側の人物がエルキュール・ポワロで、画面右側の人物がアンジェラ・ウォレン。 (英国の HarperCollinsPublishers から出ている アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋) |
カーラ・ルマルションからの依頼を受けて、事件の再調査を行うべく、ポワロは、上記の5人を訪れ、当時の事情や経緯等を尋ねるが、その際、各人に対して、5つの歌詞が割り当てられている。
(1)フィリップ・ブレイク: 市場へ行った(Went to Market)
(2)メレディス・ブレイク: 家に居た(Stayed at Home)
(3)エルサ・グリヤー: ローストビーフを食べた(Had Roast Beef)
(4)セシリア・ウィリアムズ: 何も持っていなかった(Had None)
(5)アンジェラ・ウォレン: ウィー、ウィー、ウィーと鳴く(Cried 'Wee Wee Wee')
「市場へ行った」とは、事件後、フィリップ・ブレイクが株式仲買人になったことを、「家に居た」とは、事件後、メレディス・ブレイクが隠居して、薬草の研究をしていることを、「ローストビーフを食べた」とは、アミアス・クレイルの絵のモデルで、彼の愛人でもあったエルサ・グリヤーが、事件後、貴族と結婚して、ディティシャム卿夫人となっていることを、「何も持っていなかった」とは、事件後、セシリア・ウィリアムズが一人寂しく生活していることを、そして、「ウィー、ウィー、ウィーと鳴く」とは、女癖の悪いアミアスを毛嫌いしていたアンジェラ・ウォレンが、事件発生当時、彼に対して、いろいろと悪戯を仕掛けて、彼を閉口させていたことを指すのではないかと思われる。
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