2023年6月20日火曜日

コナン・ドイル作「恐怖の谷」<グラフィックノベル版>(The Valley of Fear by Conan Doyle ) - その3

シャーロック・ホームズシリーズの長編小説4作のうち、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が最後に発表した作品である「恐怖の谷(The Valley of Fear → 2023年5月12日 / 5月17日 / 5月21日 / 5月26日 / 5月29日 / 6月5日付ブログで紹介済)」は、第1長編「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2016年7月30日付ブログで紹介済)」(1887年)や第2長編「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)」(1890年)と同様に、2部構成を採っており、第1部では、バールストン館(Birlstone House)の主人であるジョン・ダグラス(John Douglas)と思われる男性が、銃身を切り落として短くした散弾銃によって、至近距離から頭を撃ち抜かれて、惨殺された事件の発生から、ホームズの推理により、事件の解決に至るまでが描かれる。そして、第2部では、その事件の背景となった「恐怖の谷」と呼ばれる米国ペンシルヴァニア州ヴァーミッサ峡谷(Vermissa Valley)にある炭鉱街で発生した事件が語られている。第1部と第2部の分量は、大体同じ位である。


一方、作家である Ian Edginton が構成を、そして、イラストレーターである I. N. J. Culbard Norma が作画を担当したグラフィックノベル版(英国の Metro Media Ltd. から、Self Made Hero シリーズの一つとして、2011年に出版)の場合、コナン・ドイルの原作通り、忠実に再現されているが、第1部の分量は約90ページで、第2部の分量は、エピローグを含めて、約35ページとなっていて、第1部が第2部の約2倍半の分量である。従って、コナン・ドイルの原作よりも、グラフィックノベル版の方が、シャーロック・ホームズによる活躍をより楽しめる内容になっている。


サセックス州(Sussex)北部の州境にあるバールストン(Birlstone)の町から半マイル程離れた、

背の高いぶなの林に囲まれた中に、17世紀の初めに建てられたバールストン館が所在していた。

以前は、館の周囲に、二つの堀があったが、

外側の堀については、水が抜かれ、家庭菜園(kitchen garden)が営まれ、

内側の堀に関しては、まだ残っており、深さは数フィートに過ぎなかったが、

幅40フィートの水が、館全体を取り囲んでいた。


サセックス州バールストンのバールストン館に住む
ジョン・ダグラスと思われる男性が、書斎において、
銃身を切り落として短くした散弾銃で、
至近距離から頭を撃ち抜かれて、惨殺される事件が発生する。
顔が滅茶滅茶になっていた被害者は、
寝間着とピンクのガウンを羽織っているだけで、
足には室内スリッパを履いて、
部屋の真ん中に、仰向けに倒れていた。
被害者を除くと、画面左下から、
サセックス州警察のウィルスン巡査部長(Sergeant Wilson)、
開業医のウッド医師(Dr. Wood)、
執事のエイムズ(Aimes)、そして、
ジョン・ダグラスの友人であるセシル・ジェイムズ・バーカー(Ceil James Barker)。
参考に、「ストランドマガジン(Strand Magazine)」に掲載された挿絵を
以下に添付するので、比べていただくと、面白いと思う。

国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第3章「バールストンの惨劇(The Tragedy of Birlstone)」
被害者を除くと、画面左側から、
ジョン・ダグラスの友人であるセシル・ジェイムズ・バーカー、
サセックス州警察のウィルスン巡査部長、
そして、開業医のウッド医師。
死体の胸元辺りに、銃身を切り落として短くした散弾銃が置かれている。
挿絵:フランク・ワイルズ

  セシル・バーカー / ジョン・ダグラスの執事であるエイムズ(Ames)立会いの下、

  ウィルスン巡査部長とウッド医師が現場を調べたところ、不可解な点が、いくつかあった。


 (1)死体の側の床の上に、「V.V. 341」と書かれたカードが落ちていたが、何を意味するのかは不明。

 (2)死体の右前腕に、非常に奇妙な印(丸の中に三角がある焼き印)があった。


(3)死体の左手の小指から、金の結婚指輪が抜き取られていた。何故か、結婚指輪の上に嵌めていた
   天然金塊が付いた指輪と薬指に嵌めていたスネークリングは、盗まれず、そのままになっていた。

 殺害現場を調べたホームズは、以下の点に興味が引かれたようだった。


 (1)死体の右前腕にある非常に奇妙な印(丸の中に三角がある焼き印)

 (2)死体の顎のえらのところに貼ってある小さい絆創膏

 (3)死体の側の床の上に落ちていた「V.V. 341」と書かれたカード

 (4)殺害に使用された銃身が切り詰められた散弾銃


 (5)死体の左手の小指から、金の結婚指輪のみが抜き取られて、他の指輪が盗まれていないこと

 (6)地元警察による必死の捜索にもかかわらず、午後2時になっても、濡れ鼠の不審者が未だに見つから

    ない

 (7)窓枠にある血が付いた靴跡(扁平足)と床の隅に付いている泥に汚れた靴跡(バランスが取れた足)

    が一致していないこと

 (8)サイドテーブルの下に、ダンベル(鉄亜鈴)が一つしかないこと


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