2025年5月11日日曜日

ハーマン・メルヴィル(Herman Melville)- その1

日本の出版社である岩波書店から
岩波文庫として出版されている

ハーマン・メルヴィル作「白鯨(上)」の表紙
       カバーデザイン: 中野 達彦
 カバーカット: ロックウェル・ケント
(Rockwell Kent:1882年ー1971年 - 米国の画家 / イラストレーター)

主にデヴォン州(Devon)を舞台にした田園小説、戯曲や詩作で既に名を成した英国の作家であるイーデン・ヘンリー・フィルポッツ(Eden Henry Phillpotts:1862年ー1960年 → 2022年2月6日 / 2月13日付ブログで紹介済)が1922年に発表した推理小説「赤毛のレドメイン家(The Red Redmaynes → 2022年6月12日+2025年4月20日 / 4月21日 / 4月23日付ブログで紹介済)」の場合、過酷な勤務に明け暮れて、いささか疲れが溜まっていたスコットランドヤードの刑事であるマーク・ブレンドン(Mark Brendon - 35歳)が、休息と健康のため、デヴォン州(Devon)ダートムーア(Dartmoor)において、趣味のトラウト釣りに興じたり休暇(趣味のトラウト釣り)を過ごしているところから、物語が始まる。

そんな最中、マーク・ブレンドンが滞在するプリンスタウン(Princetown)において、殺人事件が発生する。

被害者の妻であるジェニー・ペンディーン(Jenny Pendean)から手助けを求める手紙を受け取った彼は、あまり気が進まなかったが、その日の釣りを諦めると、プリンスタウンのステーションコテージ3号に住む彼女の元を訪れた。ジェニー・ペンディーンの姿を見たマーク・ブレンドンは、驚きの余り、声を失った。彼女こそ、数日前に、夕焼けの中、彼がフォギンター採石場跡近くですれ違った鳶色の髪の美女だったのである。


ジェニーがマイケル・ペンディーン(Michael Pendean)と結婚する前に居たレドメイン家には、兄弟が4人居て、彼女は長男の一人娘だった。生憎と、彼女の父親は既に亡くなっていたため、彼女には、次男から四男までの叔父が3人健在と言うのが、現在の状況である。


*長男:ヘンリー・レドメイン(Henry Redmayne)- 英国に父親の代理店を設立して、羊毛販売を営む。

*次男:アルバート・レドメイン(Albert Redmayne)- 書籍蒐集家 / 現在は、引退して、イタリアに居住。

*三男:ベンディゴー・レドメイン(Bendigo Redmayne) - 貨物船の元船長 / 現在は、引退して、デヴォン州(Devon)に居住。

*四男:ロバート・レドメイン(Robert Redmayne)- 元大尉


先週、ジェニー・ペンディーンが郵便局から出て来た時、オートバイに乗ったロバート・レドメインと再会。彼は、終戦の数週間前にガス攻撃を受け、傷病兵として退役。それ以前にも、戦争神経症を患い、本人は軽症だと言うものの、直ぐに興奮し、それが極端だった。

戦友と会ってきたロバート・レドメインは、プリマスへ向かう予定だったが、マイケル / ジェニー・ペンディーン夫妻は、ロバート叔父を自分達のバンガローに滞在するよう、頼み込んだ。

ペンディーン夫妻宅に滞在することになったロバート・レドメインは、マイケル・ペンディーンと一緒に、日が長い中、フォギンター採石場跡でのバンガロー建設を楽しそうに進めた。


昨日、ロバート・レドメインとマイケル・ペンディーンは、早めのお茶の後、オートバイに2人乗りして、バンガローへ出かけた。ジェニー・ペンディーンは、同行しなかった。

ジェニー・ペンディーンから「夜半になっても、叔父ロバート・レドメインと夫マイケル・ペンディーンが、フォギンター採石場跡から戻って来ない。」と言う相談を受けたハーフヤード署長は、フォード巡査達を採掘場跡へ派遣。慌てて戻って来たフォード巡査によると、「バンガローが文字通り血の海です。」とのことだった。

フォード巡査の報告を聞いたハーフヤード署長は、車でフォギンター採石場跡へ向かった。バンガローの台所になる予定の部屋は凄まじく、台所へ入る裏口の横木にまで、血が飛び散っていたのである。


ジェニー・ペンディーンの話を総合すると、彼女の叔父であるロバート・レドメインが彼女の夫であるマイケル・ペンディーンを殺害したものと思われたが、マイケル・ペンディーンの死体は発見できず、また、ロバート・レドメインの行方は杳としてしれなかった。

マーク・ブレンドンは、プリンスタウン警察署に協力し、彼の精力、創意工夫の才、そして、経験を総動員の上、2人の発見に努めたが、どちらの生死も判らないままだった。


夫のマイケル・ペンディーンが行方不明となり、一人になったジェニー・ペンディーンは、2番目の叔父であるベンディゴー・レドメインの元で世話になっていることが判った。貨物船の船長を既に引退していたベンディゴー・レドメインは、デヴォン州ダートマス(Dartmouth → 2023年9月6日付ブログで紹介済)の先にある家「烏(カラス)の巣」に住んでいた。


ジェニー・ペンディーンからの手紙を受け取ったマーク・ブレンドンが、指定されたキングスウェア(Kingswear)のフェリー乗り場で待っていると、モーターボートが迎えに来る。

ジェニー・ペンディーンは、ベンディゴー・レドメインと彼のモーターボート操縦士であるジュゼッペ・ドリアの2人に世話になっていた。ジュゼッペ・ドリアは、イタリア / トリノ(Torino)の旧家の出身で、ギリシア彫刻のような美貌の持ち主だった。ジェニー・ペンディーンに想いを寄せていたマーク・ブレンドンは、自分のライバルとなりそうなジュゼッペ・ドリアに対して、競争心を掻き立てられる。


そんな最中、ベンディゴー・レドメイン邸「烏の巣」近辺に、赤毛のロバート・レドメインが姿を見せ、彼に海岸の洞窟へと呼び出されたベンディゴー・レドメインが殺害された。

マーク・ブレンドンは、ダートマス警察署のダマレル署長に協力して、事件を捜査するものの、またもや、ロバート・レドメインは行方知れずのままだった。


身を寄せるところを失ったジェニー・ペンディーンは、レドメイン家で唯一残った1番目の叔父であるアルバート・レドメインの世話になることに決まり、イタリアへと旅立ったが、イタリアのグリアンテ(Griante)のコモ湖(Lago di Como)畔に建つアルバート・レドメイン邸の近辺に、またもや、ロバート・レドメインが姿を現したのである。


イーデン・フィルポッツによる原作上、ジェニー・ペンディーンの2番目の叔父であるベンディゴー・レドメインは、貨物船の元船長と言うこともあって、メルヴィル作「白鯨」が愛読書と言う記述が見られる。


ハーマン・メルヴィル(Herman Melville:1819年ー1891年)は、米国の小説家 / 詩人であり、1851年に「白鯨(Moby-Dick of The Whale)」を発表。

彼は、当初、裕福な食料品輸入商の三男として出生したが、家の経済状態が悪化したため、創作活動を始めるまでに、銀行員、教員や船員等の職を転々とし、波乱の人生を歩む。また、彼は、生涯を通じて、文筆で身を立てることが叶わず、50歳近くになって、妻の親戚の伝手により、ニューヨーク税関の検査係の職に就いている。また、長男の自殺、自宅の焼失や次男の出奔等の不幸にも見舞われているのである。


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