2023年6月2日金曜日

マザーグース「この子豚は、市場へ行った」(Mother Goose - This little pig went to market.)

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「五匹の子豚(Five Little Pigs)」(1943年)は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第32作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズに属する長編のうち、第21作目に該っている。

なお、タイトルの「五匹の子豚」は、マザーグースの童謡(5匹の子豚が登場する数え歌 - 以下を御参照)に因んでいる。


タイトルの「五匹の子豚」は、マザーグースの童謡に因んでいる。
そして、エルキュール・ポワロが訪ねる事件の重要関係者である5人に対して、
上記の5つの歌詞が割り当てられている。
(英国の HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


この子豚は、市場へ行った。(This little pig went to market.)

この子豚は、家に居た。(This little pig stayed home.)

この子豚は、ローストビーフを食べた。(This little pig had roast beef.)

この子豚は、何も持っていなかった。(This little pig had none.)

この子豚は、「ウィー、ウィー、ウィー」と鳴く。(And this little pig cried, Wee-wee-wee.)

帰り道が分からない。(I can’t find way my home.)


エルキュール・ポワロに対して、再調査を依頼したカーラ・ルマルション(Carla Lemarchant)の母親カロリン・クレイル(Caroline Crale)が画家の夫アミアス・クレイル(Amyas Crale)を毒殺したと考えられている事件の重要関係者である5人は、以下の通り。


(1)フィリップ・ブレイク(Philip Blake)ーアミアス・クレイルの親友で、カロリン・クレイルに振られた過去がある。現在は、株式仲買人をしている。


画面左側の人物がエルキュール・ポワロで、画面右側の人物がフィリップ・ブレイク。
(英国の HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


(2)メレディス・ブレイク(Meredith Blake)ーフィリップの兄で、カロリン・クレイルに秘かに恋愛感情を抱いていた。現在は、隠居して、薬草の研究をしている。


画面左側から、メレディス・ブレイク、エルキュール・ポワロ、そして、カーラ・ルマルション。
(英国の HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


(3)エルサ・ディティシャム(Elsa Dittisham)ー旧姓は、エルサ・グリヤー(Elsa Greer)。事件当時、アミアスの絵のモデルで、彼の愛人でもあった。現在は、ディティシャム卿夫人(Lady Dittisham)となっている。


画面左側の人物がエルサ・ディティシャム(旧姓:エルサ・グリヤー)で、
画面右側の人物がエルキュール・ポワロ。
(英国の HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


(4)セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams)ー事件当時、カロリン・クレイルの異母妹であるアンジェラ・ウォレン(Angela Warren)の家庭教師だった。


画面左側の人物がエルキュール・ポワロで、画面右側の人物がセシリア・ウィリアムズ。
(英国の HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


(5)アンジェラ・ウォレンーカロリン・クレイルの異母妹。事件当時、クレイル家に同居しており、女癖の悪いアミアスを毛嫌いしていた。赤ん坊の頃、カロリンがカッとなったため、片目を失明。現在は、考古学者をしている。


最初のコマにおける画面左側の人物がエルキュール・ポワロで、画面右側の人物がアンジェラ・ウォレン。
(英国の HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


カーラ・ルマルションからの依頼を受けて、事件の再調査を行うべく、ポワロは、上記の5人を訪れ、当時の事情や経緯等を尋ねるが、その際、各人に対して、5つの歌詞が割り当てられている。


(1)フィリップ・ブレイク: 市場へ行った(Went to Market)

(2)メレディス・ブレイク: 家に居た(Stayed at Home)

(3)エルサ・グリヤー: ローストビーフを食べた(Had Roast Beef)

(4)セシリア・ウィリアムズ: 何も持っていなかった(Had None)

(5)アンジェラ・ウォレン: ウィー、ウィー、ウィーと鳴く(Cried 'Wee Wee Wee')


「市場へ行った」とは、事件後、フィリップ・ブレイクが株式仲買人になったことを、「家に居た」とは、事件後、メレディス・ブレイクが隠居して、薬草の研究をしていることを、「ローストビーフを食べた」とは、アミアス・クレイルの絵のモデルで、彼の愛人でもあったエルサ・グリヤーが、事件後、貴族と結婚して、ディティシャム卿夫人となっていることを、「何も持っていなかった」とは、事件後、セシリア・ウィリアムズが一人寂しく生活していることを、そして、「ウィー、ウィー、ウィーと鳴く」とは、女癖の悪いアミアスを毛嫌いしていたアンジェラ・ウォレンが、事件発生当時、彼に対して、いろいろと悪戯を仕掛けて、彼を閉口させていたことを指すのではないかと思われる。


0 件のコメント:

コメントを投稿