2025年5月18日日曜日

ロンドン ギルドホールアートギャラリー (Guildhall Art Gallery)- その2

ギルドホールアートギャラリーの建物正面外壁


ロンドン市長(Mayor of London)とは別に、もう一人のロンドン市長、つまり、自治権を有するシティー・オブ・ロンドン(City of London → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)の市長(Lord Mayor of London)による行政の拠点となる市庁舎「ギルドホール(Guildhall)」に隣接して建つのが、シティー・オブ・ロンドンが所有する約4000点に及ぶ絵画や彫刻作品等を所蔵 / 展示している美術館「ギルドホールアートギャラリー(Guildhall Art Gallery)」である。


ギルドホールアートギャラリー(右側の建物)に隣接して建つ市庁舎のギルドホール -
新しいギルドホールは、更に左側に隣接して建っている。


ギルドホールの起源は、12世紀前半まで遡り、行政だけではなく、政治や宗教においても、重要な役割を果たしてきた。


フランスの画家であるポール・ドラローシュ(Paul Delaroche:1797年ー1856年)作
「レディー ジェーン・グレイの処刑(The Execution of Lady Jane Grey)」の小型版(1834年頃)-
実際の処刑は、屋外で行われているが、
絵画上、視覚効果を考慮して、室内で処刑が行われたように描かれている。
なお、同作品の大型版は、ナショナルギャラリー(National Gallery)に所蔵 / 展示されている。


「9日間の女王(Nine-Day Queen)」として知られているジェーン・グレイ(Jane Grey:1537年ー1554年)の処刑は、このギルドホールで開かれた裁判で可決されている。ジェーン・グレイは、数奇な運命によりイングランド史上初の女王として即位したが、在位僅か9日間(1553年7月10日ー同年7月19日)で、テューダー朝(House of Tudor)の第4代イングランド王メアリー1世(Mary I:1516年ー1558年 在位期間:1553年-1558年)により廃位されて、その7ヶ月後に大逆罪により斬首刑に処せられた。なお、ジェーン・グレイを正当なイングランド君主とは見做さない歴史学者が多いが、英国王室は、彼女をテューダー朝第4代イングランド王として、公式に認めている。


ナショナルポートレートギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
メアリー1世の肖像画の葉書
(Master John / 1544年 / Oil on panel
711 mm x 508 mm) 


その後、ギルドホールは、15世紀に大きく改築され、1666年のロンドン大火(The Great Fire of London → 2018年9月15日 / 9月22日 / 9月29日 / 10月6日付ブログで紹介済)や第二次世界大戦(1939年ー1945年)中の空爆により、一部消失したが、その都度修復されて、現在に至っている。

現在、ギルドホールアートギャラリーに隣接して建つギルドホールの更に隣りに、新ギルドホールが建っており、行政業務は、新ギルドホールにおいて行われている。従って、古いギルドホールは、式典での利用の他に、イヴェントスペースとして貸し出されているのである。


ギルドホールアートギャラリーの館内(その1)


シティー・オブ・ロンドンは、17世紀より肖像画を所蔵しており、当初は、ギルドホールに展示していたが、絵画や彫刻作品等の寄贈や購入が相次ぎ、ギルドホールだけでは手狭になってきた。

最初のギルドホールアートギャラリーの建物は、1885年に建設されたものの、第二次世界大戦中のロンドン大空襲(The Blitz:1940年ー1941年)により全壊し、その際、絵画164作品と彫刻20作品も失われた。


ギルドホールアートギャラリーの館内(その2)


1985年に、シティー・オブ・ロンドンは、ギルドホールアートギャラリーの再建を決定し、英国の建築家であるリチャード・ギルバート・スコット(Richard Gilbert Scott:1923年ー2017年)に設計を依頼。

リチャード・ギルバート・スコットによる設計案は、所蔵作品の展示スペースを増やすために、以前の地上2階建てに地下階を付け加える計画だった。


ギルドホール前の広場の地下で発掘された古代ローマ時代の円形劇場跡(その1)


ギルドホール前の広場の地下で発掘された古代ローマ時代の円形劇場跡(その2)


実際に、再建工事が始まり、1988年、地下を掘り進んだところ、ギルドホール前の広場の地下に、古代ローマ時代の遺構である円形劇場跡(The Roman Amphitheatre)があることが判り、考古学上の大発見となった。2000年程前、同地には円形劇場があり、ギルドホールは、その跡の上に建築されていたのである。


ギルドホール前の広場の地面に、円形の黒線が引かれている。
この黒線の部分の地下に、古代ローマ時代の円形劇場跡が存在している。


そのため、古代ローマ時代の円形劇場跡を取り入れる形で、新ギルドホールアートギャラリーの再設計案が練られ、当初の予定よりも大幅に遅れた1999年11月2日に、再建された新ギルドホールアートギャラリーは、英国のウィンザー朝第4代女王であるエリザベス2世(HM Queen Elizabeth II:1926年–2022年 / 在位期間:1952年–2022年)の臨席の下、再オープンを迎えた。


新ギルドホールアートギャラリーの再オープンの際に、
エリザベス2世が臨席したことを示す碑が、
ギルドホールアートギャラリーの入口と出口の間にある壁に銘じられている。

エリザベス2世の在位50周年(The Golden Jubilee / The Fiftieth Anniversary)を記念して、
2002年2月6日に英国のロイヤルメール(Royal Mail)から発行された記念切手5種類の1枚


なお、地下で発掘された古代ローマ時代の円形劇場跡は、考古学調査を終えた後、2002年に公開されている。


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