シャーロック・ホームズシリーズの長編小説4作のうち、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が最後に発表した作品である「恐怖の谷(The Valley of Fear → 2023年5月12日 / 5月17日 / 5月21日 / 5月26日 / 5月29日 / 6月5日付ブログで紹介済)」は、第1長編「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2016年7月30日付ブログで紹介済)」(1887年)や第2長編「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)」(1890年)と同様に、2部構成を採っており、第1部では、バールストン館(Birlstone House)の主人であるジョン・ダグラス(John Douglas)と思われる男性が、銃身を切り落として短くした散弾銃によって、至近距離から頭を撃ち抜かれて、惨殺された事件の発生から、ホームズの推理により、事件の解決に至るまでが描かれる。そして、第2部では、その事件の背景となった「恐怖の谷」と呼ばれる米国ペンシルヴァニア州ヴァーミッサ峡谷(Vermissa Valley)にある炭鉱街で発生した事件が語られている。第1部と第2部の分量は、大体同じ位である。
一方、作家である Ian Edginton が構成を、そして、イラストレーターである I. N. J. Culbard Norma が作画を担当したグラフィックノベル版(英国の Metro Media Ltd. から、Self Made Hero シリーズの一つとして、2011年に出版)の場合、コナン・ドイルの原作通り、忠実に再現されているが、第1部の分量は約90ページで、第2部の分量は、エピローグを含めて、約35ページとなっていて、第1部が第2部の約2倍半の分量である。従って、コナン・ドイルの原作よりも、グラフィックノベル版の方が、シャーロック・ホームズによる活躍をより楽しめる内容になっている。
サセックス州バールストンのバールストン館に住む ジョン・ダグラスと思われる男性が、書斎において、 銃身を切り落として短くした散弾銃で、 至近距離から頭を撃ち抜かれて、惨殺される事件が発生する。 顔が滅茶滅茶になっていた被害者は、 寝間着とピンクのガウンを羽織っているだけで、 足には室内スリッパを履いて、 部屋の真ん中に、仰向けに倒れていた。 被害者を除くと、画面左下から、 サセックス州警察のウィルスン巡査部長(Sergeant Wilson)、 開業医のウッド医師(Dr. Wood)、 執事のエイムズ(Aimes)、そして、 ジョン・ダグラスの友人であるセシル・ジェイムズ・バーカー(Ceil James Barker)。 参考に、「ストランドマガジン(Strand Magazine)」に掲載された挿絵を 以下に添付するので、比べていただくと、面白いと思う。 |
英国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 - 第1部第3章「バールストンの惨劇(The Tragedy of Birlstone)」 被害者を除くと、画面左側から、 ジョン・ダグラスの友人であるセシル・ジェイムズ・バーカー、 サセックス州警察のウィルスン巡査部長、 そして、開業医のウッド医師。 死体の胸元辺りに、銃身を切り落として短くした散弾銃が置かれている。 挿絵:フランク・ワイルズ |
セシル・バーカー / ジョン・ダグラスの執事であるエイムズ(Ames)立会いの下、 ウィルスン巡査部長とウッド医師が現場を調べたところ、不可解な点が、いくつかあった。 (1)死体の側の床の上に、「V.V. 341」と書かれたカードが落ちていたが、何を意味するのかは不明。 (2)死体の右前腕に、非常に奇妙な印(丸の中に三角がある焼き印)があった。 |
(3)死体の左手の小指から、金の結婚指輪が抜き取られていた。何故か、結婚指輪の上に嵌めていた 天然金塊が付いた指輪と薬指に嵌めていたスネークリングは、盗まれず、そのままになっていた。 |
殺害現場を調べたホームズは、以下の点に興味が引かれたようだった。 (1)死体の右前腕にある非常に奇妙な印(丸の中に三角がある焼き印) (2)死体の顎のえらのところに貼ってある小さい絆創膏 (3)死体の側の床の上に落ちていた「V.V. 341」と書かれたカード (4)殺害に使用された銃身が切り詰められた散弾銃 |
(5)死体の左手の小指から、金の結婚指輪のみが抜き取られて、他の指輪が盗まれていないこと (6)地元警察による必死の捜索にもかかわらず、午後2時になっても、濡れ鼠の不審者が未だに見つから ないこと (7)窓枠にある血が付いた靴跡(扁平足)と床の隅に付いている泥に汚れた靴跡(バランスが取れた足) が一致していないこと (8)サイドテーブルの下に、ダンベル(鉄亜鈴)が一つしかないこと |
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