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ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、 兵隊島に建つ邸宅内のキッチンにおいて、 お湯を沸かすために、薬缶に水を入れようとしている。 <筆者撮影> |
英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。
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英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース) |
(3)(17)ヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne)
三流学校の体育教師(games mistress)をしていたヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、高名な元判事であるローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave → 2025年10月20日付ブログで紹介済)と同じく、ロンドンのパディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)12時40分発の列車に乗り、オークブリッジ駅(Oakbridge Station)へと向かっていた。
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、一等喫煙車に乗っていたが、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが乗っていたのは、三等車だった。
パディントン駅のコンコースとそれを覆うガラス屋根 <筆者撮影> |
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、兵隊島(Solidier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)を所有するユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)から、夏休みの間、秘書の仕事(summer secretarial post)に採用されたのである。
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兵隊島は、 ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。 <筆者撮影> |
ユナ・ナンシー・オーウェン夫人の手紙によると、女性技能紹介所からの推薦を受けた、とのことで、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、学校休みのアルバイトとして、大勢の子供の世話ではなく、秘書の仕事にに就けるのは、本当にラッキーだと思っていた。
客車の中はうだる暑さなのに、ヴェラは突然身ぶるいした。海に行きたくない、と思った。頭の中に、ある光景がくっきり浮かんだ。シリルが岩に向かって泳いでいる。シリルの頭が、ポカッと浮かびあがっては沈む … 浮かんで沈んで … 浮かんで沈んで … そのあとを追って、泳ぎ慣れたヴェラは、ゆうゆうと水を切って泳いでいる … 水を切って進んではいても、間に合わないのはわかっている。絶対に間に合わない。
海 - 深々として暖かな海の青さ - 砂浜に寝転がってすごした朝 - ヒューゴー - ヒューゴーは言ってくれた - 愛しているって -
だめ、ヒューゴーのことを、考えちゃだめ … 。
(青木 久惠訳)
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ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、 赤地に白い斑点があるスカーフを頭に巻き、サングラスをかけて、水着姿で砂浜に座っている。 <筆者撮影> |
ジグソーパズルの左下の方にあり、赤枠で囲まれているヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、赤地に白い斑点があるスカーフを頭に巻き、サングラスをかけて、水着姿で砂浜に座っており、上記の場面が描かれていると言える。
1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた召使と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。
招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と召使夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、シリル・オギルヴィー・ハミルトン(Cyril Ogilvie Hamilton - 家庭教師をしていた子供)を殺害したと告発された。のである。
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招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、 謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面 - HarperCollins Publishers 社から出ている アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。 |
そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年6月26日付ブログで紹介済)」に準えて、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、最後の被害者となる。
One little soldier boy left all alone; He went and hanged himself … And then there were None.
(1人の子供の兵隊さんが、後に残された。彼は自分で首を括って、そして、誰もいなくなった。)
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ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪で、 自ら首を括って、自殺を遂げる。その際、最後の人形が、彼女の手から落ちる。- HarperCollins Publishers 社から出ている アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。グラフィックノベル版の内容は、原作通り。 |
*被害者:ヴェラ・エリザベス・クレイソーン
*告発された罪状:シリル・オギルヴィー・ハミルトンを殺害したと告発された。
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、シリル・オギルヴィー・ハミルトンに対して、彼が望む通り、岩まで泳がせ他のである。また、溺れた彼を助けようと、彼女は、彼の後を追ったものの、泳いでいるふりをした。
シリル・オギルヴィー・ハミルトンが溺死した後、ヒューゴ(Hugo - シリル・オギルヴィー・ハミルトンの叔父 / 事件当日、外出していた)は、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンに対して、見ず知らずの他人を見るような視線を向けた。その後、ヒューゴーとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの恋愛関係は、終わりを迎えている。
*犯罪発生時期:1935年8月11日
*死因:絞首(縊死)
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪で、自ら首を括って、自殺を遂げる。その際、最後の人形が、彼女の手から落ちる。
